かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2012.1.19 update.
都立駒込病院感染症科医長・感染対策室長
著書に『JJNスペシャル82 感染症に強くなる 17日間菌トレブック』がある。
感染症の情報満載のtwitterはこちら→@imamura_kansen
イラストレーション:櫻井輪子 http://www.wakonosu.net/
インフルエンザが予想以上の流行となっています。
今季のインフル対策は、これからが正念場です。
敵をよく知って、しっかり対応していきましょう。
今季のインフルエンザは、比較的遅い流行開始となりました。しかし、年末年始の休み明けからは感染者が急増しています。当初は東海地方など一部の地域を中心とした増加が目立ちましたが、現在では全国的な広がりとなってきています。
今のところ、全国的に流行しているインフルエンザの90%以上がA香港型となっています。A香港型は5年ぶりの流行。しばらく流行がなかったため、感染しやすい人も増えていると思われます。
一方、B型のインフルエンザは、現時点での発生数は少ないものの、すでに散発的な集団発生も起こっています。過去には、A型に遅れてB型が流行したことも度々あります。したがって、まだまだB型の流行にも注意が必要な状況だといえるでしょう。
一般的には、感染後1~4日間の潜伏期間のあと突然の高熱で発症することが多く、頭痛、筋肉痛、関節痛などを伴ったりします。また、鼻水や咳もよくみられる症状で、まれに下痢などの消化器症状も起こります。
インフルエンザが重症化する原因として多いのが脳症や細菌性肺炎です。特に、意識レベルの変化に気づきにくい乳幼児の脳症、呼吸器症状に乏しい高齢者の肺炎などの早期発見には、日頃の状態をみている家族による観察が大切です。
インフルエンザの検査を受ける時期には、ちょっとしたコツがあります。まず、発熱しても12時間以内は検出感度が低いということを知っておきましょう。発熱後の24~48時間が最も診断しやすくなりますが、それでも100%診断できるわけではありません。一方、タミフルなどの治療は発症48時間以内に開始することがすすめられています。つまり病院の受診は、発熱してから12~48時間の間がベストということになるのです。
治療の中心はタミフルとリレンザ。その他にイナビル、ラピアクタ点滴薬があります。これらの薬による治療では、投与後すぐに熱が下がるわけではありません。あくまでも発熱期間の短縮と重症化を防ぐのが目標の治療だと考えましょう。
なお、解熱剤については、脳症を起こしにくいといわれているアセトアミノフェン(商品名カロナールなど)を選ぶのが基本になります。
ワクチンは前季と今季は同じ内容。A型が2種類とB型1種類の混合ワクチンとなっており、その中には流行中のA香港が含まれています。ワクチンを打っても感染することはありますが、打ったのに無駄だったとがっかりしないでください。インフルエンザワクチンは、重症化を防ぐのが最大の目的です。
ワクチンを接種しても効果が出るまで2週間以上かかります。これからは「手洗い」と「咳エチケット」など、予防の基本をしっかりと確認して対応していきましょう。
インフルエンザは、咳などの飛沫(ひまつ)による「飛沫感染」で感染します。このため流行時に人混みの中へ行くことはできるだけ避けたいところです。また、患者本人が鼻や口を触れた手で汚染したところを触れ、その手で鼻や口に触れることで感染することも多いということを知っておいてください。
予防の基本は、手洗い、マスク、咳エチケット。「人からうつされないためのマスク」よりも、「人にうつさないためのマスク」の方が有効です。マスクには、汚染された手で口に触れることが少なくなるという隠れた効果もあります。マスクをはずす時にも、手洗いをするようにしましょう。
咳がではじめたら本人がマスク。マスクがなければ手やハンカチでおおう、あるいは横をむく。咳をしている本人が気をつけることが最善の方法なので“咳エチケット”と呼んでいます。子供は汚染されている手の平ではなく、肘の裏側でブロックと教えましょう(水平チョップまたは アイ~ンのポーズです)。
「たかが手洗い、されど手洗い」、「ゴホンとしたら咳エチケット」・・・予防の基本を確認しましょう。
流行期には、病院の職員も日常生活でインフルエンザに感染する危険性が高くなります。医療者から患者さんへの感染が広がらないよう、診療時の手指衛生を徹底しておきましょう。さらに流行期間中は、診療や看護ケアの際にマスクを着用するということを検討してもよいかもしれません。(特に免疫低下のある患者さんの診療には気をつけてください。)
また、患者さんの入院時、外泊後、そして面会者の発症にも注意しておく必要があります。
以上、インフルエンザの情報をまとめてみました。
少しでもみなさんのお役に立てれば幸いです。
インフルエンザの流行期もあともう少し。
がんばって乗り越えましょう!
日常で出会う感染症、医療現場で出会う感染症、感染対策を読みやすい語り口でまとめた一冊。
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