かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2011.6.14 update.
2001年4月日本女子大学卒。同年9月からカリフォルニア州にあるミルズ大学付属大学院修士課程にてChild Life in Hospitals and Community Health Centers with Children who have Medical Needsを専攻。2003年12月同大学院卒業後、2004年4月から静岡県立静岡がんセンターにてチャイルド・ライフ・スペシャリストとして勤務、2012年5月より現職。趣味はA型らしくお部屋の掃除、でも病院のプレイルームやおもちゃの片付けはいつも時間がかかり、その間に入院している子どもたちやお母様達が手伝って下さり、「本当にA型なの?」と疑惑を持たれています・・・
第3回 CLSとしての思い
国立がん研究センター中央病院緩和医療科
大曲睦恵
CLSになりたい方、留学等に関心がある方は以下のサイトをご参照下さい! |
資格をとり、CLSという職に就きましたが、この仕事が養護施設実習の時に出会った子どもたちの心のケアにどのように貢献できるのかという答えを出すにはまだまだ勉強不足を実感します。アメリカでは医療行為が虐待のトラウマにつながらないよう、CLSが施設の子どもたちに対して虐待などの検査を受ける前の心の準備を行っている、という文献もあります。しかし日本においてどのように適応できるかは未知数ですし、もしかしたら難しいことなのかもしれません。でも当時の思いは今の自分の原動力でもありますし、これからも大切に心の片隅におきながら経験を重ねていきたいと思います。
CLSをめざした時に感じた「子どもたちと笑顔で接したい」という思いは今でも強く抱いていますが、私自身が笑顔でいることを心がけるとしても、子どもたちが笑顔になることを期待して関わることはいけないなと思います。
5歳の女の子がいました。その子はいつも私がお部屋に行くとにっこりして「遊ぼう!」と言うのですが、治療の影響で嘔吐が続き、遊べない時期がありました。ある日、いつものようにご挨拶にベッドサイドに行くと、その子はちょうど体調が悪いところだったのか、ベッド上でお母様に添い寝してもらい、肩で息をしてぐったりしていました。私は挨拶をしてすぐに去ろうとしましたが、その子は肩で息をしながら、私の顔をじっと見ていました。口元がわずかに動き、表情を作ろうとしているのですが、お顔が固まっています。私は思わず「にこにこじゃないときもあるよね。にこにこじゃない○○ちゃんも、みんなが大好きな○○ちゃん。○○ちゃんがいてくれるだけでいいんだよ、みんな大好きだよ」。と言いました。その子は小さく頷き、目を閉じました。
病院にいる子がその子らしくいられる大きな要素として、「コントロール感を保つこと」が大きいと感じます。病気になり、やりたいことができず、思うようにいかない…。子どもたちにとってこうしたコントロール感が失われることは、大きなストレスになります。そんな中でも、遊びや声かけを通して、子どもたちがそのままでもいいんだと実感でき、どんなに小さくてもその子なりにコントロール感を持つことができ、毎日を過ごしていく支えが見つけることができることを期待しています。
これまで出会った看護師さんたちに、「どうして看護師さんになろうと思ったのですか?」と聞いたことがあります。「小さいころからなりたかった」という答えが80%、「違う道に進もうとしたけれど気づいたら看護学校に行っていた」というような「知らない間に選んでいた」が10%、その他が10%です。
でも、皆さん懐かしそうな、恥ずかしそうな、とても素敵な笑顔で答えてくださいます。その原点にあるのは、きっととても大切な思いなのでしょう。職種は違うけれど、大切な原点を共有し、それぞれの目標を胸に協働していることに喜びを感じています。
アメリカではCLSという職業が確立しつつありますし、子どもをとりまく社会環境にも日本と異なる点があるように思います。ただ、日本では日本らしいCLSのありかたがあると思いますし、私たちはそれを模索し続けています。日々の経験や多職種の方々との連携から学び、勉強を続け、この国の医療現場に少しでも貢献できたらと思っています。
留学中にはさまざまな体験をしました。留学中のいろいろな経験、留学先での実際のカリキュラムや授業内容、現場実習などについては、また他のCLSが連載で触れていただくので、次回は、私がいま実際に病院でどのように働いているかについて紹介したいと思います。