第59回 医療者が、がん患者のためにできること

第59回 医療者が、がん患者のためにできること

2022.5.23 update.

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近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術

 

|がんで死ぬこと―患者のがんが治らないとき

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

 *ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中

 

テーマ●死を意識することが、よりよく生きるための糧となる

 

本連載ではここまで各種がんについて、原因疫学検診の意義、検査方法治療などについて解説してきました。

 

もしかすると、学べば学ぶほど「がんで死ぬことは絶対避けなくてはいけないんだ」という気持ちになってしまうかもしれません。しかし、本連載の趣旨として、がんで死ぬことを否定しているわけでは決してありません。なぜなら、早期発見が難しいがんも依然としてあるからです。また、根治性の高いがんであっても、様々な要因が重なり、亡くなってしまう人もいます。それでもその人が自分の人生に納得していれば、もちろんそれで何の問題もないからです。

 

がんが治らなくてもやむをえない。私たちは患者さんの人生の審査員でもない(当たり前のことですが)。それでは、私たち医療者ができることはなんでしょうか? それは、「患者さんができるだけ健康でいる期間が長く続き、もしがんになったら、その状況で最適な治療を勧めること。そうすることによって、患者さんが最期まで充実した人生を送れるようにお手伝いをすること」でしょう。

当たり前のことですが、患者さんの人生はあくまで患者さんのものです。医療者は十分な知識と技術をもったプロフェッショナルたるべきですが、患者さんの人生において、主役のようにふるまうのはおかしなことです。私たちは基本的にお手伝いをしているというスタンスでいるべきではないでしょうか。

 

時には、患者さんが亡くなってしまうこともあります。たとえば、若い母親が乳がんなどで亡くなり、小さな子どもが残されてしまう場合などは、家族はもちろん、医療者もやりきれない思いが残るでしょう。しかしそこで医療者は、そんな悲劇においても、患者さんや家族がなんとかして一筋の光明を見出せるように努力をしてほしいと思います。悲劇の悲劇性をいたずらに強化してはいけません。「もっと早くがんが見つかっていれば……」なんてことを患者さんや家族の前で不用意に言う人もいますが、もってのほかです。医療者が患者さんの死を敗北とみなせば、残された家族には決して癒えない傷が残ります。

そんな状況にならないように、私たち医療者が肝に銘じておくべきことは、「最終的には死をタブー視しない」ということです。

 

それが難しいことなのは承知しています。なぜなら、死をタブー視することで、医療は発達してきたという側面もあるからです。多かれ少なかれ、死の恐怖があるからこそ、患者さんは医療機関を受診するのです。がん検診なんてその最たるものでしょう。その効用を否定するわけではけっしてありません。

しかし、完治する可能性が高い段階はともかく、進行がんなどで病状がある一線を越えた後も、同じ考え方をし続ければ、その先には悲劇しかありません。

完治が難しい患者さんに対して、こうすれば治るかもしれないと言って、希望だけをつなぐような説明をする医療者もいます。その気持ちも理解できるのですが、死をタブー視したやり方を貫くと、医療者は自己矛盾を起こすし、患者さんは混乱し、最終的には深く落胆することになります。そうではなく、患者さんが少しずつ心の準備ができるように、歩むべき方向に医療者は付き添うことが必要です。

 

死が怖いのは誰しも同じです。しかし、当たり前のことですが、死は誰にでも一度、必ず訪れます。もし死がタブーなのであれば、すべての人生はバッドエンドだということになってしまいます。そうではないはずです。生と死はあくまで一続きのものであって、死は、誰にとっても、いつの時代であっても、やはりゴールなのだとしか言うことができません。どのようにソフトランディングしながらよい死を迎えられるのかに、私たちは心を砕くべきなのでしょう。そしてそうすることが、残された日々に、等身大の幸せをもたらすことになると私は信じています。

 

自分たちも含めて、誰もがよりよい人生、そしてその先にあるよりよい死を送れるように、日々努力していきましょう。

 

 

***

(おわり)

本連載は単行本としてパワーアップして帰ってきます。お楽しみに!

 

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