この稿が出るころには、精神保健福祉法(以下法)の改正と診療報酬改定に伴って、退院支援相談員や退院後生活環境相談員を定めるため、担当の精神保健福祉士を配置し、医療保護入院の家族の同意をどのように取るのかなどの体制整備が進んでいることと思います。今回の改正と改定では、保護者制度においては保護者を家族に変えただけで、医療保護入院はそのまま存続しています。また、体制整備にしても、急性期は精神科急性医師配置加算や早期退院に向け院内標準診療計画加算がついたものの、あとは消費税分の上乗せと実情に合わせた要件の見直しであり、精神科特例を廃止するわけではないので実質変わっていないという印象をうけます。実情に合わせた機能分化と地域への移行に向けて少しだが、着実に推し進めたということなのでしょうか。
医療保護入院に関して言えば、厚労省のQ&Aでは「精神科以外での医療で本人が判断能力を有しない場合と同様の対応を行うこととなるものと考えられる」と回答しており、より入院させやすくなったともいえます。しかし、身体的問題があって入院する場合と現在の精神科的な入院を、障害者の人権という側面から同じに考えてよいのか疑問も残ります。
今回の精神保健福祉法改正における項目としては、
「精神障害者の医療提供を確保するための指針の策定」
「保護者制度の廃止」
「医療保護入院の見直し」
「精神医療審査会に関する見直し」が挙げられます。
そして、診療報酬改訂における精神関連の項目としては、
「精神病床機能の分化」
「精神疾患を持つ患者の地域移行と地域定着の推進」
「身体疾患を合併する精神疾患患者への適切な医療の推進」
「適切な向精神薬の使用の推進」
「児童・思春期の精神医療の推進」
「認知症対策の推進」
が列挙されています。
上記に挙げた、今回の精神医療における診療報酬改定と法改正は関連づけて見る必要がありますが、特に私が注目するのは。次の改正法第五節第四十一条(指針)の部分です。
「精神障害者の医療提供を確保するための指針の策定」では、「厚生労働大臣が、精神障害者の医療の提供を確保するための指針を定めることとする。」とし、
① 精神病床の機能分化に関する事項
② 精神障害者の居宅等における保健医療サービス及び福祉サービスの提供に関する事項
③ 精神障害者に対する医療の提供に当たっての医師、看護師その他の医療従事者と精神保健福祉士その他の精神障害者の保健及び福祉に関する専門的知識を有する者との連携に関する事項
④ その他良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供の確保に関する重要事項
を挙げ、良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保することに行政が指針を定め責任をもって介入することを示したものと考えられます。
そして、これらが診療報酬改定の項目とリンクし、それぞれを評価することで、地域生活中心へとシフトさせていく狙いがあることがわかります。