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2012.4.05 update.
第3回では、フィジカルアセスメント教育プログラムの内容を具体的に紹介します。
教育プログラムはⅠ~Ⅳで構成され、段階的に学ぶことができる内容になっています。今回は「教育プログラム フィジカルアセスメントⅠ」の流れについて写真を用いて解説します。
1.フィジカルアセスメント実践能力の前提条件を一致させるためのタスク
トレーニングが「フィジカルアセスメントⅠ」になっています。
2.個人のフィジカルアセスメント実践能力を高めるために「フィジカルアセスメントⅡ」でシナリオシミュレーショントレーニングをプログラムしています。
3.「フィジカルアセスメントⅢ」では、呼吸管理の実践能力を高めます。
4.「フィジカルアセスメントⅣ」ではさらにチームを通して実践力を向上させるためのシミュレーションへとプログラムを発展させていきます。
フィジカルアセスメントⅠでは、フィジカルアセスメントに必要な基本的知識・技術の習得のために呼吸器・循環器の構造と機能を理解し、正常と異常を学び、フィジカルイグザミネーション技術を習得します。これにより、フィジカルアセスメント能力の前提条件を一致させて、フィジカルアセスメントⅡ以降の教育プログラムが効果的に積み上げられるように組み立てています。参加した新人看護師からは、「異常呼吸音について、その種類と実際の音を聞くことができて、再確認と整理をすることができた。」「直接診て、触って、確認することの大切さを再確認した。」などの感想がありました。
目 的
呼吸器・循環器系フィジカルアセスメントに必要な基本的な知識と技術を習得する。
一般目標
①呼吸器・循環器系の構造と機能を理解し、正常と異常を学ぶ。
②呼吸器・循環器系の基本的なフィジカルイグザミネーション技術を学ぶ。
行動目標
①呼吸器系フィジカルアセスメント
胸郭と肺の構造と機能を説明できる。
正常呼吸音・異常呼吸音を聴き分けることができる。
副雑音を聴き分け、聴取部位を特定することができる。
②循環器系フィジカルアセスメント
心臓・血管の構造と機能を説明できる。
不整脈がある場合に脈拍数測定ができる。
血圧値により脈拍触知できる部位を特定できる。
脈触知および胸郭拡張性に異常があることに気づき、対処について説明できる。
対象者
新卒看護師 142名
使用シミュレータ
・フィジコ、Mr.ラング、イチロー(京都科学)
・SimMan、ALSシミュレータ(Leardal)
プログラムⅠの流れ
講義・演習前 知識・シミュレータプレテスト
↓
講義
↓
演習
↓
講義・演習後 知識・シミュレータポストテスト
↓
講義・演習4か月後 知識・シミュレータフォローアップテスト
↓
フォローアップテスト不合格者の習得支援
1.講義
集合教育で行います。
◆呼吸器系フィジカルアセスメント 3時間45分
名古屋大学医学部保健学科 山内豊明教授
◆循環器系フィジカルアセスメント 2時間45分
名古屋大学医学部附属病院 山口弘子救急看護認定看護師
2.演習
呼吸器系
*肺の構造を理解した聴診部位の確認
*異常呼吸音(高調性連続性副雑音、低調性連続性副雑音、粗い断続性の副雑音、細かい断続性の副雑音)、呼吸音減弱、正常呼吸音の聴き分け
循環器系
*血圧測定と脈拍触知
*心電図確認と脈拍測定
*PEA時の観察内容と対処方法
演習は新卒看護師を2つのグループに分け、呼吸器と循環器に分かれて約2時間演習します。その後、呼吸器と循環器が入れ替わりさらに約2時間演習を行います。
知識は択一の筆記試験で、技術はシミュレータを用いたパフォーマンスを評価します。
<知識テスト>
方法
択一問題15問、時間各10分、得点範囲0~15点
内容
呼吸器:胸郭・肺の構造と機能、呼吸音
循環器:心臓・血管の構造と機能、ショックの徴候
フォローアップテストまでは紙媒体での実施でしたが、フォローアップテスト後の習得支援はホームページ上のe-portfolio内でオンライン習得できるようにしました。
<シミュレータテスト>
方法
シミュレータを用いたテスト各9題、時間2分/1題、得点範囲0~9点
内容
呼吸器:正常呼吸音、呼吸音の左右差、副雑音の種類と聴取部位
循環器:不整脈時の脈拍測定、血圧変動に伴う脈拍測定、PEA時の観察と対処
フォローアップテストまでは総合医学教育センタースキルスラボで実施し、フォローアップテスト後の支援は、当事業支援室横のシミュレーショントレーニング室で完全習得できるように体制を整えました。この支援では、インストラクターの指導下で各種シミュレータを活用したトレーニングを1人1時間受講できるようにしました。
「シミュレータを使うので理解しやすい」「一回では分からなかった呼吸音も繰り返すうちに分かるようにあり、嬉しくなった」等、シミュレータを用いた学習に対する満足度は高かった。また、「基礎知識の不足を実感したので学習する」「時間外で行うことも多く大変だったが、学んだことが身につけば自信を持って働けるようになるので頑張ろうと思う」等、学習の必要性を認識しており、学習効果が実感できれば、モチベーションが上がるという反応であった。
今回のプログラムを実施して、フィジカルアセスメントを学ぶために必要な知識・技術修得の条件を一定にし、プログラムⅡへの準備を整えることができたのではないかと考えています。このプログラムを終えた後はOJTで学びをより深め、定着させていくための教育指導体制を整えていくことが非常に重要であることもよく分かりました。そのためには、講義・演習後に受講生へのフィードバックを行い、受講生本人が自己の課題を明確に捉えられるようにし、self-trainingとOJTを繰り返し行えるようにできると良かったのではないでしょうか。
社会の変化を的確にとらえながら、看護管理者として直面するさまざまな問題について解決策を探る月刊誌。主任から部長まで幅広い読者層に役立つ情報をお届けする。