かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2013.4.17 update.
つい先日までは看護学生だった人たちに、
がんばった3年間。濃かった3年間で記憶に残ったことを綴ってもらいました。
ちなみにみんな国家試験に合格し、この4月から無事に臨床で看護師さんになるとのことです。
お疲れ様でしたー。そしておめでとうございますーーーーーー!!!!!!!❤❤
臨床でもがんばってください。応援しています。
安藤由紀(上尾中央看護専門学校・第一学科卒)
好きなのに、ツレない奴
好きなのに、国家試験で点数が取りにくい。それが「精神看護学」だった。
授業のはじめに習った、フロイトのイド(エス)・自我(エゴ)・超自我(スーパーエゴ)からして、何を言っているのかさっぱりわからなかった。
会話で「エゴ丸出し」と使っていたのは間違いだったのか!?
イドなの? エスなの? どっちなの? 同じ意味なの?
それでも、このわけのわからない感じが「精神科の世界」っぽくて、魅了された。
学生の3年間、苦手な分野は一夜漬けの丸暗記で乗り越えてきた私(T_T)。
そのようななかでも精神看護学は好きであり、教科書を読み、教員にも質問をし、授業では理解できた気持ちになっていた。
しかし国家試験対策模試の精神看護学では、さっぱり点数が取れなかった。
勉強しているのに点が取れない。この事実には落ち込み、沈んだ。
周りの友人たちに「どうしたら精神って点取れるの?」と聞きまくった。
すると答えはこうだった。「深読みし過ぎないこと! アンドゥー(私)は、裏の裏とか考え過ぎ! 性格が出るよね~」。
「……そーなんだー……」。
国家試験が終わった今、精神看護学で混乱した用語・場面を振り返ってみたい。
「あ~、何だっけ、投影って。たしか、Aが私のことを嫌いなような気がする。でもAが私を嫌ってると思い込んでいるだけで、Aは私のことを嫌いじゃないんだよね。となると、結局私はAのことをどー思っているの?」と、どんどんドツボにはまり出す。
残りの選択肢である反動形成も、普段なら迷わず答えられるはずなのに、焦りだして事例を読めば読むほど迷い出す始末。「えーい、これだけ悩ませるんだから、①の投影が間違いだ!」と覚悟を決めてマークする。
ひと通り解き終わり見直しの時、「あれ、やっぱり投影は合っているんじゃないか? 反動形成って馬鹿丁寧にすることだよな~。う~ん、これだけ気になるということは、マークを間違えているというお告げ。直しちゃえ!」と②反動形成にマークし直したところで模擬試験終了。
隣の席の頭のいい友人に、「あの防衛機制の答えって何?」と尋ねると、迷わず答えた。
「あれは①の投影だよ」と。
「え……マジ?……」。
本番では
投影を復習して、理解して、今度こそと模擬試験を受けるのだが、そのたびに「で、結局、投影って何なの?」とわからなくなった。
だから国家試験で防衛機制が出たら、問題を読まずに「投影」にしてやろう!と決めていたが、今年は出題されなかった。<m(__)m>。それはラッキーだったかもしれないけれど……。
誰か、わかりやすい事例で投影を説明してくれないかな~。
その2「 自殺企図・自殺念慮」
精神看護学実習に行った時。
女性の患者さんが4階の窓から外を眺めていた。私の受持ち患者さんではなかったため、疾患名はわからなかったが、あまりにも思い詰めたように長時間外を凝視している様は、だんだん私を不安にさせた。
「もしかしてこれって、これって、自殺企図? 自殺念慮?」。
指導者さんに知らせなきゃと思っていると、反対側の窓でも男性患者さんたちが外を凝視していた。やはり楽しそうには見えない。
「ええーっ! これって集団自殺企図?」。
どーしよう、どーしようとキョロキョロしながら、誰か応援を呼ぼう!と思っていると、看護師さんがそばを通り過ぎながら言った。「まーたみんなで外を見て」。
えっ!? あれは日課なの? 飛び降りようとしてたんじゃないの? 日課と自殺企図の違いって何なの? でも日課だと思って見逃して、ほんとに飛び降りちゃったらどうするの? と一人で混乱した。
何をしたら“それ”なの?
教科書~。用語の説明を臨床の場面とリンクさせてくれないかなー。
自殺企図、自殺念慮って、何をしたり、何を思ったらそれになるのだろう。
(たとえば死にたいと考えている段階は自殺念慮だが、手すりに手を掛けたら自殺企図、とか……?)
言葉の理解だけじゃ、実習で混乱するのですよ私は。
でも、こんなことで混乱するのは私だけかな(--;) 。
うつ病の人を励ましちゃいけない?
学生になる前、私は社会人として働いていた。そこにはうつ病で長期にわたり休職している友人がいた。
私は精神看護学の教科書や授業で得たうつ病の知識から、彼女の様子を想像しつつ、メールのやり取りを続けていた。
そんな彼女から昨年末、嬉しいメールが届いた。「1月から職場復帰することになりました。長い間、心配かけてごめんね」。
彼女からの久々の明るいメールを見て、私はすぐに返信した。「よかったね。おめでとう! 1月から頑張って!!」。 送ったあとに気が付いた。あれ!? 私、いま、うつ病患者さんを励ましちゃったよ。励まし厳禁なのに……。
幸い、彼女は順調に仕事を続けている。
どんなに教科書で知識を増やしても、現実の場面ではとっさにやってはいけないことをしてしまうものだなぁと思った。
いつかリベンジ
試験といい、実習といい、日常の対応といい、私のなかで最も消化できない思いが残り、引っ掛かっているのが精神看護学だ。引っ掛かっているということは、それだけ気になっているということだ。
この春からの就職先は、一般病棟に決めた。
でもいつか、精神科で働いてみたいな。そんな思いがある。
安藤由紀(上尾中央看護専門学校・第一学科卒)
海上自衛隊、バーテンダー、介護福祉士を経て、33歳で看護学校入学。愛読書は池波正太郎の『鬼平犯科帳』 。ペンギンが大好きで、いつか南アフリカのボルターズビーチに行くのが夢。
「これから看護師になろうとしている人に、励みになればと思って、あえて年齢を入れました」(すばらしい心遣い)とうとう白衣デビューしましたー!