第45回 がんの外科療法を選択するメカニズム

第45回 がんの外科療法を選択するメカニズム

2021.7.15 update.

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近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術

 

|がんの最先端医療をささえるものとは

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

 *ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中

 

テーマ●外科療法がもつ3つの特長

 

前回は外科療法の特徴について解説しました。

そして、たとえば消化器系のがんの場合、基本となる「開腹手術」の他、「内視鏡手術」「腹腔鏡手術」「ロボット手術」など、状況に応じて様々な選択肢があると解説しました。

では、どの方法を選ぶのか、何を基準にして決めるのでしょうか?

 

まず大切なのは「根治性」です。

たとえば直腸がんの場合、粘膜内に留まるものや、粘膜下層に入っていたとしても1,000μm(1mm)以内と予想されるものなどは、リンパ節転移の可能性がほぼゼロなので、病変だけ切除すればいいということになります。そのため、「内視鏡手術」が選択されます。

もし粘膜下層より奥に浸潤しているだろうと予想すれば、リンパ節転移を起こしている可能性が出てくるため、内視鏡手術では根治は難しく、最初から「開腹手術」などを選択することになります。

 

次に大切なのは「侵襲性」です。

開腹手術では広い視野を確保できて、病変を直接確認し、切除、再建ができます。しかしお腹に大きな手術痕ができるので、治癒するのにも時間が掛かるし、心理的な抵抗を感じる人もいるでしょう。

そこでなんとか体に対する負担(侵襲)を軽減できないかと登場したのが「腹腔鏡手術」や「ロボット手術」です。


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そして最後に、「実現可能性(feasibility)」です。その治療法を、高いレベルで行えるのかどうか、ということです。ある意味、これがもっとも重要な基準とも言えます。

腹腔鏡手術もロボット手術も、特殊な機械がなければできないし、その手術に慣れた医師やスタッフがいなければ成立しません。2014年には、とても多くの患者さんが、とある大学病院の医師が執刀した腹腔鏡手術で亡くなったことが報道されました。この事件についてここで詳しくは触れませんが、調査委員会の報告では、執刀医師が手技に十分精通しておらず、技術面に問題があったことが指摘されています。

大抵の医師は、最先端の治療をやりたいと思っています。なぜなら、好奇心、挑戦したいという気持ちが多かれ少なかれあるからです。

 

「好奇心だなんて不謹慎だ」と思う人もいるかもしれませんが、医師が全員「今のままの医療で十分」と思えば、医療の進歩はそこで止まります。ですので、医師の好奇心は押さえつけないほうがよいでしょう。大切なのは、原動力が好奇心であったとしても、現実のリスクを最小限にすることです。つまり、術前のシミュレーションをしっかりと行い、どのような危険性があるのか十分に把握する、データに基づいたインフォームドコンセントを行う、手技に慣れている医師を招聘するなど、万全の準備をしておくことです。

どんな手技でも、「自分にとっての1例目」があることは事実です。そこでどれだけきちんと安全策を講じられるかが重要なのです。

 

いくら最先端の治療であっても、技術が追い付いていなければ意味がありません。報道されたほどではなくても、ヒヤリハットのような事例はたくさんあるものと推察します。

「実現可能性」がきちんと保たれているかどうか。すべての医療者が心にとどめ、常に自問し続けなくてはいけないのです。

 

(了・次回へ続く

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