第35回 発がんに関わる放射線と被ばく

第35回 発がんに関わる放射線と被ばく

2021.1.15 update.

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近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術

 

ベクレル、グレイ、シーベルト...

放射線の単位はどう使い分けるの

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

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テーマ●目に見えない発がんリスク―放射線を理解する

 

前回は、PET(positron emission tomography)検査についてのメリット、デメリットを解説しました。

そしてその中で、

PETとCTを合わせると、医療被曝が20ミリシーベルト(mSV)を超えうること」や、「被ばく線量が累積で100mSVを超えると、徐々に発がんのリスクが増大していくこと」を解説しました。

 

タバコを含めた「生活習慣」や、「感染症」など、発がんのリスクとなる因子はたくさんあります。

その中でも、「放射線被ばく」には独特の怖さを感じる人も多いでしょう。

まず放射線が目に見えず、実態がイメージしづらい

「よく分からない」というのは、怖さを助長させるはたらきをもっています。

 

ご存じの通り、第二次世界大戦では広島、長崎に原子力爆弾が投下され、日本は世界で唯一の被爆国となりました。

また、2011年の東日本大震災では、地震の後に発生した福島第一原子力発電所の事故のため、日本の国土の広い範囲が放射能に汚染されました。

私たち日本人は、被ばくのリスク、そして怖さにさらされ続けてきたのです。

しかしその一方で、被ばくに関しては怖いイメージが先行しており、その実態は正しく理解されてこなかったようにも感じます。

その結果、やみくもな恐怖は疑心暗鬼を生み、往々にして差別につながりました。多くの人が様々な風評被害に苦しんできたし、今もそれは残っています。

この問題を解決するためには、放射線とは何なのか、そしてどう人体に影響するのかを理解し、正しく恐れることが重要なのです。

とはいえ、放射線について詳細に解説すると1冊の本になってしまうため、今回と次回では、がん医療に関わるポイントに絞って解説していきましょう。

 

みなさんも、ウラン(U)、ラドン(Rn)、プルトニウム(Pu)、セシウム(Cs)、ストロンチウム(Sr)といった名前を聞いたことがあると思います。これらはすべて、「放射性物質」です。

放射性物質は、「放射線」を出す能力である「放射能」をっています。

そして放射線には、α線、β線、陽子線、中性子線、X線、γ線など、様々な種類があります。

 

さて、放射線が人体に与える影響には、「確的影響」と「確的影響」があります。

確定的影響は、一定以上の線量を被ばくした場合、個人差はあるものの、ほとんどの人に出現する影響です。脱毛、白内障、皮膚障害などが含まれます。

 

確率的影響は、被ばくしたことにより一定の確率で起きる影響です。確率なので、出る人と出ない人がはっきり分かれます。これには発がん、遺伝的な影響などが含まれます。

なぜこのような影響が生じるかというと、放射線は、私たちの細胞の中にあるDNAを損傷させてしまうからなのです。細胞が損傷すれば、人間の体はそれを修復しようとします。しかし、修復に失敗して細胞が死ねば確定的影響が生じるし、DNAが不完全に修復され変異してしまえば、発がんなど確率的影響が生じる可能性が高まるのです。

以上が放射線の概要です。

 

さて、ここで、混乱しがちな放射線の単位について説明しておきます。

福島第一原子力発電所の事故当時、放射線のニュースがさかんに報道されました。その際に放射線の単位として「ベクレル(Bq)」「グレイ(Gy)」「シーベルト(Sv)」といった名称を聞いた人も多いと思います。

この3種類は一体どのような違いがあって、どのように使い分ければいいのでしょうか。

 

ベクレルというのは、放射性物質が出す放射線の量を表す単位です。つまり、放射線を出す側の話です。

グレイとシーベルトは、放射線を受ける側(たとえば私たちの体)の話です。

グレイは、私たちの体が吸収した放射線のエネルギー量を表す単位です。しかし、放射線にも様々な種類があるし、臓器による感受性の違い(放射線の影響を受けやすい臓器と受けにくい臓器がある)があります。そこで、放射線の種類と感受性の違いを考慮して、グレイを再計算したものがシーベルトになるのです。

つまり、単純に人体に当たった量を表すグレイよりも、人体に与える影響という観点で再計算したシーベルトのほうが、「より実践的な値」ということになります。

 

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この3種類を、雨が降って人体が濡れた場合に例えてみましょう(理解を優先して単純化しています)。

そうすると、

 

「ベクレル」(Bq)は、空から降る雨の量

「グレイ」(Gy)は、体に当たった雨の量

「シーベルト(Sv)」は、体を濡らした雨の量

 

にそれぞれ相当します。体が露出している部分は濡れますが、防水性のパーカーを着ている部分は濡れません。場所によってムラ(臓器の感受性に相当)があるので、グレイとシーベルトは同じではないのです。

 

(了・次回へ続く

 

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