べーきゃんの演劇を観に行ってきた

べーきゃんの演劇を観に行ってきた

2026.2.13 update.

施設プロフィール

BaseCamp(ベースキャンプ)
東京都豊島区千川駅のすぐそばにある就労継続支援B型事業所。精神疾患などを抱えるメンバーが集い、自分たちの生活について語り合うことから創作や発信を行っている。通称べーきゃん。「誰かの苦労をみんなで劇や即興パフォーマンスに」「モヤモヤは儀式にして置いて帰ろう」「経験をダンスに」などを合い言葉に活動中。

活動見学会は大盛況!

こんにちは、『精神看護』編集室の金子です。昨年12月に代官山蔦屋書店にて開催された、伝説のイベント「対話について対話する一日」に参加していた、就労継続支援B型の事業所「BaseCamp」(通称:べーきゃん)が、活動見学会を開催するというので、これはと思い、1月23日の金曜日、べーきゃんのある東京都豊島区千川へ行ってきました。お日柄もよく、1、2、3ダ―。

べーきゃんの演劇を観に行く_1 活動見学会にはたくさんの人が!

蔦屋書店のイベントでは『べーきゃんクリニック』という、即興を多く取り入れた奇想天外感強めの劇を披露されていましたが、今回は代表作『VOICE!!!!!』の「Rバージョン」なるものを上演するそうです。さて、いかなる劇なのでしょうか。

演劇作品『VOICE!!!!!』とは何だ?

まず、なんでタイトルがVOICEなのか、というところからですが、配布されたパンフレットにこう書いてあります。

「自分にやってくる声」をテーマにしたベースキャンプの演劇作品『VOICE!!!!!』

なるほど、利用者さんにやって来る「幻聴」や、どこからともなく聴こえてくる「心の声」をテーマにするからVOICEなんですね。また、パンプレットにはこんなことも書かれています。

語られたエピソードをみんなで演じます。台本や決まったセリフがなくても即興でやってみる。そうやって劇が立ち上がります。

ふむふむ。少し補足すると、「語り合い」の活動のなかで語られた、利用者さんの個人的なエピソードについて、感想を言い合ったり、解釈を考えたりしながら、劇を仕立てていくということです。

これは、劇作家で演出家の岩井秀人さんが行っているワークショップ「ワレワレのモロモロ」に通ずるところがありますね。

では、概要がわかったところで『VOICE!!!!! ~Rバージョン~」のほう見ていきたいと思います!

そうそう、Rバージョンというのは、主人公の方のイニシャル「R」に、由来しているとのことです。

べーきゃんの演劇を観に行く_2 パンフレットの表紙。何かとかけ声が多いべーきゃんです。
べーきゃんの演劇を観に行く_3 パンフの中はこんな感じ
べーきゃんの演劇を観に行く_4 パンフの中、続き

聴こえてきてしまう「声」を演劇にする

劇の主人公Rさんは、電車に乗ることに困難を感じています。電車に乗っていると不安を覚え、どこからかやって来る「声」たちに圧迫されていきます。「なんで、お前はそんなことができないんだ」「子どもだってできるのに」......みたいな。

べーきゃんの演劇を観に行く_5 やって来る「声」に、圧迫される主人公

電車に乗れないのだから、遠くの職場に行くことはできない、友だちと飲みに行くこともできない。「できます!」「行きます!」と答えては、どうしても電車に乗ることができず、結局断りを入れることに。そんなことの繰り返し。主人公の苦悩は深まります。

そこから、いろいろあって、主人公は「声」たちと向き合っていくことに、こころを決めます。そして「声」たちに自分で名前を付けることにして......

べーきゃんの演劇を観に行く_6 語りかけてくる「声」たちと向き合う主人公

以上、大変ざっくりで恐縮ですが、こんな感じの劇です。この劇、写真と文字で表現することなかなか難しく、レポートはここまでとさせていただきます。もっと知りたい方は、是非べーきゃんで実際に体験されてください!

目的を演劇に置き換えてみる

さて、12月の蔦屋書店のイベントと今回の見学会にて、べーきゃんの2作品を見させていただいたわけですが、最後にちょっとまとめ的なことを書かせていただきたく思います。

自分の体験を語り、参加者と共有するという活動は、多くの事業所で行われていることのように思います。事業所のみならず、教育機関や企業の研修とかでも。そして教育者や研修の講師は、このように言うかもしれません、

この取り組みには「自分の体験を他者に語ることで自己理解を深め、それを共有することで他者理解につなげる」という目的がありますと。

それはそうだと思います。自己理解、他者理解とても大切です。

でも、なんていうか、こういう明け透けな目的を掲げてやったところで、いい方向に行くのかな......と思ったりします。狙ってやると、どうしても外れてくるというか、狙うから外れるというか。

べーきゃんの演劇の取り組みは、目的を「自己理解・他者理解」から「劇をつくる」に置き換えることにより、偶然に起こって来ることを感知可能にするということではないでしょうか。目的に縛られているときには、気づくことができない感情や理解に、触れることができるようになるという。それが自然と自己理解、他者理解につながっていく。

かつ、べーきゃんが考えているのは、そうやって完成した劇が観て面白いものでありたいと。

全国に、アートの制作を主な活動としている作業所は、数多くあります。利用者が制作したアートをギャラリーや美術館で展示し、それらはアトリエやネットで誰でも購入することができます。株式会社として障害者アートを制作・販売し、大きな利益を上げているところもあります。

べーきゃんは、活動のなかでつくられた劇を面白いものにして、外に持っていきたいのだと思います。あわよくば商品化のようなことも。代表の中島さんに直接お聞きしたわけではありませんが、自分はそのように感じています。

実は、この見学会に日本大学芸術学部の教員の方と学生さんがいらしていました。演劇をつくることの意味とともに、作品そのものの面白さを確かめに来られていたのかもしれません。

筆が滑ってきましたね、このあたりでやめておきます。

ただはっきり言えることは、べーきゃんは演劇に本気であるということです。そんなべーきゃんを『精神看護』は、これからも応援していきたいと思います。

同時に、精神医療と演劇、ケアと演劇について活動をされているすべての方に、エールを送らせていただきます。そして、よろしければ、取材にも行かせていただければと存じています。(文責:金子力丸)

【べーきゃん今後の予定】

■ 2026年 2月23日(月祝)14:00~17:00
支援職向けの会「S.O.S!~ケアとアナキズム~」
ゲスト:栗原康さん
支援職も「えすー・おー・えす!」って、ほんとに言ってみる日。栗原康さんのお話を聞いたり、おしゃべりしたり。

■ 2026年 2月27日(金)13:30~14:30
「べーきゃん活動見学会」
BaseCampの活動をご紹介します。「どんな場所?」「何してるの?」が気になる方、ぜひお気軽に!

■ 2026年 3月15日(日)13:30~15:45
「いつのまにかラッパー!になるワークショップ 」
日々のもやもや、言葉にならない感覚。ビートに押し出され、いつのまにかラップになっていく。

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