かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2016.8.04 update.
Q 次の場面のナースは患者さんに共感している? していない?
A「私」が主体となっているのでナースがしているのは共感ではなく同情です。
医療場面における専門的コミュニケーションにおいて、共感は重要なキーワードです。現代のカウンセリング技法の中核となっている来談者中心療法を創始したカール・ロジャースC.R.Rogersは、カウンセリングの前提となる、互いを尊重する建設的な人間関係の要素として「共感」「無条件の肯定的関心」「自己一致」をあげました。
患者さんの話をじっくりと聴くことを積極的傾聴(アクティブリスニング)といいますが、積極的傾聴においても、共感は欠かせない要素です。
共感は、日常生活においても使用される言葉ですが、実際には非常に複雑なものです。医療場面における専門的コミュニケーションとしての共感は、次のように説明できるでしょう。
共感とは、客観性を保ちながら他人が感じることを自分のこととして感じる(または感じようとする)こと。自分が患者さんの立場だったらどうであろうかと考えながら対応する態度のことをいう。
この共感ですが、同情とよく混同されます。
同情は、良くない状況(好ましくない状況)にある他者に対して、自分自身がその他者のことを気に病み、その他者の言動を自分のもののように感じることをいいます。
英語でも共感は「empathy」、同情は「sympathy」と表記される別の言葉です。empathyは、元々ドイツ語の「einfulung」(感情移入)という言葉から作られました。ですから、英語では感情移入も共感も「empathy」となります。
このような言葉の成り立ちからも考えられるように、同情の場合、主体は自分自身であるのに対し、共感の場合の主体は相手側にあります。Qの場面は、「私も」が主語になっています。そして、ナースは心の中で「かわいそう」と思っています。「かわいそう」という感情の主体は自分です。共感は、「私」と対象の間に優劣の関係はなく、相手の立場・目線から物事を見るように意識し、「私」の感情ではなく、対象の感情などに積極的関心を持とうとするものです。
この共感は、医療場面における効果的なコミュニケーションに重要な役割を果たします。
――――が、「共感」についての「ちょい出し」はここまで。
続きは篠崎恵美子・藤井徹也著『看護コミュニケーション──基礎から学ぶスキルとトレーニング』(医学書院、2015年)をご覧ください。
(第1回了)
看護の専門家として対人関係を築くために必要なコミュニケーションのスキルを、基礎から段階的に学べるテキスト。臨地実習の場でも役立つ1冊!
ロールプレイや模擬患者とのセッションのシナリオを用いることで、臨床で想定されるやりとりをイメージしながら、会話をトレーニングすることができる。さらに、臨床で遭遇することが考えられる状況での対応方法を「高度なコミュニケーション」として解説。
著:篠崎 惠美子/藤井 徹也