第22回 つねに頭がふわふわしている感じです【もねさん】

第22回 つねに頭がふわふわしている感じです【もねさん】

2021.6.09 update.

横道誠(よこみち・まこと) イメージ

横道誠(よこみち・まこと)

1979年生まれ。京都府立大学の准教授で、専門はドイツ文学研究・比較文化研究。子どものころから「稀代の変人」として、生きづらさに苦しむ。能力の凸凹(でこぼこ)が激しかったが、研究能力に秀でていたため、長年医学的な診断を受けずにいた。だが40歳のときに二次障害を起こし、41歳でついにASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如・多動症)の診断を受ける。
今年5月に上梓した当事者研究の本(ほぼ自伝?)の『みんな水の中』(シリーズケアをひらく、医学書院)が初の単著単行本。

Twitterアカウント:
https://twitter.com/macoto_y(研究者・著者として)
https://twitter.com/macoto_1(自助グループ主催者として)

 
もねさんは「アラサー」で、東京都内在住。発達障害の診断はおりていない。
 
幼少期にアメリカに移住した。当然ながら、周りで何が話されているか分からなかった。
 
小学校では英語と日本語の読み書きを同時に覚えた。成績は良かった。クラス内のコミュニケーションには困らなかったが、昼休みに誰かと遊ぶ発想がなく、ひとりで遊んでいた。広い校庭をひとりで散歩して、草花を見てまわった。昼はひとりでカフェテリアで食事をした。自分が変わってるとは思わなかった。家族で国内旅行によく行った。
 
小学生の途中から日本に戻った。初めはなじめなかったが、半年もすると友だちができた。授業はアメリカにいたときよりつまらなかった。教師の話を聞かなくても内容が理解できたため、授業中に本を読んでいた。講談社「青い鳥文庫」の「パスワード」シリーズが好きだった。
 
自分の言動がクラスの女子のひんしゅくを買った。無自覚だったが、母親が担任から指摘され、もねさんは母親から耳にして、ショックを受けた。「それまでは自己肯定感が高かったんですけど、自分を出すのが怖くなりました」。
 
中学受験をして、中高一貫の女子校に入学。6年間、楽しい思い出がほとんどなかったと言う。中学受験で燃えつきて、「もう勉強しなくていいや」と思った。授業を聞くのが得意でなく、空想に耽った。文芸部に入って、締め切り直前に慌ててファンタジー物語を書いていた。英語の本ばかり読んだ。「ハリー・ポッター」シリーズ、『ゲド戦記』、『指輪物語』などを原書で楽しんだ。中学時代は友だちが0人だったが、環境が良く、いじめられることはなかった。
 
高校1年生のときに久しぶりに友だちができた。クラスが離れても、3年間ずっと一緒にいた。彼女は勉強がよくでき、影響されて自分も勉強するようになった。英語はもちろんよくできた。好きな科目は美術。暗記系も得意だった。引きつづき文芸部に所属し、ファンタジー小説を書いていた。読書の嗜好も中学生のころから変わらなかった。
 
仲の良い友だちは関西の超難関国立大学に行きたがったため、影響されて関東の超難関国立大学に入ろうと思った。実際に受験し、合格した。テレビ番組『行列ができる法律相談所』の影響を受け、「潰しが効く」と考えて、法学を専攻。
 
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「大学は最初の10か月は楽しかったです。渋谷に行ったりとか。でも気づいたら、周りの子たちとは疎遠になってました」。
 
映画サークルに入って、自主映画を作った。「映画をほとんど見たことがなかったんですけれど、何か作りたくて。中学・高校で文章を書く才能はないなって分かったから」。作った作品を文化祭で上映した。「作っているあいだはそれなりに楽しかったです」。
 
旅行が好きで、中国、モロッコ、フランス、イギリスに行った。
 
2年生のときに書店で発達障害の本を見つけ、これは自分のことではないかと感じた。3年生のときに学生支援センターに行き、知能検査を受けたが、確定診断に至らなかった。
 
3年生以降は勉強に集中した。クラスメイトは弁護士を志望することが多く、自分も法科大学院を受験しようと考えた。しかし考えを改め、4年生をやりなおして、就活をおこなった。
 
「基本コミュ障なのでイヤな思いをしたんですけれど。いま就職している企業の内定をもらって。第一志望だったので、問題なく就活は終わりました」。
 
金融関係の会社だった。「営業がない会社なので、自分にもできるかなと思いました」。その会社で7年勤めている。「毎日辞めたいなと思いながら仕事しています」。
 
映画サークルにいるときから同学年の男性と付きあい、卒業から4年後に結婚した。アメリカ、メキシコ、ベトナム、台湾などに旅行した。
 
もねさんはコミュニケーションでいつも困っている。「ずっと人と関わらずに成長したので、いまでも話すのが苦手です」。そして考えがまとまらない。「つねに頭がふわふわしている感じです。いまインタビューを受けていても、何を話して良いのか分かりません」。
 
もねさんは発達特性に由来する自分の困りごとを、いつもツイートしている。「発達障害関係の会に何回か参加して、それは良かったと思ってます。同じ発達障害でも自分と全然違うタイプの人もいるので参考になります」。
 
社会生活に深刻な支障を起こしていないから診断がおりなかったのではないか、と指摘すると、「今後病気になったら、改めて診断を受けに行こうと思います」と答えてくれた。
(横道誠「発達界隈通信!」第22回了)

 

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