【看護管理】どう育てる? 身につける? 看護師長・主任のマネジメントスキル

【看護管理】どう育てる? 身につける? 看護師長・主任のマネジメントスキル

2011.7.20 update.

臨床の最前線で対人援助に熱意を燃やしていた看護師が,“ヒト・モノ・カネ”をマネージする病棟の管理者になったらとまどい,迷いを感じるのは当然のこと。そこには看護部の手厚い教育・支援体制が求められる。

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この支援に向けて,マネジメント・ラダーを構築し,院内で中間管理者の体系的な教育に取り組む施設も増加しているが,看護師長・主任自身の自己学習に頼る施設も少なくないのではないだろうか。その支援体制はまだ十分とは言えないのが実情だ。

 

さる5月21〜22日,春日部市立病院の看護師長・主任を対象に「看護管理者のマネジメントスキル・ワークショップ」が開催された()。日本臨床看護マネジメント学会(嶋森好子理事長)によって,初の試みとして企画されたワークショップ形式のセミナー。1日約8時間,5日間のシリーズで開催される。

表:2日間のスケジュール概略

5月21日(第1日)「マインド」の日

1.オープニング

2.看護管理者の役割

3.リーダーシップ

4.問題意識

5.まとめ

 

5月22日(第2日)「自分スキル」の日

1.オープニング

2.論理的思考

3.情報分析・情報整理

4.問題解決力と創造性

5.優先順位と時間管理

6.まとめ

*詳しい2日間のスケジュールはこちら

 

嶋森理事長は開講にあたり,「看護の臨床マネジメントは長年,その人なりの個性,持ち味で脈々と行われてきたが,“マネジメントスキル”であるからには,訓練して身につけていくことが重要ではないかと考えている」と話し,今回,トライアルとして体験型学習形式のセミナーを実施し,有効性を検証したうえで,多くの施設の中間管理者が参加できるような方向性を模索したいとした。

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     嶋森好子氏

 

講師はP&G社で長年,マネジャーとしてスタッフ育成やパフォーマンスの高いチームビルディングに取り組んできた高田誠氏。氏は冒頭で「マネジメントスキルとは単なる学習ではなく修得するもの,いつか役立つことではなく,現状に役立てること,マネジメントとは過程ではなく結果である」とマネジメント(スキル)を定義した。

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高田誠氏

(次ページに続きます)

 

*関連情報:2011年発行の高田氏の著書『P&G式伝える技術 徹底する力』(朝日新聞新書)には,論理的に伝え,共有したことを組織で徹底するためのノウハウが満載。

 

取材日には,春日部市立病院の看護師長・主任,約25名が参加し,各時間ごとのテーマに関する短いレクチャーのあと,ポジティブかつオープンにグループディスカッションを行う,という形式のワークショップを通じ,個々のマネジメントに対する考えを深めた。

 

 

例えば「看護管理者とは何をする人か?(どんな責任を果たすべき人なのか?)」に関するグループディスカッションでは,「スタッフを通じて,患者サービスをマネジメントする」「スタッフの健康管理」「ヒト,モノ,カネ,情報のシステム化を行う」「心の痛みがわかるスタッフを育てる」など多様な意見が交換された。

 

また「問題を明確化するプロセス」を考えるテーマに対しては,配薬など病棟の医療安全上の課題など具体的な問題について検討され,マネジメントについて学びながら,臨床的な課題についても検討する機会ともなった。

 
この初めての試みについて,企画にかかわったお三方に評価をいただいた。
 
●春日部市立病院の前副院長・看護部長で現在は同院の顧問を務める山元恵子氏(現・富山福祉短期大学教授)

「年間1名か2名の主任・看護師長を外部の管理研修(ファーストレベル・セカンドレベル等)に出していたが,これは個人の資質の向上にはなるが,組織を変える力にはなかなかならない。

一人だから,モチベーションを継続させ,大勢の他人を変えることの難しさを経験している,一人の研修修了者の力での職場変革は困難で,時にはつぶされてしまうというリスクも伴う。

しかし,院内で行う管理研修では,課題や問題を共通理解し,仲間としての意識付けをも強めることが可能となり,モチベーションを共に継続させることができるため,そのメリットは大きい」

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山元恵子氏(左から2人目)を交えてのグループワーク

 

 

●春日部市立病院で副看護部長(教育担当)を務める吉川孝子氏

「臨床を離れて座学で看護管理研修を受講する機会はいくつかありますが,座学で得た学習を現場で活かすことは難しいと思っています。やはり,現場で経験した事象と知識の融合がその人を育てていくのではないかと考えていますし,現にワークショップ終了後はそれぞれの看護師長や主任の自信とやる気につながっていると思います」

 

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吉川孝子氏

 

●講師の高田誠氏

「前半が終わったところですが,すでに意識の変化,論理的に考えて積極的に解決に取り組む様子がみられています。継続して取り組んでいくことで皆さんと組織全体に大きな変化が生まれることを確信しています」                    

 

多忙な日常において,看護師長・主任間でそれぞれのマネジメントスタイル,理想のマネジメントについて,情報を交換する機会は多くないと思われるが,それを実現する貴重な機会であり,組織力や組織倫理の質向上にもつながるであろう学習の場となった。

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当日の参加者,講師の集合写真。充実の2日間でした!

 

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