第26回 大腸がん検診のメカニズム

第26回 大腸がん検診のメカニズム

2020.7.15 update.

近藤慎太郎(こんどう しんたろう) イメージ

近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術

 

 

大腸がん検診は盲点になっている

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

 *ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中

 

テーマ●日本人がもっとも罹患しているがんは?

 

第23回でも解説しましたが、がん情報サービスによると、がんの罹患率(2016年)、死亡率(2018年)は下記のとおりです。

 

第26回に表23再掲分.jpg

 

「胃がん」や「肺がん」、「膵臓がん」に関しては、よく話題にもなるし、その怖さ(特に膵臓がん)も周知されつつあります。しかしその陰に隠れるように、その影響力の大きさに比べて、十分に注目されていないがんがあると感じます。

それが「大腸がん」です。

大腸がんの罹患率は男女合わせて1位です。つまり、「現在日本人がもっともかかる可能性が高いがん」が大腸がんなのです。

さらに、女性の場合は死亡率も1位です。女性の乳がんや子宮頸がんに対する啓発活動は盛んに行われており、周知もされてきました。しかし、大腸がんに気をつけましょうという意識が世の中で広く共有されているとは思えません。乳がんや子宮頸がんは若年からリスクが高くなるので、特別な注意が必要なのは間違いありませんが、ぜひ大腸がんについても、それらと同等か、それ以上の注意が払われるべきでしょう。

では、そんな大腸がん検診にはどのようなものがあるのでしょうか?

対策型検診としては「便潜血検査」、そして任意型検診として代表的なものには「大腸内視鏡検査」があります。

 

670マンガ修正20200630 - コピー.jpg

   ※画像提供下段オリンパス株式会社EVIS LUCERA ELITE

 

 

便潜血検査は、自然に出る便を提出するだけなので、体に対する負担はほぼゼロです。

採血のように針を刺す痛みすらありません。負担が少なく、安価で、医療機関のマンパワーも最小限で済むので、検診項目としては理想的です。ただし、便に血が混じっているかどうかを調べるだけなので、正確性は劣ります。

特に偽陰性(がんがあるのに陰性になること)が多いので、通常検査は2回分提出します。ここで、2回中1回陽性になった場合に、「本当はどちらなのか確かめるためにもう一度検査を受けたい」と希望する患者さんが時々いますが、それは間違った解釈です。偽陰性を減らすために2回提出しているので、当然1回でも陽性になればそれは全体として陽性と判断します

 

また「痔があるから陽性になっただけだ」と主張する患者さんもいますが、痔と病変が両方あってもまったくおかしくはありません。たとえ痔があったとしても、やはり精密検査が必要になるのです。

 

一方、大腸内視鏡検査はカメラを大腸の中に入れて観察するので、正確性は非常に高いです。

ただし、胃と違って大腸は絶食にしただけでは空にならないので、液体の下剤を飲んで便をきれいに洗い流す必要があります。この作業に大抵午前中いっぱいをかけ、午後から検査になるので、胃カメラと違って丸1日かかる心づもりでいる必要があります。

また、出血や穿孔(腸に穴が開くこと)といった重篤な合併症が起こりうることもマイナスです。手間がかかること、体の負担が大きいことを考えれば、今後も対策型検診として採用されることは難しいでしょう。

 

イラスト26.jpg

便の検査や、大腸の検査を受けることについては、羞恥心を覚えるなど、心理的な抵抗を感じる人も多くいます。また、マンガでも解説したとおり、正確性や体への負担などに関して、ちょうどいいバランスの検診方法がありません。

こういったことが組み合わさって、大腸がんの罹患率、死亡率が高止まりしている可能性は否定できません。

大腸がん検診については、今後も様々な角度からの検討が必要でしょう。

 

(了)

(過去記事のアーカイブこちらから)

 *ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中

 

[医学書院の《がん看護実践ガイドシリーズ]

がん患者へのシームレスな療養支援 イメージ

がん患者へのシームレスな療養支援

超高齢社会に向けたこれからのがん看護に求められる知識と技術がここに がん治療の進歩と罹患者の増加に伴い、がんとともに生きる患者が急速に増える一方、在院日数短縮化が進み、病院と在宅療養と介護サービスの適切な活用が必須となりつつある。がん患者の特性を踏まえた症状コントロールや心理的ケア、意思決定支援、限られた社会資源の調整といった「療養支援」を、治療の場と時期を問わず提供できることが病棟や外来の看護師に求められている。本書ではそれらの知識と技術を具体的に解説する。

詳細はこちら

サバイバーを支える 看護師が行うがんリハビリテーション イメージ

サバイバーを支える 看護師が行うがんリハビリテーション

がんサバイバーの自立を支えるために看護師が行うがんリハビリテーションを解説 がん、治療とともに日常生活を送るがんサバイバーが自立した生活を送るためのリハビリテーションが求められている。本書では、がんの治療期の患者に焦点をあて、がんリハビリテーションを実践するうえで基盤となる知識、技術について解説し、特に看護師が行う実践について取りあげている。看護師がベッドサイドなどで行うリハビリテーションや退院後の生活を想定したセルフケア指導について解説した1冊。

詳細はこちら

オンコロジックエマージェンシー 病棟・外来での早期発見と帰宅後の電話サポート イメージ

オンコロジックエマージェンシー 病棟・外来での早期発見と帰宅後の電話サポート

がん患者のエマージェンシーの早期発見と迅速な対応のために がん患者のエマージェンシーには早期発見、迅速な対応が求められる。そのため、がんやがん治療について理解するとともに、エマージェンシーの徴候、見え方を知っておくことが重要である。本書では、症例を豊富に提示し、病棟・外来でエマージェンシーがどのように見えるのか、求められる対応、必要な知識を解説し、また外来化学療法を受ける患者の帰宅後のエマージェンシーへの対応(電話サポート)も取りあげている。

詳細はこちら

トラックバック

http://igs-kankan.com/mt/mt-tb.cgi/1229

コメント

このページのトップへ