かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2012.8.08 update.
東京警察病院看護専門学校卒業後、臨床看護、フリーナース、看護系人材紹介所勤務を経て、フリーライターに。医療・看護系雑誌を中心に執筆活動を行う。現在の関心事は、介護職の専門性と看護と介護の連携について。「看護と介護の強い連携で、日本の医療も社会も、きっと、ずっと良くなる!」と思っている。
厚生労働省は、平成25年度から医師、看護師、臨床心理士などによる緩和ケア専従のチームを都道府県に1つずつ作り、そのチームが在籍する病院に「緩和ケアセンター」を設置する方針を決定。来年度の予算概算要求でその経費を要求する方針です。まずは都道府県ごとに設置を始め、行く行くは各地のがん診療連携拠点病院に整備したい考えを持っています。
緩和ケアはがんと診断された時から始まるとされていますが、患者が緩和ケアの希望を申し出ても納得できる緩和ケアを受けられるとは限りません。※専従チームをもつ医療機関はまだ少なく、適切なケアが受けられなかったり、ケアの質にばらつきがあったり、といった現状です。そのため、どこでも専門的な緩和ケアが受けられる態勢を整えていくための取り組みといえます。
緩和ケアセンターの機能については、厚生労働省の緩和ケア推進検討会で議論されてきました。そこでは緩和ケアチームや緩和ケア外来、救急緩和ケア病床の管理・運営、緩和ケアの患者相談窓口機能なども備える予定です。そのためチームは前述の専門職種のほか、さらに多様な職種が加わった編成となることでしょう。
厚生労働省の緩和ケア推進検討会(座長:花岡一雄JR東京総合病院名誉院長)では、緩和ケアセンターの管理・運営についてはがん看護専門看護師がジェネラルマネジャーとして中心となって多職種を束ねていくことが適切とし、専門看護師の役割(実践・相談・調整・倫理・教育・研究)に対する期待を感じます。
東大病院緩和ケア診療部副部長の岩瀬哲氏は「(緩和ケア)センターにより、がん患者と緩和ケアチームが早くつながるようなシステムが構築されることになる。センターが患者のがん性疼痛などのスクリーニング業務を管理することで、緩和ケアチームが臨床に集中できる」と、緩和ケアセンター設置によって緩和ケアの充実に期待を寄せています。
現在、日本人の3人に1人はがんに罹患し、1日に30万人近くの人が何らかの治療を受けています(表)。医療者は、常に何らかでがん患者さんと関わっている環境でしょう。緩和ケアセンター設置による緩和ケア充実はもちろん、1人ひとりの医療者ががん患者さんの苦痛とその緩和に向き合う意識と環境作りによってがん緩和ケアセンターをより効果的に活用し、真の緩和ケア充実へとつながっていくことを期待します。
※急性期緩和ケア
緩和ケアというと、これまでは「終末期に受けるケア」と受け止められてきた。が、最近ではがんの診断を受けた時から始まるものと考えられている。進行がんの場合にも、治療をサポートするものとして早期から導入し、患者の病状に応じたケアを提案・選択していく急性期緩和ケアの考え方が広まりつつある。アンダーソンがんセンターの急性期緩和ケアユニットでは、人工呼吸器「BiPaP」や酸素供給装置を装着している患者を受け入れている。
表 がんに関する統計(平成23年6月現在)
項目 | 現状 | 出典 |
死亡数 |
総数 35万3318人(全死因に対し29.5%) [男性 21万1,322人](全死因に対し33.3%) [女性 14万1,996人](全死因に対し25.2%) →“日本人の3人に1人ががんで死亡” ※ がんは加齢により発症リスク増 →粗死亡数は増加傾向(高齢化の影響) ※ 年齢調整死亡率(75歳未満)は、平成7年以降減少傾向 (平成7年:108.4 → 平成21年 84.4) ※ がんの種類が変化している |
人口動態統計 (平成22年月報年計(概数)) |
罹患数 |
69万3784人 [男性 40万605人] 多い部位:①胃、②大腸、③肺、④前立腺、⑤肝臓 [女性 29万3179人] 多い部位:①乳房、②大腸、③胃、④肺、⑤子宮 ※男女とも、上位5部位のがんで、全がん患者の6割以上を占める ※乳房と子宮頸部の上皮内がんを含む |
地域がん登録全国推計値 (平成18年) |
生涯リスク |
男性:54%、女性:41% →“日本人の2人に1人ががんになる” |
国立がんセンターがん対策情報センターによる推計値 (平成17年) |
受療・患者 |
・継続的な医療を受けている者は152万人 ・調査日に入院中の者は14万1400人 ・外来受診した者は15万6400人 ・1日に29万7800人が受療(全受療の3.6%) |
患者調査 (平成20年) |
がん医療費 |
2兆8572億円 ※一般診療医療費全体の11.0% |
国民医療費 (平成20年) |
※平成23年版厚生労働白書:がんに関する統計(平成23年6月現在)より引用
http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/11-2/kousei-data/siryou/sh11010203.html