第21回 がん検診で注意すべき4つのバイアス

第21回 がん検診で注意すべき4つのバイアス

2020.5.01 update.

近藤慎太郎(こんどう しんたろう) イメージ

近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
●公式ブログ『医療のX丁目Y番地』
著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著は『ほんとは怖い健康診断のC,D判定 医者がマンガで教える生活習慣病のウソ・ホント』『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』。日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』JBpress連載『パンデミック時代の健康管理術

 

| がん検診に入り込む「バイアス」とは

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

 *ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中

 

テーマ●がん検診のアウトラインまとめ

 

第17回第18回では、早期発見を目指すためのがん検診について解説しました。

前回まで、がん検診のアウトラインについて解説しました。

 

要点をまとめると、

 

①がん検診は、受けることによって「死亡率減少効果」があるから施行されている。

②ただし、受けることによる「肉体的な苦痛」や、「偽陰性」と「偽陽性」、「過剰診断」といったデメリットもありうる。

③そして、この2つを天秤にかけて、メリットのほうが大きいと考えられる検査方法が、対策型検診として認められている

 

といったことを再確認してください。

 

これから、それぞれのがん検診の各論を解説していきますが、最後に一点、大切な注意点があります。

それは「死亡率減少効果」の「死亡率」について、用語の確認です。

 

もしかすると、

「検診の効果を判定する基準として、がんの「発見率」や「生存率」じゃダメなのか?」とか、

「そもそも死亡率って『1-生存率』なんだから、別に生存率っていう言葉を使ってもいいよね」と思っている方がいるかもしれません。

そう思う気持ちもわかるのですが、実は両方ともダメなのです。

 

何よりもまず初めに確認したいのは、 「死亡率=1-生存率」ではありません

たとえば、さいころを振って偶数が出る確率は1/2、奇数が出る確率は1/2で、あわせて1になります。それと同様に、「がんになってから一定期間が過ぎたときに、生存しているか死亡しているかは2つに1つだから、「率」は併せて1になるはずだ」と思うかもしれません。しかし実は、死亡率と生存率は分母が違うのです。ここに用語の重大な混乱があるのです。

 

死亡率」は、ある集団のうち、一定期間中にがんで死亡した人の割合です。

生存率」は、がんと診断された人のうち、一定期間後に生存している人の割合です。

550ver21回イラスト .jpg

 

つまり、死亡率は「健常人も含んだ中での割合」生存率は「がん患者だけでの割合」なのです。

分母が違えば、合わせて1になるはずがありません。ここを取り違えると、訳がわからなくなりますのでご注意ください。

 

さて、それを踏まえたうえで、検診にはいくつかの注意すべきバイアス(ものの見方の偏り)があります。

バイアスが入り込むと、検診の有用性を過大に評価しかねません。

以下に、代表的なバイアスを解説します。

 

医学書院21回修正版.jpg

 

検診の評価方法として「発見率」「生存率」は望ましくないというのも、①~③のバイアスが入り込みやすいのが理由です。

これらのバイアスは、いくら注意してもしきれないものもあります。④などは特にそうでしょう。

 

しかし、バイアスが入り込む余地があるからダメ、ということではなく、バイアスはどんな研究にでも入り込む可能性があることを念頭に置いて、結果を注意深く解釈することが必要なのです。

 

次回からは、がん検診の各論に入っていきます。

 

(了・次回へ続く

(過去記事のアーカイブこちらから)

 *ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中

 

[医学書院の《がん看護実践ガイドシリーズ]

がん患者へのシームレスな療養支援 イメージ

がん患者へのシームレスな療養支援

超高齢社会に向けたこれからのがん看護に求められる知識と技術がここに がん治療の進歩と罹患者の増加に伴い、がんとともに生きる患者が急速に増える一方、在院日数短縮化が進み、病院と在宅療養と介護サービスの適切な活用が必須となりつつある。がん患者の特性を踏まえた症状コントロールや心理的ケア、意思決定支援、限られた社会資源の調整といった「療養支援」を、治療の場と時期を問わず提供できることが病棟や外来の看護師に求められている。本書ではそれらの知識と技術を具体的に解説する。

詳細はこちら

サバイバーを支える 看護師が行うがんリハビリテーション イメージ

サバイバーを支える 看護師が行うがんリハビリテーション

がんサバイバーの自立を支えるために看護師が行うがんリハビリテーションを解説 がん、治療とともに日常生活を送るがんサバイバーが自立した生活を送るためのリハビリテーションが求められている。本書では、がんの治療期の患者に焦点をあて、がんリハビリテーションを実践するうえで基盤となる知識、技術について解説し、特に看護師が行う実践について取りあげている。看護師がベッドサイドなどで行うリハビリテーションや退院後の生活を想定したセルフケア指導について解説した1冊。

詳細はこちら

オンコロジックエマージェンシー 病棟・外来での早期発見と帰宅後の電話サポート イメージ

オンコロジックエマージェンシー 病棟・外来での早期発見と帰宅後の電話サポート

がん患者のエマージェンシーの早期発見と迅速な対応のために がん患者のエマージェンシーには早期発見、迅速な対応が求められる。そのため、がんやがん治療について理解するとともに、エマージェンシーの徴候、見え方を知っておくことが重要である。本書では、症例を豊富に提示し、病棟・外来でエマージェンシーがどのように見えるのか、求められる対応、必要な知識を解説し、また外来化学療法を受ける患者の帰宅後のエマージェンシーへの対応(電話サポート)も取りあげている。

詳細はこちら

トラックバック

http://igs-kankan.com/mt/mt-tb.cgi/1216

コメント

このページのトップへ