第25回 ピロリ菌感染率と胃がん検診

第25回 ピロリ菌感染率と胃がん検診

2020.7.01 update.

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近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術

 

 

|ピロリ菌感染率が低くなったときに起きる深刻な事態

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

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テーマ●世界のヘリコバクター・ピロリ感染率

 

前回は、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の除菌について解説しました。

除菌は決していいことづくめではなく、デメリットもあります。しかしメリットとデメリットを天秤にかければ、やはり胃がんのリスクを下げるというメリットのほうが大きい。ですので、今でもピロリ陽性者に対する除菌は積極的に行われています。

 

さて、世界のピロリ菌感染者は、2015年の時点で約44億人と報告されています。世界人口が約73億人ですので、現時点であっても、多くの人がいまだに感染していると推測されます。

世界のピロリ菌感染率には、地域によってかなりのバラツキがあることが報告されています1)

どれだけ違いがあるのか見てみましょう。

 

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欧米でピロリ菌の感染率が低いのは、他の地域に比べて上下水道の整備が早かったからで、やや遅かったアフリカや南米、アジアでは感染率がいまだに高いと考えられています。

たしかに以前は日本人の大半がピロリ菌に感染していましたが、ピロリ菌の除菌や上下水道の整備によって、現代ではピロリ菌に感染するリスクは激減しました。

今後は日本においても、胃がんは珍しい病気になるかもしれません。

 

ではそうなったときに、何が起きるでしょうか? 

胃がんの罹患率が減れば、胃がん検診の費用対効果が低くなります。その結果、胃がん検診自体が行われなくなる可能性があるのです。

現実に、ピロリ菌感染率の低い欧米各国(アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、オランダ、スウェーデン、フィンランドなど)は、対策型の胃がん検診を実施していません2)

 

そうなれば、当然胃カメラの担い手自体も減っていきます。今まで日本で培われてきた診断や治療の技術も、失われてしまうかもしれません。

そのときに病気がパラレルに減っていれば影響は少ないかもしれませんが、前回解説したように、食道がんなどはむしろ増えている可能性があります。

胃がん検診をやめれば、早期の食道がんを見つけることも非常に困難になります。そういった諸々の悪影響を、どうすれば最小化できるのか。

今後も慎重な判断が必要とされるでしょう。

 

文献

1) Hooi JKY et al. Global Prevalence of Helicobacter pylori Infection: Systematic Review and Meta-Analysis. Gastroenterology. 2017;153:420-429.

2)『諸外国のがん検診の制度などに関する調査結果』より

 

(了)

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