看護管理なんてこわくない!(4)

看護管理なんてこわくない!(4)

2011.2.07 update.

中島美津子 イメージ

中島美津子

「じ」じゃなくて、濁らない「し」の「なかしま」です。夫の転勤により各地の病院に勤務。九州大学医学部保健学科、聖マリア学院大学看護学部、東京警察病院看護部長を経て、2010年5月より東京病院副院長となりました。研究テーマは「働きがいのある組織づくり」で、働き方についての認識のパラダイムシフトを図る啓発活動を全国で展開中。
「すべては幸せにつながっている」「ケア提供者が幸せであることは質の高いケア提供を可能にする」という信念の下、日々仕事を楽しんでいる超positive思考の二児の母。
みっちゃんのブログ(http://ameblo.jp/tokyobyouin-director/

第4回 料理上手は名師長?

 

師長の仕事は、労務環境づくりと人財育成、というお話を第1回にしました。今回は「人財育成」に効く「レシピ」をご紹介します。

 

レシピって料理みたいね……と思ったあなた。料理を甘くみてはいけません。実は、お料理が上手な人って、「管理」にすぐれた人、だと思いませんか?

 

料理上手=段取り上手=管理上手

 

私が管理者向けセミナーを行っていて気づくのは、看護部長、師長クラスの人は、ほぼ100%といっていいくらい、「料理上手」だということ。詳しく聞いていくと、「料理」といっても、フレンチのフルコース、みたいなのじゃなくて、「帰ってから30分で夕食準備」とか「冷蔵庫にある材料で家族の夕食をさっと作る」「一週間に一度しか買い物にいかなくても毎日ご飯を作れる」といったタイプの料理上手が多いのです。

 

べたな話ですが、料理がうまい奥様ほど、離婚もない、という話もありますね。軽い浮気や遊びをしても、胃袋をつかんでいれば帰ってくる……という、殿方に都合のいい話だという気もしますが(笑)、料理上手に離婚が少ないとしたら、それは「胃袋をつかんでいるから」だけではないかもしれません。

 

第1回で解説したように、マネジメント(管理)というのは、「何かごちゃごちゃした問題に対し、うまくやりくりすること」です。その能力に長けた人は、さまざまな材料を多角的に捉え、タイミングを見計らって完成させるというさまざまな工程がある料理もうまくマネジメントできるのではないでしょうか。逆にいえば、料理が上手な人は、管理能力に長けている。だから、ご主人の「管理」=「夫婦の運営」がうまくいくのではないか。だから、いつのまにかご主人も、寄り道せずに家に帰ってくる・・・。そんなふうに考えるわけです。

 

いろんな病院の管理者の方とお会いするときにもそれとなく聞いてみると、やはり、出てくる、出てくる! こちらから意図して料理の話にもっていかなくても、あ〜この師長さんも料理得意なんだ! と驚かされることが実にたくさんあります。

 

家庭の料理は「管理」そのもの

 

家庭の料理では、目の前の材料、素材を、最終的な目標(料理)に向ってどう変化させるか、その「段取り力」が問われます。特に既婚者の場合は、夫や子どもの帰宅時間といった制約が加わります。そういう複数の要素を頭のなかでシミュレーションし、段取りをつけないと、あの戦争のような朝の食事準備や夕食の準備など、家庭の料理をこなしていくことはできません。

 

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また、料理には想像力と創造力が求められます。マニュアルどおりにしか作れない人よりも、同じ素材でもちょっとしたアレンジを施せる人のほうが、バリエーション豊かな料理を生み出せます。それだけではなく、味や好みといった要素に工夫を凝らす一方で、栄養価にも同時に気をめぐらす必要もあります。

 

要するに、家庭の料理って、本当にごちゃごちゃと、複数の、次元の異なる要素を同時並列的に処理していかなくてはいけない仕事だというわけです。そして、そこで求められるスキルはまさに、看護管理に求められるものと同質だと思うのです。

 

家庭の料理の対極が、「お料理本のとおりに作る料理」ですが、こちらはいわば「看護学生の実習」のようなもの。患者さん1人の問題点をじっくりと検討し、その人の問題にのみ対処し実践する・・・…。教育課程として行うのであれば悪くありませんが、実際の看護現場では複数受け持ちが普通。一人にかかわると同時に、他の患者のこと、他の組織的な仕事を進めていなければいけません。お料理で一品一品つくっていては、最後の料理ができるころには先に作ったものは冷めている……というのと同じで、一人の患者との関わりだけに終始していては一人前の看護師とはいえません。

 

まして、管理者であれば、より複数のことを多角的に捉えそれらを処理していく「段取り力」が問われます。いくら用意周到に看護労働力を均等になるようスタッフ配置したとしてもスタッフも決して質の高いベテランスタッフばかりではありません。予想できることは予想して業務スケジュールを組みますが、その通りになるとも限らないのが現場です。そのときに臨機応変に多重課題をクリアしていくことが管理職には、求められる能力のひとつでもあります。

 

人財育成上手になろう!

 

今回のテーマ、「人財育成」でも、師長に問われるスキルは、料理に通じます。

 

同じ食材でも、火の通し加減や食材同士の組み合わせによって美味しくもまずくもなるのと同じように、スタッフの成長も、師長の管理のあり方、すなわち関わり方次第で、大きく変わります。

 

最高級の食材があれば、おいしい料理ができるとはかぎらないし、安い、三流の食材であっても一手間かけることで、美味しく変身してくれることもあります。スタッフの1年後、5年後、10年後の姿は、師長のかかわり次第なのだということを肝に銘じておく必要があります。最初は、どうなることかと思ったスタッフが数年後目覚しく素晴らしい看護師に成長していることってよくありますよね。それって、結局、その素材の持ち味を如何に生かしていくか、産地でも、ブランドでも、見た目でもない、料理のプロセス次第で如何様にも美味しく変身させるか、料理人の腕前次第、それと同じだと思いませんか?

 

人財育成とタイミング

 

「空腹は最高のスパイス」といいますが、お腹が減っているときに食べる料理はそれなりに美味しいもの。

 

人財育成でも、その人が今、何を欲しているのかということをうまくキャッチし、そこを伸ばすように接していく「タイミング」が大切です。貪欲に学びたいと思っている人には、いろんな学習チャンスを設定すれば、スポンジが水を吸うように吸収していきます。相手のレディネスによって、教育のスピードも変化させるのです。一方、その逆もありです。学習者のニーズとまったくずれたことを一生懸命に企画しても、やらされ感ばかりが強くなり、吸収どころか余計な負担となってしまいます。また、その研修設定時間ですが勤務時間内に設定するのか、勤務時間外に設定するのかは、学習ニーズに合わせる必要があります。ニーズの高いものであれば、勤務時間外であっても、また自由参加であっても、参加率は高くなるでしょう。

 

逆に、参加者のニーズや関心はそう高くないけれど、制度上の必要や、組織人として学習してほしいと考える研修であれば、勤務時間内に設定し、原則強制参加にするというのもひとつの方法です。

 

「ものすごくおなかすいた! なんでもいいから食べたい」と言っている人に、手の込んだフレンチを少しずつ提供するようなミスマッチを、私たちは管理の場面でしばしばおかしています。スタッフのニーズには常にアンテナを張っておきましょう。

 

時間・資源の制約

 

お料理は時間との勝負でもありますが、管理でも、限られた時間と資源のなかで、人財育成をどう取り入れていくかということが問われます。

 

組織づくりという視点で言えば、長期的な視点で人財育成を計画していかなければなりません。どのような人財を、どれくらいの時間をかけて育てていくかという観点から、今いるスタッフ(素材)をどのように育てていく(料理していく)かのか計画立てて、組織全体の育成としての段取りを考えます。

 

認定看護師を増やしたくても予算の都合もありますし、すべての分野で人を育てたいのは山々だけど、まずは、この分野から……という優先順位をつけなければいけません。

 

一方、「予算がないから」とあきらめてはいけません。料理だって、お金をかけなければ美味しい料理なんてできない、ということはありません。認定看護師のコースまでは出せないけど、病棟全体のモチベーションを上げるために院内で勉強会を開催することだってできるでしょう。そういう勉強会に参加したくなるような工夫を加えることだって「看護管理」です。予算やお財布との相談をしながら素材やその料理方法を決めていくプロセスも、まさにお料理そのものですよね。

 

彩りを考えた適材適所

 

お鍋で煮込んで美味しい食材もあれば、そうでないものもあります。また、素材を入れる順番も重要です。煮えすぎてくたくたになったほうが美味しいものもあれば、煮すぎるとまずくなるものもあります。適材適所が重要なのは管理も同じ。若いスタッフがよい場合もあれば、年配のベテランがよい場合も、それぞれです。

 

料理は味も大事ですが、見栄えも大事です。子どもの頃、煮物や炒め物など茶色のお弁当で寂しい思いをしたことはありませんか? 組織運営も同じです。地味な色が悪いわけではありませんが、やはり刺激のある、元気な「色」もあったほうがよいと思います。もちろん、年配看護師がセピア色で、若くてぴちぴちしたフレッシュな看護師がビビッド、ということが言いたいわけではありません(笑)。業務内容のことです。毎日毎日、単調な業務の繰り返しでは、刺激がなくなり、仕事に楽しさを感じなくなってしまいます。「刺激のある組織運営」を心がけるだけで、単調なセピア色から脱出することができます。組織が停滞しないように、セピア色にならないように、時にはビビッドなことが起こるようなそんな仕掛けを師長が作っていくことが必要なのです。

 

ちなみに、うちの病院は平均年齢44.4歳! なので一見セピア色のようにも思えますが(笑)、みんな素晴らしい取組みを互いに考え出しながら、業務が単調にならないように常にもっとよい方法はないか工夫を編み出すよう師長たちに仕掛けを作るよう伝えています。

 

素材の「良さ」に着目する

 

どんな陳腐な材料でも、プロの料理人にかかれば美味しく仕上がるといわれています。どんなスタッフでも、その師長さんによる人財育成により、いかようにも美味しくなることは間違いありません。

 

その意味では、師長さんが普段から「素材」のことをよく知っておくことが大切です。それも、欠点をあげつらうのではなく、できるだけいいところを見つけることが大切です。料理だって、その素材のダメなところ、まずいところに着目しても美味しいものはできません。

 

人間だって、悪いところがいっぱいあっても、必ずいいところをもっています。そのいいところを見出すのが、師長の力量です。そのために必要なことは、「ほめる」そして「よいところを評価する」ことです。

 

 

「え? 評価って、できないところを見つけて、改善・指導することじゃないの?」と思った方は、ぜひ次回を読んでください! 次回のテーマは「評価」です。 

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コメント

やりくりかー・・・・っとまた苦手意識、です。正直うちの病院も120床なので私も一人員として駆り出されている毎日です。どうにかして現状を変えたいとモヤモヤしています。

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