かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2012.5.14 update.
4月から,日本看護協会の皮膚・排泄ケア学科専任教員に着任しました。新たな気持ちで,認定看護師をめざすやる気あふれる看護師の皆さんの教育に専念しています。
近年,褥瘡治療には除圧や局所管理の他に栄養管理が重要であることが明らかになってきました。また,NSTや褥瘡対策チームの普及により,多くの施設でチームによる取り組みが積極的に行われるようになってきています。しかし,多職種によるチーム医療を展開するうえで,褥瘡治療と栄養管理を効果的に行うためには,それぞれの職種が専門的知識を共有しながら検討することが必要です。この連載では,褥瘡患者の栄養管理について,専門的な知識,技術をコンパクトに解説し,実践の現場に役立つ情報を提供させていただきます。病棟,在宅さまざまな現場で活動するナースの皆さんにとって,患者さんの状態に応じた適切な栄養管理を行う指針となれば幸いです。
Part4-②褥瘡(局所)の状態から考える栄養管理
(前回記事「Part4-①創傷治癒過程に応じた栄養サポート」から続く)
『静脈経腸栄養ガイドライン』では,褥瘡患者に対し,「褥瘡の観察を含めた栄養アセスメントを実施し,必要な症例に対して栄養管理計画書を作成する」ことを推奨しています。そして,この項目は推奨レベル「A-1」です。つまり,もっとも高いエビデンスレベルに位置づけられているのです。
このことが意味しているのは,褥瘡患者の場合,ODAによる評価だけではなく,褥瘡(局所)の状態から栄養のアセスメントをすることも重要だということなのです。
●『DESIGN』で評価する栄養状態
褥瘡の状態からの栄養アセスメントは,褥瘡治癒過程を評価するための重症度分類『DESIGN』の項目から検討することができます(表1)。
●豚肉様の創部=不良肉芽=栄養状態不良を疑う
褥瘡局所のケアが十分であるにもかかわらず,褥瘡の改善が認められない場合には,栄養管理が不十分であることが推測されます。
また,肉芽の色や状態から栄養状態を推測することができます。肉芽の色が薄く,浮腫状であれば,低栄養であることが考えられます(写真1)。逆に,肉芽の色が赤色で良性肉芽であれば,栄養状態が良好であると判断できます(写真2)。
以上のことから,もっとも効率的に栄養計画を作成するためには,褥瘡の観察と同時に栄養アセスメントを実施することが必要です。そのためには,栄養士も褥瘡回診に参加してもらうなど,多職種によるチームでのかかわりが重要です。
患者さんのADL,QOLを向上させるための褥瘡ケアにおいては,創部のケアだけではなく,栄養管理をはじめとする全身管理の視点が重要です。そのためにも患者さんのいちばん近くにいるナースが必要な知識を身につけながら,チームによるケアをさらに推進していきましょう。
【かんかん!編集室より】
褥瘡ケアと栄養管理の基礎知識を解説した本連載は,今回をもちまして,一旦,終了いたします。長いあいだ,ご愛読を賜りありがとうございました。
時をあらためて,事例を通じて褥瘡ケアと栄養管理の関係性を解説する「褥瘡ケアと栄養管理【事例編】」をスタートする予定です。しばらくお待ちいただけますと幸いです。