医療法人はぁとふる 運動器ケア  しまだ病院の取り組み

医療法人はぁとふる 運動器ケア  しまだ病院の取り組み

2019.1.29 update.

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 問題や欠点ではなく,組織やスタッフの「優れた特性,豊かさ,強み」にアプローチし,それを伸ばすことで成果を生み出すマネジメント手法―“ポジティブ・マネジメント”。この手法を導入する施設は広がってきています。このコーナーでは,書籍では語り切れなかった,さまざまな取り組みを紹介していきます。
 今回は,本書に掲載されている“生命体としての組織”という概念にもとづいた,「医療法人はぁとふる 運動器ケア しまだ病院」の取り組みを紹介します。

“完璧な機械としての組織”にとどまらない, “生命体としての組織”へ

 

 当院も含め,多くの病院では,管理階層が重層化しているピラミッド構造の組織が職種ごとに存在しています。これはトップダウン型で,組織全体の方向性をコントロールしやすい,現場の役割が細分化されているために効率性や専門性を高めることができる,などのメリットがあり,スタッフには与えられた職務を間違いなく,忠実にこなすことが求められます。これは,本書に掲載されている“完璧な機械としての組織”に近い形だといえます。

 しかし,組織の抱える問題の中には,多様かつ複雑な要因で構成され,1つの職種や部署・部門だけでは解決できないものも多く,各スタッフが与えられた役割を正確に果たすだけでは十分に対応できないこともあります。現代の組織マネジメントには,激動する環境のもと,さまざまな関係者との複雑で流動的なかかわり合いの中で,対応を柔軟に調整し,組織横断的な課題を解決する力も必要とされています。これは,いわば, “生命体としての組織”をつくることが求められているともいえるでしょう。

 

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完璧な機械としての組織
1人ひとりのメンバーが与えられた機能を機械のよう に間違いなく,正確に,そして効率的に果たし,人に よるバラつきのない状態をつくることを理想とする 組織。安定性や正確さが得られる一方で,組織行動を 柔軟に調整することが求められる複雑な状況におい ては,むしろ硬直性や閉塞感を生み出す要因となるこ とも指摘されている。
生命体としての組織
左とは対照的に,より大きな全体とのつながり中で,メンバーが考え方や行動を臨機応変に変化させ,新しい秩序を生み出していく組織。生物の各細胞が全体のどこに位置しているかに応じて,骨や筋肉,血液,神経といったさまざまな形に柔軟に変化するさまに似ている。
 

(本書pp50-52を参照)

 

 そこで,当院では2016年に“生命体としての組織”づくりの一環として,組織横断的な課題の解決をめざす,職種や部署・部門の枠を越えたチームを立ち上げ,定期的にミーティングを開催しています。そこでは,メンバーは固定せず,誰が参加してもよい形式とし,他職種のスタッフと“何でも話せる場”となるようにしています。

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  話し合いの風景

 

 また,参加者が気軽に意見を言いやすくするにするために,ミーティングでは次のような工夫を行っています。

 

◎オープンスペースでの実施

 普段,顔なじみのない者同士が集まると,人は緊張してしまい,発言することを躊躇してしまいがちです。オープンスペースには,その開放感から緊張を和らげ,発言をしやすくするなどの心理的効果があります。  

 

◎呼称は「~さん」

 上下関係にとらわれず,自由に意見を言いやすくしたり,場の雰囲気を柔らかくするために,メンバーを役職名ではなく,全員「さん付け」で呼ぶことをルールとしています。

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◎他者の意見を否定しない

 立場の異なる考え方を否定せずに受容することを大切にしています。多様な意見に触れることで発想が広がり,1人ひとりでは生み出せないアイデアや価値が創造されやすくなります。

 

◎流動的なメンバー構成

 誰が参加してもよい形式であるため,メンバーがダイナミックに入れ替わります。同じメンバーでは意見や考え方が固定化していきますが,メンバーが流動的であるため,常に新しい視点が生まれ,ミーティングが活性化します。

 

実践をとおして生まれたポジティブな成果・変化

 

 本書(pp51-52)でも触れられていますが,さまざまな職種・部署のスタッフと闊達に話し合う機会をもつことで,“独立した,互いに関連のない力で組織がつくられているという思い込み”がなくなり,スタッフ1人ひとりが“より大きな全体とつながっている感覚”を得られているのではないかと考えています。また,これにより,ほかのスタッフとの協働の可能性を模索し,試行錯誤を繰り返しながら,関係者全員が納得できる考え方や行動を見つけ出し,これが組織横断的な課題の解決力向上につながっていく—このようなポジティブな成果・変化が見られるようになりました。

 実際,ミーティングの参加者に活動による自分の変化や職場の変化を聞いところ,次のような声が聞かれています。

 

他職種・他部署の課題を自身のこととしてとらえられるようになった。苦悩の共有ができ,協力の精神が生まれた。

 

 

個々では解決できない課題を多部署で検討し,改善できている。声を上げれば何かが変わることを実感できた。

他職種のスタッフと同じ時間を共有する中で,チームに貢献できているという気持ちが芽生えるようになった。

 

 

新たな人脈ができた。他部署の特性や個々の強みを認識することができたので,それを活かしたい。

 職種や部署・部門の枠を越えたミーティングをとおして,参加者全体の話す,聞く,課題を整理する,議事録を残すなどの能力が向上したと感じています。また,意見を自由に言いやすくする工夫をしていることで,毎回,ミーティング中に笑いが起き,皆が楽しみながら取り組めていると実感しています。

 

今後の目標

 

 本書では,ポジティブにものを見る大切さについても語られており,その中で“マザー・テレサのことば”が引用されています(本書のp2表Ⅰ-1参照)。

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 今後も,自分の行動や判断のよりどころとなる“ものの見方”に目を向け,それがチームのメンバーにどのような影響を与えているかを常に意識しながら,ポジティブ・マネジメントを実践していきたいと考えています。

 「なぜか楽しい」「知らない間に素敵な結果」「どこにでもいきいきとした笑顔」「Unique(唯一無二で,面白い)」―そんなことばが自然と出てくる,魅力的なチームやミーティングづくりを継続的に行っていきたいと思います。

 

(執筆:医療法人はぁとふる 法人本部 石神昌枝)

 

 文献

1)手島 恵・編:看護のためのポジティブ・マネジメント 第2版.医学書院,2018

2)佐藤郁哉,山田真茂留・著:制度と文化―組織を動かす見えない力.日本経済新聞出版社,2004

3) Laloux F・著,鈴木立哉・訳:ティール組織―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現.英治出版,2018

 

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運動器ケア しまだ病院

整形外科手術を主体とする急性期病棟と,リハビリテーションを主軸にした地域包括ケア病棟からなる。運動器を動かし,鍛え,機能を高め,"痛まない身体をつくる"をモットーとした運動器ケアを提供している。また,"動いて治す"治療を追求するために,医師,看護師,セラピストなどの多職種が1つとなったチーム医療・チームサポートを展開している。

病院ホームページ:http://www.heartful-health.or.jp/shimadahp/

[主体性を高めチームを活性化する!]看護のためのポジティブ・マネジメント 第2版 イメージ

[主体性を高めチームを活性化する!]看護のためのポジティブ・マネジメント 第2版

問題や欠点ではなく,組織やスタッフの「優れた特性,豊かさ,強み」にアプローチし,それを伸ばすことで成果を生み出す“ポジティブ・マネジメント”。
いまある豊かさや強みを伸ばすことで,主体性やモチベーションを高めると同時に,スタッフ間の関係を向上させ,組織の一体化をめざす。
組織づくりを,前向きに,創造的に,そして協働的に行ううえで役立つ1冊。

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