かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2020.11.15 update.
東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』・『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』・『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』・JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術』
|血液だけでがんが発見できる日は来るのか?|
医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。
自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。
*ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中
前回、腫瘍マーカーであるPSAを使った前立腺がん検診について解説しました。
体内にがんができると、「がん自体」か「人体」が、がんに反応して特定の物質を作り出すことがあります。健康なときには上昇せず、がんの発生、増大に伴ってその物質の値も上昇していくのであれば、がんの補助診断として有用です。そのような性質をもった物質を総称して、「腫瘍マーカー」と呼びます。【前回の復習】
「PSA=前立腺がん」のように腫瘍マーカーとがんが1対1の関係であれば非常に分かりやすいのですが、実はそれは例外的なケースです。基本的に、1つのがんについて腫瘍マーカーは複数あるし、1つの腫瘍マーカーは複数のがんで上昇します。非常に複雑な関係なのです。
がん検診としては、PSA以外は実用的ではないし、そのPSAもラテントがんをたくさん見つけてしまうという課題があります。
結局、腫瘍マーカーによるがん検診は難しいというのが現状です。
このように、血液や尿を調べることによってがん検診をしようという試みを「リキッドバイオプシー(liquid biopsy)」と呼びます。
実は、腫瘍マーカーだけでなく、「血中循環腫瘍細胞」「血中循環腫瘍DNA」「マイクロRNA」「アミノ酸」などを測定するリキッドバイオプシーが多数開発、研究されており、実用化を目指しています。
採血だけでがんの有無が分かるのであれば、肉体的、時間的な負担も少ないし、こんなに便利なことはありません。「一般的ながん検診は受けたくないけど、採血するだけだったらやってみてもいい」という人たちを掘り起こす効果もあるでしょう。リキッドバイオプシーには大変な需要があることは容易に理解できます。今後の進展に期待しましょう。
(了・次回へ続く)
*ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中
[医学書院の《がん看護実践ガイド》シリーズ]
ゲノム診療時代のパートナー。がん遺伝子パネル検査はこの本から始めよう。
がんゲノム医療を牽引してきたフロントランナーたちによる決定版。関連用語を網羅したキーワード集、がんゲノム医療の成り立ち、基本知識とその解説、「治験の探し方」「調査結果の読み方」「各種検査のスペック」「二次的所見とは?」などなど、はじめての医療者が必要とする情報を整理。がんゲノム医療に必要な実践知を余すところなく網羅!
がんサバイバーの自立を支えるために看護師が行うがんリハビリテーションを解説
がん、治療とともに日常生活を送るがんサバイバーが自立した生活を送るためのリハビリテーションが求められている。本書では、がんの治療期の患者に焦点をあて、がんリハビリテーションを実践するうえで基盤となる知識、技術について解説し、特に看護師が行う実践について取りあげている。看護師がベッドサイドなどで行うリハビリテーションや退院後の生活を想定したセルフケア指導について解説した1冊。
がん患者のエマージェンシーの早期発見と迅速な対応のために
がん患者のエマージェンシーには早期発見、迅速な対応が求められる。そのため、がんやがん治療について理解するとともに、エマージェンシーの徴候、見え方を知っておくことが重要である。本書では、症例を豊富に提示し、病棟・外来でエマージェンシーがどのように見えるのか、求められる対応、必要な知識を解説し、また外来化学療法を受ける患者の帰宅後のエマージェンシーへの対応(電話サポート)も取りあげている。
超高齢社会に向けたこれからのがん看護に求められる知識と技術がここに
がん治療の進歩と罹患者の増加に伴い、がんとともに生きる患者が急速に増える一方、在院日数短縮化が進み、病院と在宅療養と介護サービスの適切な活用が必須となりつつある。がん患者の特性を踏まえた症状コントロールや心理的ケア、意思決定支援、限られた社会資源の調整といった「療養支援」を、治療の場と時期を問わず提供できることが病棟や外来の看護師に求められている。本書ではそれらの知識と技術を具体的に解説する。