新型コロナウイルス感染拡大防止のため、
ご自宅で過ごされている方が多いかと思います。
おうち時間のお供にぴったりなのが、
映画や書籍ではないでしょうか。
どうせなら楽しいのがいい!
なんだったらお洒落なのがいい!ということで、
お洒落に関する作品をご紹介します。
ただし、単なるお洒落ではなく、「高齢者のお洒落」です。
お洒落は若者だけのためのものではありません。
お年を召された方は、ときに「もう若くないからお洒落なんて」
といったお言葉を口にされますが、
お洒落に年齢制限はありませんし、
年を重ねて初めてできるようになるお洒落もあると思っています。
今回は、高齢者のお洒落に焦点を当てた映画や書籍を紹介しながら、
高齢者ならではの素敵なファッションについて書かせていただきます。
お洒落は生涯現役で!と高まる映画
私のお洒落欲を爆発的に高めてくれるのが、
ニューヨーク出身の写真家アリ・セス・コーエンさんのブログと、
60歳以上のお洒落な女性の日々を映した
登場する女性たちは、
それぞれにお洒落と生き方に対するこだわりがあって、
何十年もの人生を歩んできた経験値が
醸し出す魅力に、とても心惹かれます。
彼女たちのお洒落は“若づくり”ではなく、
“今の自分”を魅力的に見せるお洒落です。
無理に若い人と同じ格好をして年を隠そうとはしません。
実際の年よりも若いファッションをすれば
若くてきれいに見えるわけではなく、
どんなに流行っていても、自分に似合わなければ魅力的には見えないのです。
若者のお洒落は自分には似合わない、
むしろ自分に似合うもっと素敵なファッションがある、
そんな思いが伝わってきます。
この映画を見ていると、お洒落をしなきゃいけないな、と思います。
見るたびに「あー、お洒落したい! もっと毎日の服装を大切にしたい!」と思うのです。
さらにこの映画がすごいと思うのは、
老い、身体の不調、死について、見ないふりをせず、
登場人物それぞれの向き合い方も描いているところ。
もう十分楽しんだから焦らないという人もいれば、
もう先が長くないから焦っている、という人もいます。
しかしどの女性も、悲観せず、自身の変化を受け止めたうえで、
“今の自分”を楽しんでいる姿に力をもらえます。
「老いは祝うべきこと」
「シワを隠しても人生は変わらない。大切なのは自分を追い込まないこと」
「“美”は年齢とは無関係」
胸に刻んで人生を共にしたい言葉がいっぱいです。
年を重ねるのが楽しみになる雑誌
年を重ねたからこそ似合うファッションがあります。
シニア女性のお洒落雑誌として
創刊号のキャッチコピーは「60代から、もう一度おしゃれを楽しもう!」
お洒落で素敵な女性を取り上げつつ、
ファッション、ヘアメイク、料理、健康、暮らしなど、
60代以上の方の生活のお供になる内容が掲載されています。
私は現在20代で、「若いから何でも似合うわね〜」と言われることもありますが、
正直、似合わない服もたくさんあります。
クラシックな形のジャケットや、ハイネックのブラウス、
ボリュームのあるワンピース、白やライトグリーンといった明るい色など、
ちょっとした形や色の違いだとは思うのですが、しっくりきません。
ミセス、シニアの女性を美しく見せるお洋服は、
20代の私が着ても似合わないことが多々あります。
『素敵なあの人』を見ていると、
「ああ、こういう服が似合うのが羨ましい」
と思う着こなしがたくさんあります
ここ10年ほどの間に、高齢者のファッションに
関するさまざまな書籍が出版されています。
グレイヘアならではのファッションだったり、
島田順子さんや結城アンナさんなど、
自分なりのスタイルを築いている方のファッションだったりと、
探していて楽しいです。
(ただ、若づくりをしないといっても、
ミセス、シニアのお洒落のコツとして、
体型をうまく隠すことは基本にあるので
前回の記事もご参照ください。)
コンプレックスは隠しても年は隠さない、
そんなスタイルを私も目指したいと思います。
お洒落は、年をとることをポジティブに
思わせてくれる大切な要素です。
いつか私にも似合う日が来るかな、
なんて考えていると、この先の人生がちょっと楽しみになります。
ファッションの力を再確認した展覧会
映画や書籍ではありませんが、
やっぱりファッションの影響はすごい、と改めて感じたのが、
理学療法士の山田修平さんが主催した企画で、
「華麗な加齢」というキーワードで、
年をとることのポジティブなイメージを
写真と文章で表現されているものでした。
被写体の高齢者の方々は、皆さんお洒落で、生き生きとされていて、
見ていて純粋に「こういう年のとり方をしたいな」と思いました。
中でも心に残った作品が、
笑わないおじいちゃんにお気に入りのお洋服を着てもらったら
満面の笑みが飛び出した、という写真。
認知症のおじいちゃんが
いつも不機嫌そうにしているのが気になって、
お孫さんが笑わせようといろいろ話しかけるも、反応はいまいち。
そこでお孫さんのひらめきで、
おばあちゃんの協力を得てお着替えをしてもらったところ、
笑ってくれたのだそうです。
身にまとうという行為は、
お気に入りの服と一体になる感覚があるように思います。
不思議と楽しくなったり、
自身が湧いたりと、ファッションの力は侮れません。
私自身、80歳の祖母にお洋服を贈ることがあります。
お誕生日にニットを贈ると、叔父が撮影したという
祖母の着用した姿の写真が届きました。
普段進んで写真に写る人ではないので、
きっと叔父に乗せられたのだろうと思ったのですが、
経緯をきくと、驚くことに祖母自らの撮影依頼だったそうです。
気に入ってくれたこと、
自分の姿を写真に残したいと思ってくれたことが
大変嬉しく、私も励まされる思いでした。
社交性としてのお洒落
私自身はミセス向けアパレル会社に勤めていますが、
お客様がお洋服を着る場面はさまざま。
「旅行に行く」「食事に行く」という定番のお出掛け用途もありますが、
「デイサービスに行く」という方もいらっしゃいます。
デイサービスも、大切な社交の場。
「いつもお洒落ね」「今日も素敵ね」と言われると、
嬉しいし、通うモチベーションにもなるようです。
お気に入りの洋服を着ていると、電車で「そのお洋服、素敵ですね」と声を掛けられた、
という話も何度か聞いたことがあります。
お洒落はコミュニケーションのきっかけにもなりますよね。
お洒落は自己満足のためだけではなく、社会生活を支えるためのものでもあります。
いくつになってもお洒落は力をくれますし、
自分を魅力的に見せてくれるファッションは、
周りにも良い影響を与えると思います。
自信がついて活動的になることもあるかもしれません。
「もう年だから」という意識にとらわれず、
高齢者の方々が、年齢と向き合い、
今の自分の支えとしてお洒落ができるよう、
接していきたいと考えています。