かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2011.8.22 update.
近年,褥瘡治療には除圧や局所管理の他に栄養管理が重要であることが明らかになってきました。
また,NSTや褥瘡対策チームの普及により,多くの施設でチームによる取り組みが積極的に行わ
れるようになってきています。
しかし,多職種によるチーム医療を展開するうえで,褥瘡治療と栄養管理を効果的に行うために
は,それぞれの職種が専門的知識を共有しながら検討することが必要です。
この連載では,褥瘡患者の栄養管理について,専門的な知識,技術をコンパクトに解説し,実践
の現場に役立つ情報を提供させていただきます。病棟,在宅さまざまな現場で活動するナースの
皆さんにとって,患者さんの状態に応じた適切な栄養管理を行う指針となれば幸いです。
*本連載は毎週金曜日に更新する予定です。
(1)さあ始めよう!褥瘡治癒に向けた栄養管理
かつて,「褥瘡は看護の恥」と言われ,褥瘡発生の原因は看護師のケアの怠慢であると言われてきました。
しかし,褥瘡発生のメカニズムが徐々に解明され,褥瘡の背景にはさまざまな要因があることが明らかになってきました。
なかでも,「栄養不良」が大きく関与していることが明らかとなってきており,「褥瘡患者の栄養管理」がクローズアップされるようになってきました。そしてここでは,看護師をはじめとする多職種チームによる取り組みが重要視されています。
では,褥瘡をもつ患者さんに適切な栄養管理を行うために,どのような知識を身につけ,よりよいケアにつなげていけばよいのでしょうか。まずは,今回から4週にわたる「褥瘡ケアと栄養管理の基礎知識」で実践につなげるための,褥瘡ケアと栄養をめぐる基礎知識を理解していきましょう。
2010(平成22)年4月の診療報酬改定により,「栄養サポートチーム(NST)加算」が新設されました。
従来の「栄養管理実施加算」との大きな違いは,褥瘡対策チーム等当該保険医療機関において活動している他チームとの合同カンファレンスを必要に応じて開催し,患者に対する治療及びケアの連携に努める,ということが算定要件となっている点です。つまり,褥瘡患者の栄養管理を実施するためには,NSTと褥瘡対策チームのコラボレーションが必須になっているのです。
このような背景には,日本のNST活動の実績があります。2004(平成16)年度に行われたNST活動の調査結果では,「褥瘡の改善」が最も実績を上げています(図)。このことからも,NSTと褥瘡対策チームがより一層のコラボレーションを進めていくことが,褥瘡治癒に向けたケアにおいて効果的であることが理解できます。
診療報酬は,病院の利益を得るために存在するのではなく,本来あるべき医療のかたちに対する評価なのです。ですから,「自分の施設は,栄養サポートチーム加算をまだ取得していないので,関係がない」と考えるのではなく,
NSTと褥瘡対策チームがコラボレーションできるよう取り組み,日々,ケアの質を高めていくことが重要なのです。
栄養管理の原点は,「口から美味しく食べられるよう支援すること」であると思います。この原点を忘れずに,褥瘡患者の栄養管理について一緒に学んでいきましょう。
次回は「国内外の褥瘡治療と栄養管理のエビデンス」について解説します。