かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2012.1.19 update.
近年,褥瘡治療には除圧や局所管理の他に栄養管理が重要であることが明らかになってきました。
また,NSTや褥瘡対策チームの普及により,多くの施設でチームによる取り組みが積極的に行わ
れるようになってきています。
しかし,多職種によるチーム医療を展開するうえで,褥瘡治療と栄養管理を効果的に行うために
は,それぞれの職種が専門的知識を共有しながら検討することが必要です。
この連載では,褥瘡患者の栄養管理について,専門的な知識,技術をコンパクトに解説し,実践
の現場に役立つ情報を提供させていただきます。病棟,在宅さまざまな現場で活動するナースの
皆さんにとって,患者さんの状態に応じた適切な栄養管理を行う指針となれば幸いです。
*本連載は毎週金曜日に更新する予定です。
褥瘡患者の栄養アセスメント③水分・微量元素・ビタミン
栄養投与の成分には,三大栄養素(糖質,たんぱく質,脂質)のほかに,水分と微量元素・ビタミンが必要です。
それぞれ,貯蔵と排出の特性を踏まえながら,必要量を確保することが必要です。
現段階では,褥瘡患者に必要な水分量のエビデンスは存在していません。そのため,患者さん個々の状態に応じてアセスメントを行い,水分摂取量の目安を決定します。
身体の約60%は水分でできており,体内から出ていく分の水分を補う必要があります。一方,高齢者の体内水分量は約50%と少ないため,脱水が生じやすく,特に褥瘡のある高齢者は経口摂取量の不足により水分量が減少している可能性が高いため,注意が必要です。また,褥瘡からの滲出液が多い場合にも脱水に注意が必要です。水分摂取量の目安と脱水のアセスメントを表1に示します。
微量元素・ビタミンの投与量は,下記表2の推奨投与量を目安とします。
褥瘡患者における微量元素・ビタミンの有用性は,エビデンスとしては不十分なのが現状です。しかし,ビタミンと微量元素がたんぱく質合成や創傷治癒に関与していることは生化学,栄養学において確認されていますので,不足しないよう管理します(Part2-④参照)。
特に,亜鉛,ビタミンCは欠乏しないよう注意が必要です。以下に亜鉛とビタミンCの機能,必要量と管理上の注意点について解説します。
●亜鉛
細胞の成長と分化の中心的役割を果たしている亜鉛の一般成人の至適投与量は1日7.0~9.0㎎ですが,褥瘡患者の場合は30㎎を目安とします。
ただ,60㎎を超える摂取は免疫能を低下させ,2g以上になると毒性を示すので過剰摂取には注意が必要です。
●ビタミンC
コラーゲンを作る間葉組織の生成と保持に寄与するビタミンCは水溶性のために吸収・代謝が早く,必要量以上に摂取しても尿中に排泄されるため一般的に過剰症の心配はいりません。その反面,貯蔵量が少なく欠乏状態になりやすいという特徴があります。1日あたり100mgの摂取が推奨されています。
人体は侵襲(ストレス)が加わると副腎皮質ホルモンを大量に分泌し,この生成には相当量のビタミンCが使用されます。「褥瘡患者にビタミンCが有効である」という明らかなエビデンスはありませんが,侵襲下によりビタミンCが使用されることはこれまでの研究から明らかで,不足しないよう毎日補充することが必要と考えられます。