Part4 創傷のアセスメントと栄養管理(全2回①)

Part4 創傷のアセスメントと栄養管理(全2回①)

2012.3.30 update.

石川 環(独立行政法人国立病院機構東京病院  皮膚・排泄ケア認定看護師) イメージ

石川 環(独立行政法人国立病院機構東京病院  皮膚・排泄ケア認定看護師)

近年,褥瘡治療には除圧や局所管理の他に栄養管理が重要であることが明らかになってきました。
また,NSTや褥瘡対策チームの普及により,多くの施設でチームによる取り組みが積極的に行わ
れるようになってきています。
しかし,多職種によるチーム医療を展開するうえで,褥瘡治療と栄養管理を効果的に行うために
は,それぞれの職種が専門的知識を共有しながら検討することが必要です。
この連載では,褥瘡患者の栄養管理について,専門的な知識,技術をコンパクトに解説し,実践
の現場に役立つ情報を提供させていただきます。病棟,在宅さまざまな現場で活動するナースの
          皆さんにとって,患者さんの状態に応じた適切な栄養管理を行う指針となれば幸いです。
          *本連載は毎週金曜日に更新する予定です。

Part4-①創傷治癒過程に応じた栄養サポート

 

創傷治癒過程

 

 創傷は,「血液凝固期~炎症期」「増殖期」「成熟期~組織再構築期」の過程をたどり治癒します

 正常な治癒過程では,血液凝固期~炎症期が受傷直後~5日頃,増殖期が炎症期の後半から3週間頃,成熟期~組織再構築期が1か月から1年くらいかけて経過します(図)

 

石川パート4スライド1.jpg

 

 

 しかし,褥瘡は局所にかかる圧迫やずれ・摩擦などから治癒過程が順調に経過せず,炎症期が遷延することが多くみられます。

 

 褥瘡が発生して1~2週間経過すると褥瘡の状態は安定し,急性期から慢性期に移行します。創面が暗紫色から黒色化してくれば深い褥瘡である可能性が高く,深い褥瘡になると,治癒過程とともに病態の変化が生じます。

 

 

創傷治癒過程に応じた栄養サポート

 

 褥瘡患者の栄養管理では,創傷治癒過程に応じた栄養サポートを行うことが重要です()。

石川パート4スライド2.jpg

①血液凝固期~炎症期

 炎症期にはエネルギーが消費され,必要エネルギー量は増加します。また,侵襲時に副腎皮質ホルモンが大量に分泌され,その生成に相当量のビタミンCが使用されます。
 

 そのため,エネルギー(糖質),たんぱく質に加え,免疫賦活作用のあるアルギニン炎症抑制作用のあるn-3系脂肪酸およびビタミンCの積極的な補給が重要となります。

 

②増殖期

 増殖期では,細胞増殖に必要な栄養素が必要となりますので,たんぱく質が異化にならず肉芽増殖に利用されるよう,エネルギー(糖質)とたんぱく質の補給が必要です。
 

 また,血管拡張,細胞増殖促進作用のあるアルギニンコラーゲン合成に関与するビタミンA・Cやたんぱく質合成に関与する亜鉛の積極的な補給が重要となります。

 

③成熟期~組織再構築期
 

 成熟期では,脆弱な組織を強化する必要があります。
 

 そのため,上皮組織合成に関与するビタミンA,コラーゲン架橋形成に関与するカルシウム,たんぱく質の合成速度に影響を与える亜鉛の積極的な補給が重要となります。

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