かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2016.10.19 update.
Q.話し手が聴き手に与える印象のうち、
最も大きいとされるのはどれ?
1.言語情報(言葉で表現される話の内容)
2.聴覚情報(声の質感・話す速さ・声の大きさ・口調)
3.視覚情報(外見・表情・態度・ジェスチャー)
A.視覚情報
コミュニケーションは、その手段によって、言語的コミュニケーションと非言語的コミュニケーションに分けることができます。
言語的コミュニケーション(バーバルコミュニケーションverbal communication)とは、話し言葉、書き言葉や手話といった言葉を伝達手段としたメッセージのやりとりをいいます。非言語的コミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーションnon-verbal communication)とは、言葉以外の伝達手段を用いたメッセージの総称です。
「目は口ほどにものを言う」と言いますが、相手に気持ちを伝えようとするときは、言葉以外の表情やしぐさ、姿勢、声の調子、相手の距離などの言葉以外のコミュニケーションがとても重要な意味を持ちます。
非言語的コミュニケーションは、次の7つに分類されます(Knapp, 1972)。
①身体的特徴(体型、毛髪、皮膚の色など)
②身体伝達行動(顔の表情、視線、姿勢、ジェスチャー、手足の動きなど)
③接触行動(握る、なでる、叩くなど)
④近接空間(空間、距離など)
⑤物品(服装、髪型、化粧、持ち物など)
⑥環境要素(場所、家具、装飾品、照明や光、湿度、壁の色など)
⑦パラランゲージ・副言語(声のトーン、高さ、速さ、リズム、抑揚、音声の特徴、笑い声、泣き声、沈黙(間)、時間の使い方など)
冒頭のQの答えは「視覚情報」でした。これは、アルバート・メラビアンA. Mehrabianが1970年代初頭に報告したメラビアンの法則に基づいています(Mehrabian, 1981)。「7‐38‐55のルール(7%‐38%‐55% Rule)」ともよばれるものです。それによると、話し手が聴き手に与える印象の大きさは、次の割合だとされます。
○言語情報(言葉で表現される話の内容)━━━━━━━━7%
○聴覚情報(声の質感・話す速さ・声の大きさ・口調)━━ 38%
○視覚情報(外見・表情・態度・ジェスチャー)━━━━━ 55%
もちろん、状況によってこの割合は変化するでしょう。しかし、この法則は、コミュニケーションにおいて、言葉以外の部分の占める割合が非常に大きいことを示しています。つまり、言語的コミュニケーションのメッセージを正確かつ効果的に伝達するためには、伝えたい内容にふさわしい非言語的コミュニケーションがとても重要であるということです。言い換えると、言語的メッセージと非言語的メッセージが一致することが重要です。
したがって、医療場面においては、患者の話した言葉だけにとらわれるのではなく、言語的コミュニケーションをとりながら、同時に非言語的コミュニケーションにも着目することが重要です。また、患者さんとの会話の際には、皆さんの表現、態度やジェスチャーが患者さんに伝えたい内容に反映されることも考えておきましょう。
非言語的コミュニケーションは、コミュニケーションの過程において、効果的に情報を共有する機能を果たしています。具体的な非言語的コミュニケーションの機能は5つあるのですが────、非言語的コミュニケーションについての「ちょい出し」はここまで。
続きは篠崎恵美子・藤井徹也著『看護コミュニケーション──基礎から学ぶスキルとトレーニング』(医学書院、2015年)をご覧ください。
(引用文献)
・Knapp ML, Hall JA, Horgan TG. / 牧野成一,牧野泰子(訳).(1972 / 1979).Non-verbal Communication in Human Interaction. Holt, Reinhart&Winston, New York./ 人間関係における非言語情報伝達. pp5-11, 東海大学出版.
・Mehrabian A. / 西田司ほか(共訳). (1981 / 1986). Silent Messages:Implicit Communication of Emotions and Attitudes, 2nd ed. Wadsworth, CA. / 非言語コミュニケーション, pp93-116, 聖文社.
(第2回了)
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著:篠崎 惠美子/藤井 徹也