第2回 困った会議では、何が起きているのか!?

第2回 困った会議では、何が起きているのか!?

2012.10.01 update.

浦山絵里 イメージ

浦山絵里

杏林大学医学部付属病院に長年勤務し、その後、公立病院勤務を経て2007年にひとづくり工房esucoとして起業。現在、ナースファシリテーターとして看護協会、病院での研修セミナー講師、看護部門の業務改善プロジェクトや人材育成についてコンサルティングを実施。生き生きと看護師が語る「語り場づくりファシリテーター」として、看護師への支援活動を行っている。

○プロセスを創るという考え方 ファシリテーションとの出会い

その後師長となった私に、そのころ看護部長であったその上司は、「スタッフ一人ひとりへの対応ももちろん大切だけれど、本当のチームワークをスタッフの中に生み出されていくことを目指す。」という一つの課題をくれました。

 

ちょうどそのころの看護界は目標管理導入が声高に叫ばれだしたころ、コーチングは魔法の道具のようにもてはやされた頃でもありました。コーチングを主任も交えて学びながら、師長と主任が中心になって丁寧に個人面談を重ねるのですが、どうしても時間がかかってしまいます。

 

そこで最初はちょっとした時短のつもりで始めたのが集団コーチング(同期や、プリセプターとプリセプティ、親しい仲間など、双方が納得できる間柄なら一緒に目標管理面接をしましょうという呼びかけで始めたものです。)でした。このトライアルで起きたことは、少々刺激的な体験になりました。

気の合う仲間で目標を設定するということは、ちょっと先の夢を自由に語りあえる場になるのですが、そういう気のおけない仲間とシェアされた事は、不思議にかなっていくのです。しかも師長という役割でその場に同席する私も、それほどエネルギーをとられることもなく、ほんのちょっと始まりと終わりにその場のかじ取りをしてさえいれば、スタッフ同士が自由に話を始めていくのです。本当に話がのってくると、私の存在なんてあまり必要ない位になっていきました。
「これはいいな~、面白いな~、らくちんだな~」と思っていたところに現われたのが、ファシリテーション、プロセス、場づくりという言葉でした。

 

そこで、新たな学びが始まりました。そのころ院内のいたるところに風通しのいい雰囲気を広げたいと思っていた私は、学んだばかりの話し合いのスキルを使い、院内の各種専門職が関わる委員会の運営に臨みました。そして、そこではたと行き詰ったのです。思いはあって、自分でも褒めてあげたい位に話し合いの場にエネルギーをつぎ込むのに、結果が伴わない。そうこうしているうちに何となく参加者間の関係性がぎすぎすしてきて、「看護師さんたちはいつも熱いね~」なんて揶揄する声もちらほら伝わってきたりするようになったのです。

 

この時、あるファシリテーター(そのころはそういう言葉もあまりよくは知らなかったのですが)から、「プロセスが大切なんだよ。そのプロセスをきちんとデザインしないとだめ。ただスキルを使うだけは何も変わらないよ。その場のゴールを決め、参加者の目線で場を創り、後はその場の参加者に任せることは任せて、あなたは話し合いのプロセスを時折整理したり見える化してホールドし、時には今何が起きているのかを見立てて伝えることだけに徹してみたら?」というアドバイスをもらいました。

 

その後の話し合いでは、まず参加者の役割が見えにくくなるような席環境をつくり、ゴールとルール、時間を見える化(カレンダー裏に書き貼り出す)し、私自身が答えを出さなきゃという思いや答えの方向に仕向けることをするのではなく、この場にいる参加者の中に答えはあると信じてゴールへ向かう気持ちと、ゴールに向かうための問いを繰り返し丁寧に伝える事をしてみたのです。その時の参加者の情景は、今でもはっきりと覚えています。私にとっての原風景ともいえる話し合いでした。

 

プロセスをきちんと踏むこと、そういう場をホールドする自分を創り、スキルを高めること、これは今も私の中で続いている修行なのです。

 

ファシリテーションとは何か?ファシリテーターとはどんな人か?日本語ではないのでいろいろに訳す方がいらっしゃいます。ファシリテーションとは状態を表し、ファシリテーターとは役割を表します。ファシリテイトという言葉には、「容易にする」、「促進する」という意味があり、ファシリテーターはそういう状態を創る人なのです。

 

私のファシリテーターとしての師匠は、この春から同志社大学の大学院で教えることになった中野民夫さんという方ですが、彼は「話し合いの場のお産婆さん」がファシリテーターの役割。「産むのは母親、生まれてくるのは子ども、その妊娠から出産、産褥までのさまざまなプロセスを支援するのがお産婆さん」だと言っています。

 

まさにいろいろな話し合いにおいて、助産師と同じような立ち位置にいるのがファシリテーターだというわけです。

 

偶然彼は助産師を例に挙げてくれていたのですが、看護師や保健師も同じではないでしょうか?自分の価値観や生活、看護観も大切にしながら、相手の価値観や生活もリスペクトし、専門職という知識の提供も交えながら、その人がその人らしい人生を送って行く事を支援していくのが、私たちの仕事なのです。これは自分たちの仲間に対しても同様だと思います。

 

○認定看護管理者研修での出会い→多くの人と使いあいたい!

コーチングやファシリテーションと出会った前後、私はファーストレベルとセカンドレベルという2つの管理研修に参加しました。

 

ここでは、いろいろな規模の病院で働く、同じような中間管理職の看護師が集まっていました。いろいろ自分の身の回りに起こる課題を話すうちに、「それは大学だからできるのよ」という話を耳に聞くようになりました。「大学だからできる・・」この言葉は私の胸に刺さりました。私は夫の両親と同居していたのですが、ちょうどそのころから高齢化していた二人が徐々に体調を崩すようになりました。病院や老人保健施設、地域のリソースを使ううちに、いろいろな領域の看護師たちと出会うことになりました。

 

大学の環境はかなり恵まれている・・・と看護師としても家族としても実感した時間でした。そんな中、義母がお世話になった療養型病院で、「看護師チームと介護士チームの関係性を良くするために何かできないか?」また「地域の中でもっと連携をとっていくためにできることはないだろうか?」という相談を受けたのです。

 

そのころちょうどBe-Natuire Schoolというところで民ちゃん(前述の中野民夫さん)からファシリテーションを学んでいた私は、この病院で「対話の場」をつくることを提案したのでした。ベッド数250前後の病院は、職員も顔の見える関係をもてる規模であり、それぞれが感情ではなく思いを伝えあえたら、何かが変わると確信したからです。

 

まずは師長さんたちとファシリテーションを学び、次にさまざまな形で語り合いの場を創っていきました。

 

次回からは、話し合いのプロセス、ファシリテーションのスキルとともに、その病院での実践をまじえて伝えていきたいと思います。

 

長時間お付き合いいただき、ありがとうございました。

ではまたね!

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