かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2011.10.21 update.
近年,褥瘡治療には除圧や局所管理の他に栄養管理が重要であることが明らかになってきました。
また,NSTや褥瘡対策チームの普及により,多くの施設でチームによる取り組みが積極的に行わ
れるようになってきています。
しかし,多職種によるチーム医療を展開するうえで,褥瘡治療と栄養管理を効果的に行うために
は,それぞれの職種が専門的知識を共有しながら検討することが必要です。
この連載では,褥瘡患者の栄養管理について,専門的な知識,技術をコンパクトに解説し,実践
の現場に役立つ情報を提供させていただきます。病棟,在宅さまざまな現場で活動するナースの
皆さんにとって,患者さんの状態に応じた適切な栄養管理を行う指針となれば幸いです。
*本連載は毎週金曜日に更新する予定です。
Ⅳ-4 代謝された各栄養素が褥瘡の改善に果たす役割③(ビタミン・微量元素)
ビタミン・微量元素は,全身の生理的機能をつかさどる重要な栄養素です。
三大栄養素にこれら二つの栄養素を含めて五大栄養素と言われています。車の走行に例えるならば,ミラーやライトがないと走行が可能であってもいつか事故を起こしてしまうように,ビタミン・微量元素が不足する状態が持続すると,さまざまな病態が引き起こされてしまうのです(表)。
高齢者,褥瘡のリスクの高い患者さんのケアにおいて, 慎重に観察したいポイントばかりです。
また,ビタミン・微量元素は,肉芽形成においては補助的な役割を果たしており,必要量は微量であっても不足すれば創傷治癒は確実に遅延してしまうのです。
創傷治癒に必要なビタミン・微量元素を図に示しました。
ビタミン・微量元素のなかでも,亜鉛は褥瘡治療に最も関連のある微量元素です。
亜鉛は,たんぱく質合成のほかに,舌蕾の形成にも関与しています。亜鉛欠乏により味覚障害が生じて,食欲が低下し,結果的に低栄養を助長してしまうのです。
褥瘡患者の多くは亜鉛欠乏状態にあるため,亜鉛の補充を念頭に置いた栄養管理が必要です。
ただし,亜鉛と銅は吸収における拮抗作用があり,亜鉛の過剰摂取は,腸管からの銅の吸収を阻害してしまいます。同時に銅を補充する際には注意が必要です。
次回からはPart.3として,これまで解説した基礎的知識を活かしながら,褥瘡をもつ患者さん,あるいは予防的なかかわりが必要な患者さんの「栄養アセスメント」を具体的にどう進めていけばよいかについて学んでいきます。