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2012.2.13 update.
都立駒込病院感染症科医長・感染対策室長
著書に『JJNスペシャル82 感染症に強くなる 17日間菌トレブック』がある。
感染症の情報満載のtwitterはこちら→@imamura_kansen
イラストレーション:櫻井輪子 http://www.wakonosu.net/
冬~春にかけて流行するウイルス性胃腸炎の代表が、「ノロウイルス」と「ロタウイルス」です。
この2つのウイルスの典型的な流行パターンは、「前半がノロ」で「後半がロタ」という順序で流行がすすみます(ノロのあとはロタ→“ノロタ”と覚えておきましょう)。
まだ、ノロウイルスの散発的な集団発生は起こっている状況ですが、全体的なノロウイルスの発生数は減ってきています。これからは小さなお子さんが感染しやすいロタウイルス胃腸炎の流行期です。ロタのことをしっかり学んでおきましょう。
ロタウイルス胃腸炎は、感染してから約1~3日で症状がでてきます。主な症状は「おう吐」、「下痢」、「発熱」で、腹痛などをともなうこともあります。ノロウイルスと比べると、ロタウイルスの方が熱がでやすく、下痢の期間も長くなりやすいことがわかっています。また、発症年齢はノロウイルスよりも低い傾向があります。乳幼児に多くみられ、5歳までに多くの子供が感染します。
ロタウイルス胃腸炎は、ウイルスが口の中に入ることで感染します。たった1mLの下痢に1億~100億個ものウイルスが含まれているともいわれ、おう吐した中にも多くのウイルスが入っています。ロタウイルスは、わずか10個~100個というごく少量のウイルスでも感染するので、汚染された環境も感染の原因となってしまいます。このウイルスは、乾燥した環境の中でも、安定した状態で長くいることができます。消毒しなければ、汚染された場所に数週間から数ヶ月間も生存することがあるのです。また、感染力が強いので、カーペットなどで乾燥すると、ホコリと一緒に舞ってしまい、口から入って感染する可能性もあります。
ロタウイルスは、下痢症状が終わってからも1週間以上もの間、便にウイルスが排出されることがあります。下痢がなくなった時点で感染しにくくはなりますが、しばらくは便にウイルスが入っている可能性も考えておくべきでしょう。
ロタウイルスは1回かかっても完全な免疫はできないので、繰り返しかかることもあります。しかし、ある程度の免疫はできるので、2回目以降の方が軽くなる傾向があります。そして、幼少時から感染を繰り返すことで次第にかかりにくくなっていき、5歳以降の発症は少なくなります。しかし、成長するにつれて抗体はまた下がってくるので、子供から親が感染ということも起こるのです。
ロタウイルスは下痢・おう吐・発熱をきたすため、脱水が急速にすすんでしまいます。小さな子どもは脱水に弱いので、病院受診までの水分補給が初期対応のポイントとなります。市販のORSと呼ばれる経口補水液、自家製では「水1リットル+砂糖ティースプーン6杯+塩ティースプーン1杯」などで、病院受診までの急場を乗り越えましょう。
★『ORS』(Oral Rehydration Solution)と呼ばれる経口補水液は、途上国でのコレラなどで補液の変わりとなるようにつくられました。適切な糖分で吸収を良くして、下痢で失われる電解質を補給できるような成分になっています。
ロタウイルスはアルコールの効きにくいウイルスなので、アルコール性の手指消毒薬を過信しないようにしましょう。予防の基本は、流水と石けんによる手洗いです。また、下痢やおう吐物の中には大量のウイルスが含まれています。乾燥するとホコリと一緒に舞ってしまうので、乾く前に処理しましょう。処理の際にはマスクをつける方が安心。手袋もあるといいですが、手袋をつけるつけないにかかわらず、処理後はしっかりと手を洗います。
汚染された床などは、うすめた塩素系消毒剤で広めに消毒します(家庭用漂白剤なら約200倍程度に薄めて使います。つまり10mLなら2リットル、20mLなら4リットルの水を加えて薄めるということです)。この時は必ず手袋をつけるようにし、換気をよくすることが大切です。
汚染された衣類は、他の衣類と一緒に洗わないようにします。まずはマスクと手袋をつけてバケツで水洗い。そして薄めた塩素系消毒剤で消毒するのがベストです(色落ちしてしまうかもしれません)。
※塩素系消毒剤は絶対に手指などの消毒には使わないでください。
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