第53回 がんの緩和ケアにおける痛みとは

第53回 がんの緩和ケアにおける痛みとは

2022.2.01 update.

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近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術

 

|緩和ケアができること

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

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テーマ●がんの疼痛管理の範囲とは:緩和ケアができること

 

皆さんは緩和ケアと聞くと、どんな内容を想像するでしょうか?

「痛み」や「吐き気」、「息苦しさ」など、がんやがん治療によって生じる身体的な症状をラクにする治療というイメージがあると思います。もちろん、それも緩和ケアの重要な柱です。また、身体的な問題では「栄養管理」「リハビリテーション」なども必要です。

 

しかし、それだけではありません。「気持ちが落ち込む」「不安で眠れない」といった、精神的な症状も緩和ケアにおける治療の対象となります。

さらに、「仕事ができなくなる」「家族の面倒がみられない」「経済的に苦しい」など、社会的な問題や、「死への恐怖」や「人生が無意味に思える」といったスピリチュアルな問題に対してもサポートが必要です。

 

2002年のWHOの定義を一部抜粋すると、「緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、疼痛やその他の身体的問題、精神的問題、社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見して、適切な評価と処置を行うことで、QOL(quality of life.生活の質)を改善するためのアプローチである」となります。

 

以上のように、緩和ケアの対象となる問題はとても多彩なので、一人の医療者で対応しきれるものではありません。第41回で解説したとおり、がん治療においては様々な職種が連携するキャンサーボードの設置が大切です。各専門科の医師、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなどが連携しながら患者を多方向から支える必要があります。

 

さて、緩和ケアに関してよくある誤解の1つに、「緩和ケアは、その他の治療の手段がなくなったときに、苦しみを和らげるためだけに行なうもの」というものがあります。患者さんによっては、「緩和ケアを行なうということは、手の施しようがないということで、もう終わり」と信じ込む人もいます。

しかし、これは間違いです。がんやがん治療によって生じる様々な問題は、がんと診断されたときから随時対応する必要があるからです。

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さて、あくまで緩和ケアは多彩な内容を含んでいますが、詳細は成書に譲り、ここではがんによる疼痛の管理について解説します。

 

がんによる疼痛には大きく分けて以下の3種類があります。

「体性痛」:がんが骨や筋肉、皮膚、粘膜などを直接障害することによる

「内臓痛」:がんが増大して臓器を圧迫することや、胸水・腹水貯留による

「神経障害性疼痛」:がんが脊髄や末梢神経を直接障害、圧迫することによる

疼痛の種類によって治療方法を峻別するのが理想ですが、多くの場合、これらの病態が混在しています。

 

疼痛が出現し、長く続くと、本来であれば疼痛が生じないようなごく軽い身体負荷であっても、恐怖感などから痛みを感じてしまうことあります。そしてそんな状態が長引けば、ADL(activities of daily living.日常生活動作)が低下して、QOLが低下してしまいます。

ですので、疼痛治療の目標は「患者にとって、許容できるQOLを維持できるレベルまで痛みを軽減させ、最終的には消失させること」になります。

まず、第1目標として「夜間の睡眠時における疼痛の消失」、第2目標として「安静時における疼痛の消失」、第3目標として「体動時における疼痛の消失」を目指していきます。

 

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オピオイドのその他の副作用としては、眠気、せん妄・幻覚、呼吸抑制などがあります。眠気が強い場合はオピオイドの過量投与になっている可能性があるので注意が必要です。

また、眠気、悪心はたいてい慣れますが、便秘は持続することが多いので下剤の継続投与が必要になります。

 

緩和ケアについての誤解と同様に、医療用麻薬についても、「使うと寿命が縮まる」「精神的におかしくなる」という誤解が流布しています。鎮痛のために必要十分な量を使用するかぎり、そのような副作用はありません

患者にもしっかり説明し、理解を求めていくようにしましょう。

 

参考

日本緩和医療学会緩和医医療ガイドライン作成委員会(編):がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版),金原出版,2020.

日本緩和医療学会 ウェブサイト

がん情報サービス 

 

(了・次回へ続く

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