かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2011.12.22 update.
近年,褥瘡治療には除圧や局所管理の他に栄養管理が重要であることが明らかになってきました。
また,NSTや褥瘡対策チームの普及により,多くの施設でチームによる取り組みが積極的に行わ
れるようになってきています。
しかし,多職種によるチーム医療を展開するうえで,褥瘡治療と栄養管理を効果的に行うために
は,それぞれの職種が専門的知識を共有しながら検討することが必要です。
この連載では,褥瘡患者の栄養管理について,専門的な知識,技術をコンパクトに解説し,実践
の現場に役立つ情報を提供させていただきます。病棟,在宅さまざまな現場で活動するナースの
皆さんにとって,患者さんの状態に応じた適切な栄養管理を行う指針となれば幸いです。
(2) 褥瘡患者の栄養アセスメント①必要エネルギー量
栄養管理計画では,必要エネルギー量の算出とアクセスルートの選定,および栄養投与成分の決定を行なっていきます。今回は,必要エネルギー量の算出について解説します。
必要エネルギー量を算出するには,推算式による予測安静時エネルギー量(Resting Energy Expenditure:REE)を算出する方法と,間接熱量測定による実測REEを算出する方法があります。
推算式にはいくつかの種類があり,なかでも,Harris-Benedictの計算式にて基礎エネルギー消費量(Basal Energy Expenditure:BEE)を算出し,活動係数とストレス係数を乗じて導き出す方法がもっともスタンダードです。ほかに,25~35kcal/㎏/日の簡易法を用いる場合もあります。
下記に,Harris-Benedictの計算式,簡易法を示します。
注意が必要なのは,褥瘡患者のストレス係数にはエビデンスはなく,推算式にて算出される必要量はあくまでも推定値です。そのため,適切なモニタリングを継続的に行って投与量を調整する必要があります。
体重測定が困難な場合には,推定式を用いて推測します。推定式には「Grantの式」「寝たきり患者の予測式」などがあります。
●Grantの式による体重予測
男性:体重(kg)=0.98×上腕囲(cm)+1.27×ふくらはぎ周囲(cm)+0.40×肩甲骨下部皮下脂肪厚(mm)+0.87×膝高(cm)-62.35
女性:体重(kg)=1.73×上腕囲(cm)+0.98×ふくらはぎ周囲(cm)+0.37×肩甲骨下部皮下脂肪厚(mm)+1.16×膝高(cm)-81.69
●寝たきり患者の体重予測
男性:体重(kg)=1.01×膝高(cm)+上腕囲(cm)×2.03+上腕三頭筋皮下脂肪厚(mm)×0.46+年齢×0.01-49.37 (誤差±5.11kg)
女性:体重(kg)=1.24×膝高(cm)+上腕囲(cm)×1.21+上腕三頭筋皮下脂肪厚(mm)×0.33+年齢×0.07-44.43 (誤差±5.11kg)
また,四肢の切断など身体の一部が欠損している場合には,全体の体重における各部位の比率で算出します。
●総体重に対する身体各部位の比率
総体重を100%:頭部7%,胴体43%,上肢6.5%(上腕3.5%、前腕2.3%、掌・手指0.8%),下肢18.5%(大腿11.6%,下腿5.3%,足1.8%)
次回は,褥瘡患者の栄養アセスメントの栄養投与について説明します。