第23回 胃がん検診のメカニズム

第23回 胃がん検診のメカニズム

2020.6.01 update.

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近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
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公式ブログ『医療のX丁目Y番地』 著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著に『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』がある。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術

 

| がんの罹患率と死亡率から把握しよう

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

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テーマ●過渡期を迎える胃がん検診

 

がん情報サービスによると、がんの罹患率(2016年)、死亡率(2018年)は下記のとおりです。

550表23.jpg

 

第6回で解説したとおり、胃がんの死亡率は年々減少しています。

ヘリコバクター・ピロリの除菌や、早期発見により完治する人がいることが要因と考えられます。

とはいえ罹患率、死亡率は依然高いので、まだまだ要注意のがんであることは変わりません。

 

そんな胃がんの検診方法と言えば、「胃X線検査(バリウム検査)」と「胃内視鏡検査(胃カメラ)」です。

バリウム検査は、バリウムという液体(造影剤)と胃を膨らませる発泡剤を内服し、X線写真を撮る検査です。

バリウムが溜まる場所は白、溜まらない場所は黒に写るので、胃粘膜の凹凸が分かり、不自然な場所(病変部位)がないかどうかを診断できます。

胃カメラは、可動性のあるスコープを口、もしくは鼻から挿入し、スコープ先端のカメラで観察します。

それぞれのメリットデメリットを比べてみましょう。

 

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※画像提供‥‥下段右◉オリンパス株式会社EVIS LUCERA ELITE
 

 

デメリットをもう少し詳しく比べてみます。

日本消化器がん検診学会の報告(2013年)によれば、バリウム検査を受けた0.04%(1,325人/313万人)に、腸閉塞、腸管穿孔、過敏症などの合併症が起きており、1人が亡くなっています。

また、胃カメラを受けた0・09%(214人/24万5千人)に、粘膜の裂創、出血、ショックなどが起きています。こちらの死亡例はありませんでした。

胃カメラはおよそ1,000人に1人、バリウム検査はおよそ2,500人に1人の割合で合併症が起きている計算になります。軽微なものも含めてではありますが、意外と多いと感じる人もいるかもしれません。

いずれにしても、バリウム検査、胃カメラともに一長一短があることがわかります。

 

また、肝心かなめの胃がん発見率も、直接比較したデータがないので、どちらが優れているかを結論付づけることはできません

ただし、今後はやはり胃カメラが優勢になっていくと予想されます。

なぜかというと、胃カメラのほうが「テクノロジーの進歩が検査の向上に直結しやすい」からです。マンガでメリットの項にもあげたように、「画像強調観察(異なる周波数の光を当てて、病変を認識しやすくする)」や「拡大観察(顕微鏡のように倍率を上げて粘膜の異常を詳細に観察する)」といった新しい技術が次々に登場し、診断能力の向上に寄与しています。

 

また、AIによる診断補助も、世界中で研究が行われています。

一方、バリウム検査においては、検査方法の画期的な進歩などは特にありません。撮れた画像に対してのAIによる診断補助であれば、相性も決して悪くないとは思いますが、その場で組織診断などを追加できるわけではありません。

結局、精密検査として胃カメラに回るのであれば、胃カメラの精度の向上に力点を置いたほうが、より直接的、効率的でしょう。

 

また、そういった流れの結果、バリウム検査の担い手が減少しています。

時代の趨勢を受けて、バリウム検査のスペシャリストを目指す若い医師や技師が減ってきているのです。メリットにもあげたように、「技師が施行可能」や「検診車に積んで巡回できる」という点があるので、まったくゼロになるとは思いませんが、バリウム検査の役割は徐々に縮小されていくことになるでしょう。

 

(了・次回へ続く

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