かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2021.2.15 update.
東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』・『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』・『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』・JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術』
|レントゲンやCTによる被ばく―医療被ばくを考える|
医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。
自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。
*ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中
前回は、放射線の概要について解説しました。また、放射線の単位で混乱しがちな「ベクレル(Bq)」「グレイ(Gy)」「シーベルト(Sv)」についても解説しました。
さて、被ばく量が累積で100ミリシーベルト(mSv)を超えると、発がんのリスクが高まることが報告されています。
では一般的な生活を送っている場合、被ばく量はどこまで抑えることができるのでしょうか?
また、よく話題にのぼるレントゲンやCTなどの被ばく量は一体どれくらいなのでしょうか?
検査による被ばくは、誰にとっても気になるポイントです。
具体的なデータを上げて説明できることが、医療従事者には求められるでしょう。
平均的な日本人の場合、自然放射線による被ばく量が年間2.1mSvあり、医療被曝を合わせるとおよそ6mSvにもなります。ということは、20年もたたずに、累積100mSvになる計算です。
仮に医療被曝をゼロにしたとすれば、100mSvになる期間は、およそ50年に延長されます。
では医療被ばくは一切避けたほうが良いのかというと、そんなことはありません。
マンガ内の「被ばく線量の比較」にもある通り、胸部レントゲンは1枚0.1mSvにも満たないので、健康診断などで年に数回撮るくらいであれば、ほとんど気にする必要はありません。
やはり注意が必要なのはCTです。撮り方にもよりますが、1回10mSv前後の被ばく量があるので、必要最小限にすべきなのは間違いないでしょう。
ただし、マンガでも解説した通り、100mSvを超えると発がんのリスクが高まるというのは、一瞬のうちに被ばくした、原爆被爆者のデータを基に算出されています。数年、数十年かけて100mSvに到達した場合は、リスクはもっと少ないと考えられます。ですので、被ばくを根拠にCTを一律に忌避するのも不合理です。メリット、デメリットを天秤にかけて、必要なときには、しっかりと検査を行うようにしましょう。
環境省:放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和元年度版).
(了)
*ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中
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