がん専任栄養士の食事レシピの秘密

がん専任栄養士の食事レシピの秘密

2011.10.26 update.


当院(島根大学医学部附属病院)では、2006 年4 月にがん専任栄養士(青山)を配置し、協力しながらがん患者さんへの食事支援に取り組んできました。このたび、本サイト(かんかん!)で紹介してきたレシピも盛り込みつつ、がん患者さんのための食事レシピを集めた本、『がん専任栄養士が患者さんの声を聞いてつくった73の食事レシピ』を刊行することになりました。
 

どの病期にある患者さんであっても、栄養士が患者さんの心を支えるような食事を提案することで、栄養状態、ひいては全身状態の改善をみることがあります。治療による有害事象など、さまざまな原因によって食事をとることができない患者さんに、私たちはできる限り「食べる喜び」を提供できるよう、メニューを試行錯誤し続けてきました。
 

がん専任栄養士の設置は、そうした取り組みのなかで、「患者さんの思いに寄り添って食事を考える」専門家の必要性を感じたことによるものです。
(本書「はじめに」より)


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「さつまいものオレンジ煮」病院食に飽きた患者さんに好評のレシピ。


 

患者さんの要望を聞いても、必ずしもそれをそのままレシピに反映させることができるわけではありません。
 

そこで例えば、「食べ物の話をしたくない」「気分転換したい」といった「栄養・食事に期待感を持てない方」「栄養士とのかかわりが難しい方」への対応としては、以下のような取り組みを考える必要があります。

★ 毎日病室に挨拶に行き、顔を覚えてもらう。食事の話題が出せるようになる関係性をつくる。
 

★ 直接的に食事の話題を取り上げず、雑談の中で、テレビに映るコマーシャルや料理番組のメニューなどからさりげなく食事のお話を聞く。
 

★ 食事が配膳されても「器のふたを開ける気持ちが起きない」という患者さんには、以下のような対応を考える。
  ☞カードに栄養士や看護師からのメッセージを書き、メニューに添える
  ☞ふたをサランラップにして、料理を見えるようにする
  ☞漬物、ご飯の添え物(梅干、佃煮のり、鯛味噌、日替わりのふりかけ)などを添え、「食べてほしい」という思いを伝える
 

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「手づくりしうまい」病室で話題となった飲茶をイメージして提供。

 

あるいは「どうしても○○が食べたい」「濃い味のものが食べたい」といった、入院前に食べて「おいしい」と思った、思い入れがあって今どうしても食べたい、と希望されるメニューに答える際には、栄養的に不足しないように(野菜や海草嫌いなど)注意する必要があります。希望を受け止めつつ、栄養バランスが取れた献立になるよう、共に考える必要があるのです。
 

  ☞「八宝菜」、麻婆豆腐など中華料理は若い患者さんに人気がある。子どもには「手羽先の照り焼き」などが好評
  ☞「うな重」、「ライスバーガー」なども気持ちが明るくなると好評
 

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「手羽先の照り焼き」・・・元気な頃居酒屋で食べていたメニューが懐かしい、という患者さんに提供。

 

 

その他、本書ではがん患者の食を支える知恵とともに、実際のレシピ73品をまとめています。興味のある方はぜひ書店にてお求めください。

 

 

 

※本稿は2011年10月、医学書院より刊行の『がん専任栄養士が患者さんの声を聞いてつくった73の食事レシピ』の内容を元に再構成したものです。

 



 

がん専任栄養士が患者さんの声を聞いてつくった73の食事レシピ イメージ

がん専任栄養士が患者さんの声を聞いてつくった73の食事レシピ

かんかん! 人気連載がオールカラーで単行本化!

「え! これもがん患者さんの食事なの!?」
「何も食べたくない」という小児患者さんから、「うな重が食べたい」という終末期の患者さんまで。日本で唯一の「がん専任栄養士」が珠玉の食事レシピ73品を大公開。看護師、栄養士、患者家族など、「がん患者の食」を支えるすべての人に役立つ知恵と知識が満載。

著:川口 美喜子/青山 広美

判型 B5変
頁 128
発行 2011年11月
定価 1,890円 (本体1,800円+税5%)
ISBN978-4-260-01477-9

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