第33回 PET検査のメカニズム

第33回 PET検査のメカニズム

2020.12.01 update.

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近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術

 

 

PET検査なら全身どこのがんでも見つけられる!

・・・ってホント?

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

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テーマ●全身の画像検査でがんを見つける――PET検査

 

本連載ではここまで、様々ながん検診について解説してきました。

 

それらは、原則的に1種類のがんに対して個別の検査方法を対応させるものでした。例えば「肺がん」には「胸部レントゲン」、「大腸がん」には「大腸カメラ」、「乳がん」には「マンモグラフィー」といった具合です。

場所や形といった臓器の特性に合わせて、それに最も適した検査方法を採用しているのです。

それが、現状ではもっとも正確なのは間違いありません。しかし、時間、費用、肉体的な負担は、検査を受ければ受けるほど積み重なっていくというデメリットがあります。ですので、「1回の検査で全身のがんを検索できないか」というニーズは当然のことながら出てきます。その回答の1つが前回解説した「リキッドバイオプシー(liquid biopsy)」でした。

リキッドバイオプシーは、採取した血液で網羅的にがんを見つけようという試みです。

一方で、血液ではなく、全身の画像検査を行うことによって、網羅的にがんを見つける方法の代表格が、「PET(positron emission tomography)検査」です。

 

PET検査では、まず「放射性同位元素がくっついたブドウ糖(FDG)」を体内に注射します。がん細胞は活発に増殖しているため、栄養素であるブドウ糖を正常の細胞よりもたくさん取り込みます。ブドウ糖と同様に、FDGもがん細胞にたくさん取り込まれるので、FDGの体内分布に差が出ます。その濃淡を映像化するのがPET検査です。正常な細胞よりも、がん細胞にFDGがたくさん集積するので、画像上濃い場所は、がんの存在を疑います。

 

ただし、PETだけだと大抵はボンヤリとした画像しか得られません。

そこでPETにCTかMRIを組み合わせて、検査の精度を高めます。

 

670マンガ33-1.jpg画像を見ると一目瞭然ですが、PETだけだと解像度が粗く、CTだけだと濃淡がはっきりしませんPETとCTをかけ合わせて初めて、非常にクリアで説得力のある画像が得られています。

 

しかし、なんて素晴らしい検査なんだと思うかもしれませんが、現実にはなかなか上手くいかないケースもあります。がんの性質によっては、FDGがうまく集積しなかったり、正常臓器に集積してしまったりすることがあるのです。

 

2006年から2009年の全国調査では、のべ233施設においてがんと診断された1,912例のうち、PET検査で陽性になったのは1,491例(78.0%)でした。機器の進歩とともに改善しているのは間違いありませんが、いまだ5人に1人はPET検査で見逃されている計算になります1)

 

これは、臓器によってPET検査が向いている臓器と、向いていない臓器が分かれていることが原因です。

 

では、どんな臓器がPET検査に向いているのでしょうか。

PET検査が「非常に有用」なのは、「頭頸部がん」「甲状腺がん」「悪性リンパ腫」の3種類です。

特に、甲状腺がんはPET検査で見つかる頻度が一番高いがんです。ただし第20回で解説したとおり、ラテントがん(ゆっくり成長して寿命に影響しないがん)の割合が高いので、PETで診断された甲状腺がんが本当に治療すべきなのかどうかは、慎重に見極める必要があります。

 

次に、「有用性が高い」と考えられるのは、「肺がん」「乳がん」「膵がん」「大腸がん」「卵巣がん」「子宮体がん」です。

そして、その他のがんは、[有用性が低い]と報告されています。

 

なぜ、臓器によってこのようなムラがあるのでしょうか?

次回、詳しく解説します。

 

文献

1) 日本核医学会PET核医学分科会(編):FDG-PETがん検診ガイドライン(第3版,2019版).

 

(了・次回へ続く

 

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