かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2011.9.02 update.
近年,褥瘡治療には除圧や局所管理の他に栄養管理が重要であることが明らかになってきました。
また,NSTや褥瘡対策チームの普及により,多くの施設でチームによる取り組みが積極的に行わ
れるようになってきています。
しかし,多職種によるチーム医療を展開するうえで,褥瘡治療と栄養管理を効果的に行うために
は,それぞれの職種が専門的知識を共有しながら検討することが必要です。
この連載では,褥瘡患者の栄養管理について,専門的な知識,技術をコンパクトに解説し,実践
の現場に役立つ情報を提供させていただきます。病棟,在宅さまざまな現場で活動するナースの
皆さんにとって,患者さんの状態に応じた適切な栄養管理を行う指針となれば幸いです。
*本連載は毎週金曜日に更新する予定です。
栄養管理の重要性の再確認!
――「口から食べる」ことの大切さ
前回お伝えしたように,褥瘡治療におけるエビデンスレベルの高い研究はこれからではありますが,栄養管理の重要性は高く認識して介入する必要があります。そこで,「食べること」を重視して,栄養管理の重要性を再確認してみます。
経口から摂取することは活力のバロメーターであり,喫食率が低下すると活動量も減少し,褥瘡のリスクが高まります。
このメカニズムを解説しますと,胃腸のはたらきは,自律神経によって調整されており,胃腸に対しての刺激は自律神経系全体を刺激します(図)。
また,脳で感じる感情も胃腸のはたらきを支配する自律神経系に影響を与えるため,精神的な変化も消化吸収に影響を及ぼします。
自律神経のバランスが崩れ,交換神経優位のストレス状態が持続すると,食欲が低下,免疫力が低下し,創傷治癒遅延の要因となるほか,胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因にもなります。一方,経口からの摂取が良好であれば自律神経系のバランスも良好となることから,経口摂取は褥瘡治療にも有利に働きます。
また,褥瘡予防のアセスメントスケールである「ブレーデンスケール」(下表)の栄養状態の評価は,客観的データによる評価ではなく喫食率で評価しており,経口摂取が「できているか,いないか」を重視しています。つまり,単なる栄養補給ではなく,「口から食べる」ということを最優先としており,人間の生きる源を支える「医療の基本」に基づいています。褥瘡ケアにおける栄養管理は,人間らしく生きるためのケアの一部であり,必要不可欠な重要なケアです。
次回は,「腸管を使用した栄養ルートの重要性」について解説します。
●引用・参考文献
褥瘡・創傷の管理のホームページ ブレーデンスケール,http://square.umin.ac.jp/sanada/japanese/admin/BradenScale.html,東京大学大学院医学系研究科老年看護学/創傷看護学・金沢大学大学院医学系研究科臨床実践看護学,2011年8月31日