かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2011.2.24 update.
月刊『看護管理』では,2010年の日本看護管理学会で開催されたシンポジウムをもとに,デザインと看護(医療者)のコラボレーション,協働の可能性,価値について,1年間の巻頭連載シリーズをスタートしています。
デザインが医療安全,療養環境,ひいては医療・看護の全体的な質向上に寄与するものと期待すると同時に,デザイン領域において,ソーシャルデザインへの指向性が高まっているそうですので,その具現化のひとつの方向性としても,看護とデザインのコラボレーションを考えてみたいと考えています。
本企画の骨子となるキーワードとして,「医療安全」「コミュニケーション」「看護師が働く環境」「地域社会」の4点を考えています。
かんかん!でも誌面と連動して,随時情報を掲載していきます。
今回は,昨年の日本看護管理学会で「ポジティブスパイラルで変えていこう」をテーマに,ナースステーションと休憩室の改善案を,発表された三富貴峰さん(株式会社GKダイナミックス動態デザイン部)のプレゼンテーションを,紹介させていただきます。
なお,三富さんのインタビュー記事を月刊『看護管理』2011年3月号の巻頭に掲載しています。合わせてご一読ください。
勤務先のGKグループは戦後から日本のデザインの草分けとして,使う人,暮らす人の気持ちに寄り沿うデザインを,クライアントやユーザー,地域社会との対話のなかから創造してきた企業グループです。新幹線の車両,しょうゆの瓶など,馴染み深いプロダクトの数々をクリエイトしています。
デザインクリエーションは、ポジティブなキーワードがポイントだ。「△△しない」といったネガティブ方向ではクリエーションは生まれないため、ポジティブ方向の考察が必要になる。今回は病院、とくに看護現場の安全をテーマに考える。
安全のためには「ミスをしないこと」と「ミスをどうカバーするか」が重要だ。しかし最前線の看護現場では、ミスをカバーする方向には限界があり、むしろバックアップする立場となる。そこで大事なのが「気配」を気付けるかどうかであろう。
これらをポジティブ方向で考えると、「緊張感を持って働く」ことだと思う。すなわち局面にあわせてON/OFFメリハリを付けて働くこと。看護現場での緊張感の持続(ON)、それに備えるために本当にリラックス出来る休憩(OFF)をしっかり分けることが大事だ。以下に具体案を考えてみる。
モチベーション/緊張感の高い現場にするために
ここでは緊張感を持たせる手段として「見せる、見られる」という視点を提案する。「プロの技術をカッコよく見せる」/「常に見られている」、という感覚が看護の緊張感を高め、ミスを減らし、効率も向上させる。また「見せる、見られる」はひとつのコミュニケーションでもあり、さらに看護のクオリティを見せることにより安心感も提供できる。
これらの効果の相乗効果により病院全体の印象を向上させることもできると思われる。
休憩はしっかりリラックス
ONのメリハリを付けるためには、OFFの時間も重要になる。OFF、すなわち休憩時間は、しっかりリラックスできる環境が必要だ。日常としての自分の時間が持てる場、これを提供することが大事である。
総合病院について考えてみると、患者/スタッフにとって生活の場であり、ひとつの街であると感じた。それも高齢化社会に向かって、ますます人が集まり活気のでてくる街である。
このような視点でみたとき、病院の各エリアのデザインは求められる機能に対して、均一的すぎると思う。人の集う広場としてのホール、プロの安心感を提供する診察/処置エリア、やる気を重視したスポーツ感覚のリハビリテーションなど、これから発展する「街」としての病院には、デザインすべきことが多い。
今まで病院は「病を治すところ」という小さく限定した目標しか持っていなかったのではないか。病院本来の目的は「人を幸せにするところ」であり、そのためには「病院にいる全員が幸せになる」という視点が大事だ。
三富貴峰さんのプレゼンテーションのレジュメはこちらから!