かんかん! -看護師のためのwebマガジン by 医学書院-
2020.8.01 update.
東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』・『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』・『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』・JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術』
|大腸ポリープは便潜血検査で診断できる? |
医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。
自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。
*ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中
大腸がんの発生ルートには2種類あると言われています。
1つは正常粘膜からいきなりがんができるルート。このルートからできるがんを「de novo(デノボ)がん」と呼びます。「de novo」は、「はじめから」という意味です。
もう1つは、第8回で解説したように、まず腺腫というポリープができて、遺伝子変異が蓄積していくことによってがん化する経路です。
腺腫(adenoma)からがん(carcinoma)ができるので、この経路を「adenoma-carcinoma sequence(アデノーマ-カルシノーマ・シークエンス)」と呼びます。
「de novoがん」と「adenoma-carcinoma sequence」の、どちらの経路がどれくらい多いのかは、今のところわかっていません。ただし、見つかった大腸ポリープをすべて切除することによって、大腸がんの罹患率が90%減ったという報告1)があることから、後者のほうが多いのだろうと推測されています。
ポリープは大腸がんになる可能性をもっている「前がん病変」なので、ポリープの切除は大腸がん予防のためには非常に有効な戦略と言えます。
ではそんなポリープを、便潜血検査で見つけることができるのでしょうか?
便潜血陽性になった47人と、同時期に便潜血陰性になった383人の、両グループに大腸内視鏡検査を施行したところ、便潜血陽性のグループは46.8%にポリープがあり、陰性のグループは24.8%にポリープがあったという報告があります2)。少しわかりにくいのでマンガで解説しましょう。
本当にポリープがあるのか、ないのかは、もちろん神さまが教えてくれるわけではないので、「どの検査がもっとも正確なのか」をあらかじめ決めて、それを基準にして判定するしかありません。この、「もっとも正確な検査」とみなされるものを、「Gold standard(ゴールドスタンダード)」と呼びます。大腸の場合は現在のところ大腸内視鏡検査ですが、すべての臓器に関して、ゴールドスタンダードは時代とともに変遷していくものと考えてよいでしょう。
文献
1) Winawer SJ., Zauber AG, Ho M.N, et al: Prevention of colorectal cancer by colonoscopic polypectomy: the National Polyp Study Workgroup. N Engl J Med. 1993; 329: 1977–1981.
2) 近藤慎太郎, 加納美樹子, 谷禮夫,他:スクリーニング大腸内視鏡検査と同時に施行した便潜血検査の、大腸腺腫に対する診断能について.人間ドック(第55回日本人間ドック学会学術大会抄録集), 29(2),279,2014.
(了)
*ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中
[医学書院の《がん看護実践ガイド》シリーズ]
超高齢社会に向けたこれからのがん看護に求められる知識と技術がここに
がん治療の進歩と罹患者の増加に伴い、がんとともに生きる患者が急速に増える一方、在院日数短縮化が進み、病院と在宅療養と介護サービスの適切な活用が必須となりつつある。がん患者の特性を踏まえた症状コントロールや心理的ケア、意思決定支援、限られた社会資源の調整といった「療養支援」を、治療の場と時期を問わず提供できることが病棟や外来の看護師に求められている。本書ではそれらの知識と技術を具体的に解説する。
がんサバイバーの自立を支えるために看護師が行うがんリハビリテーションを解説
がん、治療とともに日常生活を送るがんサバイバーが自立した生活を送るためのリハビリテーションが求められている。本書では、がんの治療期の患者に焦点をあて、がんリハビリテーションを実践するうえで基盤となる知識、技術について解説し、特に看護師が行う実践について取りあげている。看護師がベッドサイドなどで行うリハビリテーションや退院後の生活を想定したセルフケア指導について解説した1冊。
がん患者のエマージェンシーの早期発見と迅速な対応のために
がん患者のエマージェンシーには早期発見、迅速な対応が求められる。そのため、がんやがん治療について理解するとともに、エマージェンシーの徴候、見え方を知っておくことが重要である。本書では、症例を豊富に提示し、病棟・外来でエマージェンシーがどのように見えるのか、求められる対応、必要な知識を解説し、また外来化学療法を受ける患者の帰宅後のエマージェンシーへの対応(電話サポート)も取りあげている。