かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2011.8.07 update.
1969年生まれ。皮膚科専門医。大学病院皮膚科、公立病院皮膚科勤務を経て、2007年から現職。湿疹・にきびなど一般的な皮膚病の診療のほか、糖尿病の療養指導者に対する皮膚疾患の教育・啓蒙活動にも携わっている。
ニキビってどうしてできるの?
近年、ニキビに悩む成人女性(男性もですが)が増えています。大人になったら治ると思っていたのになくならない人や、大人になってからニキビができるようになった人、いろんな人がいます。
悩みを解決するために、まずニキビがなぜできるかをお話します。
皮脂が詰まってニキビになる
ニキビのはじまりは簡単に言えば「毛穴が詰まって皮脂がたまった状態」です。皮脂は毛穴のなかで作られ、毛穴から皮膚の表面に出てきます。皮膚の乾燥を防ぐために必要な皮脂ですが、量がふえると毛穴のなかにたまってしまいます。成長期にはホルモンの影響で皮脂が増えるので、中学生や高校生にはニキビが多く見られます。また、肌の乾燥やストレス、体調の悪化、食事の内容などによっても皮脂は増えますから、大人でもニキビはできるのです。
ニキビが顔や胸、背中の上の方にできやすいのは、皮脂の分泌量がもともと多い部位だからです。
皮脂を栄養源にするニキビ菌が毛穴を狭くし、
ますます皮脂が詰まりやすくなる
もうひとつ、毛穴には「ニキビ菌(アクネ菌)」という細菌がいます。
ニキビ菌には毛穴の入り口の部分を狭くする働きがあるので、やはりニキビの原因になります。そしてニキビ菌は、皮脂を栄養源にしているので、皮脂が増えるとニキビ菌も増殖します。すると、毛穴の入り口が狭くなって詰まってしまい、さらに皮脂がたまる、この悪循環の結果、ニキビができます。
その他、化粧品などで毛穴をふさいでしまうと、ニキビができやすくなるのはわかりますね。洗顔がニキビにいいのは毛穴のつまりをとるからです。
皮脂詰まりから炎症へ
ニキビは、はじめのうちは眼に見えないほど小さなふくらみ(微小面ぽう)ですが、皮脂がなかにたまるにつれ、大きく膨らんで白色や黒色のニキビ(面ぽう)になります。面ぽうは単に皮脂がたまっているだけですが、ここに炎症が起こるとニキビは悪化してしまいます。
炎症はいろいろな原因で起こります。
ニキビ菌には炎症を起こす働きがあるので、ニキビ菌が増えると何もしなくても炎症が起きてしまうことがあります。また、指でいじったり、こすったりして刺激すると炎症が起きます。
毛穴構造が壊れて、ニキビ跡に!
炎症が強くなると毛穴の構造が大きく壊れてしまうので、しこりが残ったり、ニキビ跡になったりします。
赤くなっている、痛い、急に大きくなった、膿みを持っている、ぶよぶよしている、などは炎症症状です。しかし炎症が起こっているかどうかの判断はむずかしく、治療の選択や今後の経過を予想する上で大切です。
次に、これらを踏まえてニキビへの対処法をご紹介します。
まず、面ぽうを作らないようにするには?
残念ながら、ニキビ菌を根絶することはできません。ですから、第一には皮脂を増やさないことが大切です。肌の乾燥を防ぎ、体調を整え、夜更かしや暴飲暴食を控えて、ストレスを減らして(どれも、看護師さんには難しいかもしれませんが…)いくとニキビがよくなることは、経験的にわかっていると思います。
また、毛穴を詰まらせないことも大事です。化粧を落とさないで寝るのがよくないのは当然ですね。洗顔も大事です。実はここを頑張ると一番効果があります。
わかっていてもできちゃうんだもん
次に、面ぽうができてしまったら?
ポイントは2つ。ひとつは、面ぽうを治すこと。もうひとつは、炎症を起こさないことです。
面ぽうを治すには、たまっている皮脂を出してしまえばいいのです。皮膚科にいくと、道具を使って押し出したり(面ぽう圧出)、CO2レーザーで小さな穴を開けて中身を出したりすることもあります。「初期のニキビは潰せば治る」というのも、100%まちがってはいません。
え、潰すと治るの?
ただ、押し出すときに毛穴を傷つけてしまったり、皮膚の表面にいる細菌が毛穴に入ってしまったりすると、炎症が起きてしまいます。さらに一番の問題は、見た目には、先ほど示したような症状がなくても、毛穴の中では炎症が起きているかもしれないということです。すでに炎症が起きているニキビを潰すと、炎症が周りの皮膚にも広がり、かえって悪くなることもあります。ですから、「ニキビは潰さないほうがよい」というのが一般的な正解だと思います。
実はもう炎症になってて痛いんです
そして、炎症が起きてしまったら?
炎症が起きてしまったら、まず炎症を抑えないといけません。生活習慣の改善などでは限界があるので、飲み薬や塗り薬が必要になります。あまり膿がたまってしまったら、切開も必要でしょう。ただ、毛穴が破壊されますので、ニキビ跡(瘢痕)になってしまうかもしれません。やはり、炎症を起こさないようにするのが大切ですね。
次に、皮膚科で行うニキビ治療がどんなものか紹介します。
ニキビ対策は「皮脂を増やさない、毛穴を詰まらせない」という原因の除去が一番だと繰り返しになりますが、確認しておきます。患者さんもわかっているとは思うのですが、ここを頑張らないと、結局炎症を繰り返すことになります。もちろん、いじらないことも大事です。
しかし、どうすれば良いかわかっていてもできてしまう、というのが多くのニキビに悩む人の意見だと思います。今回は、3回の連載の最後として、医療機関で行う治療を説明します。
既にできてしまっているニキビへの治療では、炎症の強い例では抗生物質の内服・外用でニキビ菌の増殖を抑えたり、消炎剤・イオウ製剤の外用で角質を溶かして毛穴のつまりをとったりします。内側からの解決として、ビタミン剤が処方されることもあります。
皮膚表面の角質を取り除くケミカルピーリング
炎症を起こす前のニキビに対しては、最近新しい治療法が普及してきました。
ひとつはケミカルピーリングです。
ピールとは「剥く」という意味で、薬剤(酸)によって皮膚の表面の角質を「一皮剥いて」あげることで毛穴のつまりをとる方法です。
実際には、グリコール酸という酸の液体を肌に塗って、10分程度待ちます。その後中和して(洗い流して)終了です。痛みはほとんどありませんが、皮膚を刺激していることには変わりないので、日常の肌のお手入れなどもしっかり行う必要があります。
はじめは、2週間に一回のペースで5〜
6回行うことが多いようです。その後は状態によって、間隔をあけることもできるでしょう。定期的に行うと効果が持続します。この処置は近頃人気がありますが、健康保険が使えないので、自費診療になります。行う場所によって異なりますが、一回7〜
8千円程度が平均でしょうか。先生とよく相談して、納得してから行うことをお勧めします。
角化をおさえる外用薬
もうひとつは、外用薬です。海外では以前から使われていましたが、2008年にようやく日本でも使えるようになりました。
既に面ぽうができていても、毛穴の入り口の部分の角化をおさえる働きがあり、毛穴の入り口を広げるので、炎症を起こすことなく皮脂が排出されて、面ぽうを治してくれます。
また、何もできていないところに塗ると、面ぽうができるのを防いでくれます。毎日の習慣にするとニキビができにくくなります。1日1回、寝る前に塗って翌朝洗顔すればいいので、忙しい方でも続けられるのではないでしょうか。はじめのうちは少しヒリヒリすることがありますが、だんだん慣れてきます。
こちらは健康保険が使えるので、15グラムのチューブが3割負担で550円くらいです。ただし、妊娠している人は使えません。
どちらも、効果が期待できる治療法です。ニキビに悩んでいらっしゃるかたは、一度皮膚科に相談してみてください。