かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2018.7.09 update.
日本精神科医学会学術教育研修会(看護部門)において、「看護師が知っておくべき平成30年度診療報酬改定のポイント」という講演が行われた。講師は、松本善郎氏〈たなか病院・副院長(経営・財務担当)、日本精神科病院協会・医療経済委員会委員〉。
平成30年度の診療報酬改定は、精神科医療にとって大幅な改定だったといえる。講演の中から、インパクトが大きかった点について、ざっと紹介する。
※トピックスとしての紹介のため、算定要件の確認は厚生労働省資料をご参照ください。
措置入院患者に関する部分で、自治体が作成する退院後の支援計画に則ることで、退院時、入院基本料等に600点が加算される(精神科措置入院支援加算)。
また退院後、支援を受ける期間にある患者に対し通院精神療法を行うと、660点算定できる。また、継続支援は275点(3か月に1回)で、たとえば外来診療に来なくなった患者に看護師が連絡を入れ受診を促すことでも加算される。(措置入院後継続支援加算)
社会的な背景もあり早急な法案可決が待たれていたが、国会の混乱により遅れているため、ガイドライン(下記リンク)が先行し、これをもって実施することになりその評価が算定できることとなった。しかし現状、自治体や医療現場への周知がなされていない。専従従事者が要件ではないため、現状の配置体制のまま大きな加点が見込める。該当施設は自治体に確認したい。
●「地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドライン」について
http://www.japsw.or.jp/backnumber/oshirase/2017/20180329/02-2.pdf
訪問支援の充実はさらに進められ、これまで「精神科重症患者早期集中支援管理料」という名称だったものが「精神科在宅患者支援管理料」となり、点数も大幅にUPした。表を参照するとわかるように、重症度に応じて評価を充実させるしくみになっている。精神科医療のアウトリーチ化がより進む方向となる。
認知症治療病棟ではこれまで「夜間対応加算」として、「30日を限度」として1日につき84点が加点されていたが、31日以上の部分についても40点が加点されることになった。ただし、夜勤看護要員3名以上という要件に加え、行動制限最小化についての取り組みが求められる。これまでも精神科の病院には行動制限最小化委員会があり、基本指針の整備や研修、検討会などが実施されてきているところも多いだろう
他にも、摂食機能療法への加算、作業療法、認知症リハビリテーション料等の実施時間が生活機能回復訓練の時間に組み込まれ、やむなく入院が長引いてしまった場合でも、認知症の症状や状態に適した手厚いケアがなされるよう望まれている。
また、これまでの介護療養型医療施設の形態移行として、「介護医療院」が創設されることになった(経過措置期間は6年)。精神科病院の中にも、介護療養型医療施設として老人性認知症疾患療養病棟(日精協会員で18病院、1079床が該当)があるが、これらを介護医療院とするパターンに加え、認知症治療病棟へという選択肢ができたことになる。
働き方改革の流れも受け、看護補助加算が手厚くなった(出来高病棟)。1日20点のUPは、大きな加算といえる(60床の病棟で年間約438万円UP)。
ただし、看護補助者が基礎知識を習得できる院内研修を、年1回以上受講することが要件となる。また、この加算を算定する病棟は、身体的拘束を最小化する取り組みを実施することも要件となる(精神保健福祉法に基づく身体拘束=医師の指示 とは別のもの)。身体拘束予防ガイドラインは一読しておきたい。
スタッフの数を多く、ケアを手厚くすることで、ルート抜去や転倒・危険予防などを理由とした身体的拘束を減らそうという動きだ。
●「身体拘束予防ガイドライン」
http://jnea.net/pdf/guideline_shintai_2015.pdf
~その他の精神科関連トピックス~
〇精神科救急入院料算定用件が見直しに(数だけでなく質を問われるように)
〇入院精神療法360点→400点へ(アルツハイマー病やてんかんも対象に)
〇精神科療養病棟入院料等におけるクロザピンの包括範囲からの除外
〇精神科電気痙攣療法、麻酔科医による麻酔で900点の加算
〇発達障害に対する精神科ショート・ケアが新設
〇かかりつけ医と認知症専門医に「認知症サポート指導料」と「認知症療養指導料」の新設
〇ベンゾジアゼピン系薬剤の1年以上の処方と4種(抗不安薬2種/睡眠薬2種)でも減算の対象に
〇「褥瘡対策に関する診療計画書」が新しくなっているので更新を