第9回 退院後にも問い合わせの電話がかかってきます

第9回 退院後にも問い合わせの電話がかかってきます

2012.5.21 update.

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小林光恵

1960年、茨城県行方市生まれ。看護師、著述業。著者に『ナースマンがゆく』(幻冬舎文庫)など。また、漫画『おたんこナース』の原案・取材を担当。エンゼルケア関連の著書として、『改訂版 ケアとしての死化粧―エンゼルメイクから見えてくる最期のケア』(日本看護協会出版会)、『死化粧(エンゼルメイク)―最期の看取り』(宝島文庫)、『死化粧の時―エンゼルメイクを知っていますか』(洋泉社)などがある。2001年よりエンゼルメイク研究会代表。


小林光恵のホームページ:http://www003.upp.so-net.ne.jp/furakoko/

退院後の問い合わせへの対応

 

q02.gif退院後、ご家族から問い合わせの電話が入ることもあるそうですね。

 

a03.gif今の時代、ご遺体が変化するという実感がもちにくいのと、身内を失った直後で平静ではいられないことなどもあって、ご遺体になにか変化が起きると、驚いて電話をかけてこられることがあるようです。

 

q02.gifどんな内容の問い合わせが多いんですか?

 

a03.gif退院するときは口が閉じていたのに開いてきた、皮膚に水泡ができた、鼻から漏液があった、黄疸のあった方で肌の色が大きく変わった、口紅がはげてきたけれど上から塗ってもいいか、など、いろいろな問い合わせがあります。死後硬直に驚いて電話をかけてくるケースもあります。

 

q02.gifびっくりしてしまわれるんですね。

 

a03.gifそうですね。喪失という辛い事態に加えて医療に対してもともと複雑な思いがあり「さっきまで病院にいたんだから、病院がなにか変なことをしたのではないか?」、あるいは「対処を間違えたのではないか?」などと、思われる方もなかにはいらっしゃるようです。

急性心筋梗塞で亡くなられた方などの場合、数時間後に、顔にかなり強い鬱血が出ることがあるので、それを知らないご家族が「病院で殴られたのではないか?」と思ってしまったこともあるようです。

 

q02.gifそういう思いのある方に、どのように対応するのがいいんでしょうか。

 

a03.gifまず大事なのは、安心していただくこと。

「大丈夫、心配ないですよ」ということを伝え、「ご遺体は、いろいろに変化するのが自然で、異常ではありません」ということ、そして「きちんと適切な処置は行われています」と、冷静に伝えましょう。

 

q02.gif心を落ち着かせるわけですね。

 

a03.gif変化のうちには、当然、腐敗もあります。直接的に“腐敗”という言葉を使うことは避けたほうがいいかもしれませんが、「個人差や病状によっても、出方は異なりますが、そういう変化は、みんなある」と話し、安心していただきましょう。安心していただいたあとに、どういう対応をいしたらいいかについて、お話しするといいでしょう。

 

クレームとして受けないように

 

q02.gifでも、ご家族からの問い合わせには、動揺しそうですね。

 

a03.gif実際、“訴える”などという言葉が出やすい場面でもあるので、受けるほうも、注意が必要です。喪失の直後のつらい感情の表出なんだと理解し、「あぁ、そうですか」などと受け止めてしまったり、気の毒だと思い絶句してしまったりすると、「やっぱりそうなんだ。間違ったんだ」と思わせてしまうことになりかねません。

 

q02.gif受けたほうで、クレームと思ってしまうこともありそうです。

 

a03.gifご遺体に関する知識が薄かったり、ご家族の勢いに押されてびくびくした対応になったり、何も言わない、他の人にまわすなど、クレームを扱うような接し方は、絶対避けたいですね。

 

q02.gif誤解を生んでしまうわけですね。

 

a03.gif家族には、身内を亡くしたつらさがありますし、それをぶつける先がないから、攻撃という形の表現になってしまうことがあります。ですからそこは、敵対した感じにならないように、先ほども話したように、状況を冷静に説明したうえで、その後の対応についてアドバイスするようにしましょう。

 

q02.gifそのためには、ご遺体の変化や、その後の対応についてきちんと勉強しておく必要がありますね。

 

a03.gifご遺体の変化や基本的対応を把握しておけば、エンゼルケアのさまざまな場面で、自信を持って判断することにもつながると思います。

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