かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2020.10.22 update.
日本看護研究学会第46回学術集会にあわせ、ふだんとは違う切り口で看護研究書を紹介する第5回。
「週2~3回更新」を謳いながら、それができていなくてすみません。
今回は隠れた名著『参加観察法入門』。
「監訳者序文」(上記のリンクページで全文読めます!)に
「本の寿命の短いことで知られる本国アメリカにおいても、出版から30年近く経った現在でも刷り続けられているベストセラーである」
とある通り、原書は1980年に発行され日本語の翻訳は2010年の出版です。
2010年と言えば今から10年前・・・そのときに読んで、“なんてわかりやすくて、読みやすいのだろう。これぞ名著!”と思ったことを今も鮮明に覚えています(なので、今回取り上げています)。
そして、「これが売れたら、ほぼ同時期に出された同著者の
『The Ethnographic Interview』も翻訳しよう」と考えて、翻訳権の照会もしました。
が、それが実現していないということは・・・ご想像にお任せ致します(「隠れた名著」とした所以です…)。
本書が「隠れた…」となってしまったのは、主にエスノグラフィー研究のプロセスが解説されているからではないかなと推測しています(エスノグラフィーで学位を取得するのは、看護系大学院ではかなりハードルが高いですよね)。
本書を「…名著」と思ったのは、エスノグラフィーと参加観察法について研究者が知っておきたいことがバランスよく、コンパクトに、わかりやすく書かれているからです。
「参加観察法を使おう」という方はもちろん、主要な研究方法の概要はひと通り知っておかなくてはならない大学院生(特に修士課程の院生さん)がエスノグラフィーを学ぶにはうってつけです。
しかし、本の中身を毎回1ページだけ写真で紹介しようと考えている私には、このバランスのよさは曲者で、うまくまんべんなく書かれている本書から“どこを取り上げようか…”と非常に悩みました。
そして、「う~ん、書けない」と焦る私に、終わり間際のページから一条の光が。
「書くことを学ぶ唯一の方法は書くこと」(・・・次回は早く書きます!)。
この次のページには、「エスノグラフィーを書くことを学ぶための最良の方法の1つは、ほかの人が書いたエスノグラフィーを読んでみること」と。
尊敬するある先生が「よい論文を書きたかったら、まずはよい論文をたくさん読むこと」とおっしゃっていたことが思い出されたのでした。
(KT)