かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2018.12.07 update.
「あ、この本で読んだこと、ココでも使える!」という気づきが、学びの一歩だったりしますよね。好評既刊本のコンテンツを“ちょい出し”しつつ、リアルな読者による「使えた!」エピソードをご紹介します。
ペンネーム:にこ(看護教員歴6年)
初めまして。看護専門学校で教員をしています。本書で紹介されているskillを読んで、シミュレーション教育ではない場面でも、“腑に落ちる体験”をしたので少しご紹介させてください!
◆言い訳ばかりの彼女
私は学校での指導を通じて、さまざまな学生を見ています。中でも、緊張や心理的負担が大きいと、本来持っているはずの力が発揮されない学生が多いと感じていました。
その学生は一年留年をしていました。出会った頃の彼女は、いつも泣いている印象でした。
わたしが初めて実習担当したときには、遅刻、無断欠席はあたりまえ。実習に来たときの表情も、暗いものでした。記録が書けていない状況もあり、指導しようとすると、「帰ってから記録ができない家庭環境が原因だ」と言い訳ばかりしていました。
一方で、実習現場での彼女の姿は違っていました。出会ってすぐの患者さんからもすぐに信頼を得て関係性を築けていましたし、学生のあいだで行われるカンファレンスでの発言も、それは素晴らしいものでした。
それを彼女に「良かったよ」と返しても素直に喜ばず、自信がないのか、「自分にはできていないので」というのが口癖でした。
◆「なぜ、自信がなくなったのだろう?」
歯がゆく、厳しい言葉で発破をかけたい気持ちをぐっとこらえ、まずは心理的負担がどこからきているのか探ろうと、できるだけ話を聞くことにしました。そして、教員の側から信頼関係を作れるように接していきました。
その中でわかったのは、実は去年の実習で一生懸命頑張って記録したものを「字が汚くて読めない」と否定されてから、記録ができなくなったことでした。
私はそれからというもの、“安心して実習できる環境を整えることを第一”に彼女の指導しようと考えました。
◆「褒められる」ことを受け入れた
再び彼女と実習に行くことになりました。
彼女にはあれからも、できていることは良かったと伝え、必要な課題はできるだけ具体的に伝えてきました。
教科書を読むことが好きな彼女の強みを活かして、学習範囲を指定し、できていることに○(マル!)をしていきました。苦手とする記録については、彼女のほうから質問をしてきたときには指導するようにしていました。
実習では、1週間で看護計画を立てて指導者に発表するのですが、今回はなんと、彼女自身で記録を完成させることができました。
そのことで彼女は自信を持ったのか、記録ができたという成果を素直にとても喜んでいました。そして、他の学生たちが彼女の患者さんとの関わりを褒めたとき、それを受け入れて、喜ぶ姿も見られました。
もうしばらく実習を担当しますので、このまま彼女を支え、彼女の良さを伸ばしていけるようにサポートできたらと考えています。今回のことで、やはり学習者はみんな可能性を持っていると信じて関わることが大切だと感じました。
◆
指導を通じて学生に接していくと、自然とその学生の「強み」と「弱み」がわかってきます。教員はついできていないことを探してしまいがちですが、まずは強みに着目し、達成するという体験をしてもらうことが学生の自信につながります。そうなると、立ち止まらずに前に向きはじめます。
主体的に取り組める環境を整えることが、その人の力になるということをお伝えできたらと思いました。最後まで読んでいただきありがとうございます。
これからも、本書の内容を「ちょい出し」ししながら、日々の臨床、カンファレンス、研修、授業などで使えることを、読者の体験を踏まえてご紹介していきます。
もっとたくさん知りたい!という人はぜひぜひ、本をご覧ください。
タイトルは『シミュレーション教育の…』となっていますが、シミュレーションだけでなく、日々の“教育”現場で役立つスキルが満載です。