第57回 がんの在宅医療と地域医療構想

第57回 がんの在宅医療と地域医療構想

2022.4.15 update.

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近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術

 

|がんと地域医療のかかわり

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

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テーマ●医療の“川上・川下の改革”とは?

 

前回、人生の最後を住み慣れた地域で自分らしく暮らすことを目指し、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるネットワークである『地域包括ケアシステム』が推進されていると解説しました。

 

もう1つ、国が目指している医療の重要な施策として『地域医療構想』があります。地域医療構想と地域包括ケアシステムは「車の両輪」と例えられるほど密接な関係にありますので、解説していきましょう。

 

日本人は高齢化の一途をたどっています。2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、一層の超高齢社会が訪れます。少ない生産人口で、多くの高齢者を支える必要があります。日本の人口がピラミッド型の構造をしていた時代とは違う医療の形を再構築する必要に迫られています。

そのために制定され、始まったのが『地域医療構想』です。日本の各地域において医療を効率的に提供できるように、医療機関の機能分化・連携を進めることを目的としています。簡単に言うと、「各地域にどれくらいの規模の医療が必要か計算する」ということです。

 

具体的には、まず日本全国を300以上の「構想区域」に分け、構想区域ごとに必要とされる「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の入院ベッド数を計算します。そして現在のそれぞれのベッド数を、計算された必要ベッド数へと近づけるように調整していくのです。

とはいえ、日本のベッド数は諸外国に比べて非常に多いことが以前より指摘されており1、現実的にはほぼ削減する方向にしかいきません。そして、ここで特に俎上に乗⇔載りやすいのが「慢性期」のベッド数です。

 

日本の高齢者は、終末期を病院で過ごすという時代が長く続いてきました。容体がある程度安定していたとしても、自宅へ戻るという選択肢はほぼなく、「胃ろう」などを造設したうえで、慢性期患者を対象とした老人病院を転々としていました。いわゆる「社会的入院」です。

それはそれで一定の役割があるのも事実ですが、超高齢社会においても同じやり方で対応をしようとすれば、医療リソース(マンパワー、医療費ともに)をひっ迫してしまうのは間違いありません。そこで、特に慢性期のベッド数を減らし、医療リソースをその他の分野に振り分けるという目的のため、地域医療構想が定められたのです。

 

 

以上のように、地域医療構想と地域包括ケアシステムはワンセットの制度になっています。

前者により医療提供体制を再編し、後者により受け皿を整備します。そしてその結果、医療リソース(マンパワー、医療費ともに)の適正配分や、医療・介護市場の活性化をめざしているのです。

 

ただし、この改革がうまくいくかどうかはまだ分かりません。一般的には、入院治療を受けるよりも在宅医療を選択したほうが、医療費の負担が少なくなると考えられています。通院、入院時の家族の付き添いなどの負担も最小限になります。

しかし、前回解説したとおり、地域包括ケアシステム、在宅医療にも様々な課題があります。また、慢性期の病床数が減って医療費が減ったとしても、在宅医療費や介護保険料が増えれば、社会保障費は相殺されることにもなりかねません。さらに、いくら地域包括ケアシステムが整備されても、家族のサポートは欠かせないので、場合によっては介護離職をしてしまう人もいます。それも大きな社会的損失です。

 

日本全体として、何がベストの選択肢なのか、結論を出すにはまだ時期尚早でしょう。

 

参考

1)OECD Health Statistics 2021. 

2)  全日本病院協会:みんなの医療ガイド 地域医療構想.

 

(了・次回へ続く

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