【イベントレポート】訪問看護の「これあったらいいよね」を語り合おう

【イベントレポート】訪問看護の「これあったらいいよね」を語り合おう

2022.6.29 update.

一般社団法人Vehicle for Nurses(ビークルフォーナース) イメージ

一般社団法人Vehicle for Nurses(ビークルフォーナース)

「患者さんと向き合う時間を増やし、よりよい看護を提供するために、周辺業務を最適化するサポートをしたい。」という思いから、2021年9月に現場を持つ看護師たちが法人横断的に立ち上げた組織。
共同代表を務めるのは、柳澤優子氏(一般社団法人Life&Com代表理事)、吉江悟氏(一般社団法人Neighborhood Care代表理事)。理事は、柳澤氏・吉江氏に加え、岩本大希氏(WyL株式会社代表取締役)、中澤ちひろ氏(株式会社Community Care代表取締役)、藤野泰平氏(株式会社デザインケア代表取締役)。事務局は、井上浩太朗氏(医療法人社団ささえる医療研究所Backoffice)。

訪問看護事業所の仕事は、訪問によるケアが全てではありません。それが中核的な業務である一方で、日々の記録書や報告書、計画書の記載、レセプト請求、労務管理、公的調査・学術研究への協力……と「周辺業務」も数多く存在します。利用者と向き合う時間を充実させていくには、この周辺業務の効率化も大きな課題です。

 

そこに取り組もうと立ち上がったのが、一般社団法人Vehicle for Nurses(ビークルフォーナース、以下VFN)の皆さんです。法人の異なる訪問看護師たちが周辺業務の効率化を図るための組織を作りました。

 

本サイトでは、VFNが2022年6月10日に行ったオンラインイベント「訪問看護の『これあったらいいよね』を語り合おう」の模様を再構成してご紹介します。

※本記事は一部抜粋版。完全版は『訪問看護と介護』2022年9-10月号に掲載予定

 

企画:一般社団法人Vehicle for Nurses

構成:『訪問看護と介護』編集室

 

* *  *

 

これは「もうちょっとどうにかできるんじゃないか」

 

 

吉江 定刻になりましたので始めます。ご参加の皆さん、よろしくお願いいたします。本日のイベントは、一般社団法人Vehicle for Nurses(ビークルフォーナース、以下VFN)の私吉江とメンバー5人、さらにゲストの高山義浩先生(沖縄県立中部病院・医師)とともに訪問看護の「これあったらいいよね」を語り、それを通してVFNの狙うところについても紹介するという主旨のものです。

 

座談会に先立って私からVFNの事業内容を説明していこうと思いますが、まずは私個人が訪問看護の現場で働く中で感じていることからお話しさせてください。ごく一部ですが、訪問看護の業務フローの中で「もうちょっとどうにかできるんじゃないか」というものを列挙してみました。


 

 

訪問看護報告書や訪問看護記録書

多くの現場において「月末に送る」ことが多いと思います。ただ、例えば、「月初のエピソードを月末に送ったところで意味があるのだろうか」と書きながら思うことがあるんです。届けられた医師やケアマネジャーにとっても、月末に読んだところで時期を逸しているものが多いはず。そう思うと、この業務は誰かのためになっているのだろうか、そもそも読まれているのだろうかと考えてしまいます。

 

 

レセプト

介護保険における訪問看護療養費請求は電子化されている一方で、医療保険における訪問看護療養費請求については紙の運用で行われています。これは本当にどうにかしてほしいと思っているところです。

 

余談ですが、私の地域(千葉県柏市)では「請求を提出する際に添付する訪問看護療養費明細書は青紙に印刷する」ように指導されます。今朝まで知らなかったのですが、これって全国共通のルールではなく、ローカルルールだったようです。電子化されると、こうしたローカルに決められていることも統一化が図られるのかなとも思います。

 

 

記録・業務システム

厚生労働省で様式が決まっていて、それに基づいて記録・業務システムが設計されているんだと理解しています。ただ、その設計が必ずしも現場の動線と合っていない感覚があります。

 

例えば、私たちは日々、訪問看護記録書IIを書いていますよね。でもこの毎日書く記録書と、月々に書く報告書・計画書との動線が完全に分離してしまっている。1か月間のこと思い出したり、記録書を振り返ったりしながら、報告書・計画書を書くという感じで。記録書を毎日書いているわけですから、何らかの形で集約され、自動的に報告書・計画書として書き起こされるといったことが記録・業務システム側でできれば、業務負担の軽減が図れるのではないかと想像します。報告書・計画書の発送自体も外注なり、電送なりが可能になるとさらによいですね。

 

あと、現場では電話、FAX、メール、多職種連携アプリなど、いろんな形で多職種と日々連絡を取り合っている状況があります。そうした連絡手段は多様なままであっても、相手からの様々な連絡事項が全て記録・業務システムの方に集約されるといった仕組みができたら、すごく便利だろうなと考えていたりもします。

 

 

それで立ち上がったのがVFNです

 

……と、挙げ出すときりがないのですが、訪問看護に関わっている中ではこうした「もうちょっとどうにかできるんじゃないか」というものとは多く出会います。

 

そうしたどうにかできそうなものに取り組んでいこうと、有志の看護師たちで一般社団法人を立ち上げました。名前は、「Vehicle for Nurses(ビークルフォーナース)」です。言葉の通りで、「看護師にとって便利な乗り物(Vehicle)になりたい」という希望を込めています。なお、一般社団法人ですが、その中でも非営利型と言われる類型であるのも特徴です。

 

VFNが行っていきたいことは、「訪問看護の周辺業務の最適化」です。実際に訪問看護事業所には、看護を提供するという直接的な業務以外にも、さまざまな周辺業務が存在しています。

 

 

 

 

まずは業務・記録システムの最適化を

 

そうした周辺業務の最適化を図るために、VFNとしては手始めに業務・記録システムの最適化に取り組んでいきたいと考えています。

 

現状、訪問看護の記録・業務システムはさまざまなものが存在しており、各事業所・法人はそれぞれで各種メーカーの商品を選んで使用している状況です。

 

例えば、病院であれば専属の情報担当者を置いて、その担当者が100~1000人規模の看護師の声を吸い上げて電子カルテを選び、仕様変更をメーカーに要望するといったことをしているはずです。

 

 

一方で訪問看護事業所はそうではありません。全国平均で言えば、1事業所当たりの看護師数は5人程度。当然、専属の担当者などはおらず、多くの場合、素人である看護師自身がシステムメーカーとやりとりしながら、選定したり、仕様変更の要望を出したりしているというのが実態です。

 

そこでVFNでは、訪問看護事業所とシステムメーカーとの仲介――病院でいうところの情報担当者の部分ですね――を担いたいと考えています。

 

現場をよく知り、かつ情報システムにも比較的明るい非営利団体として、複数の訪問看護事業所の記録・業務システムに対するニーズを集約し、皆さんの代表としてシステムメーカーに要望を出す。あるいは皆さんに対し、「このシステムメーカーの電子カルテがよさそうだ」という情報をシェアしたりしていきたいと考えているわけです。例えれば、保険加入希望者と保険会社の間にいるファイナンシャルプランナーのような立ち位置と言えるのかもしれません。

 

 

 

VFNは何をもたらすか

 

VFNのような中間組織は、訪問看護事業所側、システムメーカー側の双方にとって利益があると考えています。

 

まず、訪問看護事業所側のメリットです。電子カルテの選定や乗り換えに際し、「訪問看護事業所にとって最適なものは何か」を小規模の各法人で悩まなくて済むようになります。システムメーカーと1から10まで直接やり取りする必要もなくなるはずです。

 

また、皆で同じものを使っていれば、「こういうふうに使うと便利だよ」という現場のアイデアを他者から得られやすくなると考えられます。

 

さらに、公的調査の回答負担を最小化できます。毎年、厚生労働省などの調査が行われていますが、今のところ紙で回答するものが多い。この作業も記録・業務システムを最適化し、例えば、自動集計・出力が可能な形になれば、事業所の回答不可を軽減させ、かつ調査実施側も必要なデータをより正確に高い回収率で集められるようにも作れるはずです。

 

一方のシステムメーカー側にとっては、VFNが窓口になることで効率性が高まります。単独事業所・法人の要望に逐一対応する必要がなくなったり、現場の感覚に合ったシステム更改の優先順位を把握しやくなったりもするはず。結果的に契約ロット数を大きく増やし、増収につながる可能性もあるかもしれません。

 

なお、VFNとしては、契約ロットを大きくすることで多少は価格を下げられるかもしれないという期待もあるにはあります。

 

しかし、システムメーカーの持続可能性にも配慮すべきであることから、値下げ自体は目標とはしていません。例えば、公的期間の入札と同様、定期的な契約更改を行い、適正な競争が保たれる仕組みなどを考えたいと思っています。

 

 

先生、記録は読んでいますか?

 

柳澤 ここから座談会に入っていきたいと思います。ゲストには沖縄県立中部病院の高山義浩先生にお越しいただきました。よろしくお願いいたします。早速ですが、VFNに対する率直な感想はいかがでしょう。

 

高山 はい。よろしくお願いします。沖縄県立中部病院の高山です。いつも訪問看護には大変お世話になっています。VFNの活動には共感します。われわれ医師も―――。

 

* * *

 

本サイトではここまで。この続きは、『訪問看護と介護』2022年9-10月号に掲載予定です。

 

なお、動画を視聴されたい方は、一般社団法人Vehicle for Nursesへ下記フォームよりお申し込みください。

https://forms.gle/W5NoMnh8tNuXJicBA

 

一般社団法人Vehicle for Nursesはクラウドファンディングに挑戦中(~2022年6月30日23時まで)です。詳細は下記にて。

https://readyfor.jp/projects/vfn

 

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