第6回 ファシリテーションスキルをマネジメントに活かそう!――ファシリテーター型リーダーシップとは?

第6回 ファシリテーションスキルをマネジメントに活かそう!――ファシリテーター型リーダーシップとは?

2013.5.09 update.

浦山絵里 イメージ

浦山絵里

杏林大学医学部付属病院に長年勤務し、その後、公立病院勤務を経て2007年にひとづくり工房esucoとして起業。現在、ナースファシリテーターとして看護協会、病院での研修セミナー講師、看護部門の業務改善プロジェクトや人材育成についてコンサルティングを実施。生き生きと看護師が語る「語り場づくりファシリテーター」として、看護師への支援活動を行っている。

●前回までのおさらい

 

 前回は,多忙な実践現場で個々の力を引き出し合い,強化するためには「対話の場」が必要であり,「対話の場」を創る際には,その場が何のために,そして誰のために創られるものなのかを定め,それを企画者も参加者も共有しておくことが大切だということをお伝えしました。

 また,マネジメントの視点から,自律した人材を育成するためにファシリテーションスキルを活用できることもお伝えしました。
自律した人材を育成するためには,
①組織の中に安全で安心できる対話の場がある
②新しい挑戦に伴う小さな失敗は歓迎される風土がある
③挑戦を支援する仲間がいる
という3つの要素が必要になることを,第4回で学びましたね。
 
前回までの知識をおさらいしたところで,今回は「ファシリテーションスキルをマネジメントに活かす」という視点から,ファシリテーター型リーダーシップについて考えていきたいと思います。

 

●リーダーシップってどんなイメージ?

 

 「リーダーシップ」と聞いたとき,どんな人,事柄をイメージしますか?
私が講師を務める研修会で,リーダーシップをテーマにブレーンストーミングをすると,
「導く」「ひっぱる」「先頭に立つ」「影響力」「カリスマ」「責任」「大変」「ついていきます」「まとめる」「器」「太っ腹」「誰でもはできない」「私には無理」……といったような言葉でイメージをする方が多いようです。
つまり,リーダーシップ,と聞くと「統率する」「指導する」というイメージを抱く方が多いのですね。

また,リーダーになるにはそれなりの器が必要であったり,覚悟がいるといったことが語られることが多く,リーダー研修などでも,その役割を果たすのが自分である,自分がその当事者だ,と認識してもらうまでに長い時間をかけることがあります。

リーダーシップのありかたには正解はありません。そのスタイルはいろいろです。仕事のロールモデルになるようなリーダーや,全体の士気を削ぐようなリーダー,つべこべいわずに俺についてこい!的なぐいぐい引っ張るリーダー,みんなが憧れるカリスマリーダー,なんだか友達のようなリーダー,組織の進むべき道をわかりやすく伝えてくれるリーダーなど,それぞれの現場に多様な姿があります。みなさんも,いろいろなリーダーと仕事をされてこられたと思います。
 どのようなリーダーシップが必要になるのかは,組織の状態によって変化します。ときにはメンバーを説得し,引っ張っていくリーダーが求められたり,あるいは一緒にチームに入り,協力し合って実践をしていくリーダーが必要なときもあります。

今回,考えてみたいのは,スタッフの主体性を育むリーダーシップってどのようなものだろう,ということです。

 

●主体性を育むために,「指導」から「支援」へアプローチを転換する

 

 「ファシリテーター」としての私の師匠である,中野民夫さんは,著書『ファシリテーション革命――参加型の場づくりの技法』(岩波アクティブ新書)の中で,ガールスカウトの「トレイナー」研修に講師として招かれたときのことを振り返っています。
 「トレイナー」とは全国4万人の少女たちを地域の団で面倒をみている「リーダー」たちの養成をする役割の人で,各県に数人しかいない要職だそうです。当時,「トレイナー」の方々は,自分たちが指導しようとすればするほど,少女やリーダーたちの主体性が育たず,指示待ち族をつくってしまっていることにジレンマを抱えていたそうです。看護現場でも同じような状況がありますよね。
 研修のなかで,中野さんは「新しいリーダー像を学ぶ――主体性を育むファシリテーションとは」というワークショップを開催しました。そこで彼は,「教える」「指導する」指導者から「支援する」「促進する」ファシリテーター型リーダーシップへの転換について,体感的に考えるワークショップをデザインしました。

 ファシリテートという言葉は「容易にする」「促進する」「助長する」といった意味をもち,コミュニケーションの場におけるファシリテーションとは,参加の場を作り,その場を動かす技法を意味します。

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そして,そのような状態を創るのがファシリテーターなのですが,ファシリテーターの役割をもう少し深めて言うと,「中立,対等な立場で」「プロセスを大切にし」「参加のしやすい場を創り」「個々の力を活かしあう手助けをしながら」「全体のゴールに向かう」ということになります。
つまり参加者の主体性を高める,場における当事者性を高めることを支援する役割を務めるのがファシリテーターであり,そうした立場を取るリーダーシップを「ファシリテーター型リーダーシップ」と表現するのです。
皆さんの今までリーダーに対するイメージと比べて,どのようにお感じになられますか?

 

●ファシリテーター型リーダーってどんな人?

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先ほど中野さんの研修事例でも少しご紹介したように,ファシリテーター型リーダーは,参加型の場を創り,参加者の創造性や当事者意識,生産性を引き出します。
スタッフはそこに「参加」することと「貢献できる」実感で,自分自身の力や仲間の力に自ら気づき,自立したチームが創られていきます。主体性を引き出すファシリテーションが機能すると,スタッフやチームに新しいアイデアを創発する力とやる気が起こります。
もしも,あなたがマネジメントしている現場が今までのやり方でうまくいっていないのであれば,誰かがその答えをもっていると考えるのではなく,みんなで創っていくアプローチに視点を変えてみてはどうでしょうか。

マネジメントをするうえで,均等な質のスタッフがいることは望ましいことかもしれませんが,現在のように大きく社会情勢が動いたり,個々の価値観が異なる場合には,多様な仲間が多様な視点から考えていく方が,より患者や家族,利用者にとっても満足度の高いやり方が生まれてくるのです。リーダーや上司など一個人が実践の正解をもっていることのほうが少ないのではないかと感じます。
そうした時代の要請もあり,ファシリテーター型リーダーが注目されているのです。

 

●場の目的とゴール,意思決定のプロセスをあらかじめ明らかにしておく

 

 ファシリテーターは「中立対等な立場を取る人」と考えたとき,それはリーダーとは立ち位置が違う役割モデルなのではないか,と違和感を感じる方がいらっしゃるかもしれません。研修でもそのような質問を受けることが多いです。読者のみなさんはどうお考えになりますか?
このような疑問にお答えするために確認しておきたいのは,ファシリテーター型リーダーシップのスタイルを取る場合には,前回お伝えしたように,「この場がどんな場であるのかということ」と「なんのためにこの場をもつのか」と言うことをはっきりさせておくことが重要なポイントになるということです。
 つまりチームで何に向かうのかというゴールをはっきりさせておくこと,そして今回設定したコミュニケーションの場には,どのような目的があるのかということを,あらかじめマネージャーがしっかりと整理し,スタッフ(参加者)にプレゼンしておくことです。
そのうえで,自由にアイデア出しをしてもらったり,チームでの業務への取り組み方を話し合ってもらうと,今までにない新しいやり方や方法論が見えてくると思います。このとき,スタッフから自由に意見を出してもらったうえで,最終的な決定権がマネージャーにある場合は,そのあたりも前もってきちんと説明しておくとよいでしょう。
 ファシリテーター型リーダーが創る場には,参加型の場が生まれ,参加型の場からはスタッフ間の前向きな関係性が導かれます。
風通しのよい組織を目指していく場合には,このようなリーダーシップスタイルが,よい効果を生み出すことでしょう。
 
次回はファシリテーター型リーダーが創る職場風土についてお伝えしたいと思います。ではまたね。
 

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