第28回 乳がん検診のメカニズム

第28回 乳がん検診のメカニズム

2020.8.15 update.

近藤慎太郎(こんどう しんたろう) イメージ

近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術

「私の乳腺濃度は高いですか?」と質問できるために

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

 *ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中

 

テーマ●高濃度乳房という盲点

 

がん情報サービスによると、乳がんの罹患率(2016年)は145.5、死亡率(2018年)は23.0となっています。特に罹患率は、女性のがんの中でダントツの1位になっています。しかも罹患率、死亡率ともに一貫して増加傾向にあり、非常に要注意のがんなのです。

通常、がんのリスクは加齢とともに上昇し続けますが、乳がんの場合、40歳代後半でいったんピークを迎え、その後、実は60歳代後半から減少し始めます。女性ホルモンが乳がんの発症を促進する方向に働くので、加齢によって閉経すると、むしろリスクが減少していくのです。

600グラフ28.jpg

これは良いことでもあり、悪いことでもあります。

上の図のとおり、一般的にがんのリスクが低いはずの30~40歳代という若い世代であっても、乳がんが発症するケースはまれではありません

その時期にきちんと検診を受けられる状況にあればいいのですが、仕事が忙しかったり、小さい子どもがいたりして、ついつい検診がおろそかになってしまうことも多いでしょう。そんな状況が長く続けば、気がついたときには進行がん、という事態に陥る可能性もあります。本人にとってはもちろん、小さい子どもが残される場合もあるので、若年発症というのは本当に深刻な問題なのです。

ではそんな乳がんを見つけるためにはどんな検査があるのでしょうか?

670マンガ修正20200719-2.jpg

タレントや女優の方が、乳がんに罹患したというニュースがときどき報道されます。

そして、マンモグラフィによる乳がん検診を受けていたにも関わらず、乳がんを早期の段階で見つけることができなかったというケースもあります。

もしかすると、みなさんの周りでも同じような状況に陥ってしまった人がいるかもしれません。

なぜそんなことがありえるかというと、マンガで解説した通→とおり、高濃度乳房の場合は乳がんが見つけづらいからです。

マンモグラフィを受けても、受けた人の乳腺の濃度が高いか低いかは、一般的に通知されません。結果は、「異常なし」か「要精密検査」のどちらかで通知するよう定めているからです。たとえ高濃度乳房で見えづらかったとしても、明らかな異常がなければ「異常なし」となります。

ですので、「マンモグラフィを受けているから大丈夫」と安心していると、「実は知らない間にがんが育っている」ということがありえるのです。これは、意外と知られていないマンモグラフィにおける盲点です。

 

では、このリスクを減らすためには、どうすればいいでしょうか?

一番大事なことは、マンモグラフィを受けたら、検査の担当者に私の乳腺濃度は高いですか?と質問することです。もし担当者が説明できる立場になければ、その医療機関の医師に説明してほしいと依頼しましょう。

気後れする必要はありません。自分の身体の状態を知るというのは、受診者の当然の権利だからです。

そしてもし自分が高濃度乳房であることが分かったら、どうすればいいでしょうか?

現状で最も有望なのは、乳腺の「超音波検査」を併用することです。お腹や心臓の超音波検査と同じように、乳房に超音波を当てて、がんの有無をチェックすることができます。

実際に、40歳代の女性にマンモグラフィと超音波検査を併用することによって、マンモグラフィ単独よりも、早期の乳がんの検出率が上がったことが報告されています1)

検出率が上がった結果、死亡率も下がるかどうかは、臨床試験が進行中でまだ証明されていません。しかし、少なくとも高濃度乳房の人の場合は、「雪原で白うさぎを探す」よりは、いいのではないでしょうか。

 

文献

1) Ohuchi N, A Suzuki,T Sobue,et al:Sensitivity and specificity of mammography and adjunctive ultrasonography to screen for breast cancer in the Japan Strategic Anti-cancer Randomized Trial (J-START): a randomised controlled trial. Lancet. 2016;387:341-348.

 

(了・次回へ続く

(過去記事のアーカイブこちらから)

 *ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中

 

[医学書院の《がん看護実践ガイドシリーズ]

がん患者へのシームレスな療養支援 イメージ

がん患者へのシームレスな療養支援

超高齢社会に向けたこれからのがん看護に求められる知識と技術がここに
がん治療の進歩と罹患者の増加に伴い、がんとともに生きる患者が急速に増える一方、在院日数短縮化が進み、病院と在宅療養と介護サービスの適切な活用が必須となりつつある。がん患者の特性を踏まえた症状コントロールや心理的ケア、意思決定支援、限られた社会資源の調整といった「療養支援」を、治療の場と時期を問わず提供できることが病棟や外来の看護師に求められている。本書ではそれらの知識と技術を具体的に解説する。

詳細はこちら

サバイバーを支える 看護師が行うがんリハビリテーション イメージ

サバイバーを支える 看護師が行うがんリハビリテーション

がんサバイバーの自立を支えるために看護師が行うがんリハビリテーションを解説
がん、治療とともに日常生活を送るがんサバイバーが自立した生活を送るためのリハビリテーションが求められている。本書では、がんの治療期の患者に焦点をあて、がんリハビリテーションを実践するうえで基盤となる知識、技術について解説し、特に看護師が行う実践について取りあげている。看護師がベッドサイドなどで行うリハビリテーションや退院後の生活を想定したセルフケア指導について解説した1冊。

詳細はこちら

オンコロジックエマージェンシー 病棟・外来での早期発見と帰宅後の電話サポート イメージ

オンコロジックエマージェンシー 病棟・外来での早期発見と帰宅後の電話サポート

がん患者のエマージェンシーの早期発見と迅速な対応のために
がん患者のエマージェンシーには早期発見、迅速な対応が求められる。そのため、がんやがん治療について理解するとともに、エマージェンシーの徴候、見え方を知っておくことが重要である。本書では、症例を豊富に提示し、病棟・外来でエマージェンシーがどのように見えるのか、求められる対応、必要な知識を解説し、また外来化学療法を受ける患者の帰宅後のエマージェンシーへの対応(電話サポート)も取りあげている。

詳細はこちら

トラックバック

http://igs-kankan.com/mt/mt-tb.cgi/1232

コメント

このページのトップへ