第30回 続・子宮頸がん検診のメカニズム

第30回 続・子宮頸がん検診のメカニズム

2020.10.15 update.

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近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術

 

 

子宮頸がん検診の複雑さ

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

 *ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中

 

テーマ●細胞診とHPV(ヒトパピローマ)検査

 

今回は子宮頸がん検診について解説します。

子宮頸がん検診というと、「腟の中に綿棒を入れて細胞を採る」というイメージがあると思います。

もちろんそれで問題ないのですが、実は方法にはいくつかバリエーションがあり、意外と複雑なのです。

 

日本で対策型がん検診として認められているのは、頸部の細胞を採り、がんを疑わせる変化がないかどうかを調べる「細胞診」だけです。

一方、世界的には、細胞診と、「ヒトパピローマウイルス(Human papillomavirus:HPV)検査」という、HPVの有無を調べるという2種類の方法があります(両方とも、子宮頸部の細胞を採る点は同じです)。

 

なぜHPVを調べる方法があるかといえば、第11回でも解説したとおり、頸がんの発症にはHPVの持続感染が強く関与しており、HPV陰性の人から頸がんが発症するのは少ないからです。ですので、まずHPVの有無で大別して、HPV陰性であれば検診期間を間遠にし、陽性であれば精密検査を追加する、という方法を採用しているのです。合理的といえば合理的だと思います。

では細胞診と、HPV検査を比べてみましょう。

 

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HPVは検査方法として合理的というだけでなく、実は病変を検出する感度も、細胞診より高いことが報告されています。

HPV検査だけだと、HPV陰性の頸がん患者を見逃すのではないかと懸念されていました。しかしオランダの大規模な臨床試験において、「細胞診単独」「HPV検査単独」「細胞診とHPV検査併用」3群を比べたところ、見逃す可能性が一番高いのは「細胞診単独」で、ほかの2群では変わらなかったという衝撃の結果が報告されたのです1)

つまり、HPV検査が最も有用で、それに細胞診を加えても上乗せ効果がほとんどないということです。

こういった結果を受けて、オランダ、イタリア、イギリス、スウェーデン、オーストラリアなどはHPV検査単独の子宮頸がん検診を取り入れつつあります。

 

ただしHPV検査にもいくつか注意点があります。

HPV検査は浸潤がんの罹患率を減少させる可能性がありますが、偽陽性(HPV陽性だけれども、がんはない)の数も増加させてしまいます。本当はがんがないけれども、精密検査が必要になる人が増え、肉体的、心理的な負担が増してしまうということです。ちなみに、細胞診とHPV検査併用では、偽陽性がさらに増加してしまいます。

 

600子宮頸がん比較グラフ.jpg

 「有効性評価に基づく子宮頸がん検診ガイドライン更新版」より

   【国立研究開発法人 国立がん研究センターより転載許諾】 

 

グラフの青い部分赤い部分縮尺が違うことに注意してください。

偽陽性とはいえHPV陽性であれば今後もがんのリスクが高いことは間違いないので、HPV陽性者に対して、長期にわたってきちんと経過を追える体制を構築することが必要です。

また、HPV陽性者に対して、精密検査の内容をどうするかというアルゴリズムが国内ではまだ統一されていないという問題もあります。

子宮頸がんに関しては、解決しなくてはいけない問題がいくつか残っています。まずはワクチン接種、そして効率的、合理的ながん検診をそれに組み合わせて、対象者のライフスパン全体を見渡したうえでの最適解を求めることが急務と言えるでしょう。

 

文献

1) Rijkaart DC, et al. Human papillomavirus testing for the detection of high-grade cervical intraepithelial neoplasia and cancer: final results of the POBASCAM randomised controlled trial. Lancet Oncol. 2012 Jan;13:78-88.

 

(了・次回へ続く

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