かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2020.11.19 update.
日本看護研究学会第46回学術集会にあわせ、ふだんとは違う切り口で看護研究書を紹介する第7回。
今回はとかく「難しい」と言われがちな、現象学的研究の基礎となる理論から具体的な分析方法まで解説した『現象学的看護研究―理論と分析の実際』を取り上げます。
この本の特徴はカラー別冊「現象学的方法を用いたインタビューデータ分析の実際」が付いていること。
本書の編者の1人である西村ユミ先生が、トランスクリプト(逐語記録)を実際に分析した例が見える化されています。
質的研究のデータ分析をどう行うか、なかなか言葉では説明しにくいものと思います。だから、大学院などで教員の指導を受けて習得していくことが求められます。
しかし、その一端だけでも視覚化できないものか・・・というところから生まれた別冊です。
同様の想いから生まれた書籍が戈木クレイグヒル滋子先生の『質的研究法ゼミナール―
グラウンデッド・セオリー・アプローチを学ぶ』(現在は第2版)です。
こちらは、グラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)でのデータ分析の実際が示されています。こちらも、惜しげもなく分析手法を公開しています。
今回取り上げた2冊は、看護研究では主要な研究方法の1つである現象学的研究とGTAそれぞれの概要とデータ分析の手法の一端が示されています。自身の学位論文執筆に用いる・用いないにかかわらず、看護系大学院生の皆さんには、看護研究者の基礎教養として一読いただけたらと願っています。
ちなみに、この2冊が生まれた背景には、共通する点があります。
それは、西村先生の『語りかける身体―看護ケアの現象学』(ゆみる出版、2001年)、戈木クレイグヒル先生の『闘いの軌跡―小児がんによる子どもの喪失と母親の成長』(川島書店、1999年)で、それぞれの研究が高く評価されたこと。私もそれぞれの本を読んで感銘を受け、いつかお二人に会ってお話を聞いてみたいと思っていました。
それがまさかお二人に研究方法に関する本を作ってもらうことになるなんて・・・これも、本に導かれたご縁ですかね。
(KT)