第16回 臓器の「暗黒大陸」小腸とがん

第16回 臓器の「暗黒大陸」小腸とがん

2020.2.15 update.

近藤慎太郎(こんどう しんたろう) イメージ

近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
・・・
公式ブログ『医療のX丁目Y番地』 著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著に『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』がある。
日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』

 

 

|解明され始めた「暗黒大陸」小腸

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

 *ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中

 

テーマ●小腸がんが滅多に起きないメカニズムとは

 

前回、メジャーな臓器であっても、心臓のがんは頻度が少ないと解説しました。

もう1つ、非常にメジャーなのにがんが少ない臓器があります。

 

それは「小腸」です。

みなさんも、小腸のがんになった人の話はほとんど聞いたことがないはずです。

同じ消化管である胃や大腸のがんは非常に多いのに、小腸のがんは滅多にありません。

非常に不思議なことだと感じませんか?

 

なぜ小腸にがんが少ないのかは、はっきりわかっていませんが、「小腸の上皮はターンオーバー(代謝回転)がとても早いので、たとえがんができたとしても、進行する前に上皮ごとはがれ落ちてしまうから」と説明されています。

 

これは、「細胞の分化が進んでいるため、分裂の頻度が低く、遺伝子変異が発生しにくい」と説明される心臓と真逆の理論です。

両極端の性質が、同じ結果をもたらす(発がんのリスクを下げる)というのは、非常に興味深いポイントです。
 

さて、小腸がんの種類には、神経内分泌腫瘍、腺がん、悪性リンパ腫、肉腫などがあります。

このうち、上皮細胞由来の「いわゆる癌」は腺がんで、その頻度はすべての消化管がんの5%以下とされています。

 

670医学書院16回訂正版.jpg

※画像提供‥‥下段左◉日本メドトロニック株式会社

 

 

内視鏡、エコー、CT、MRI……。医療は、検査機器の進歩とともに発展してきたといっても過言ではありません。

検査の難しさから、「暗黒大陸」などと呼ばれていた小腸についても、新しい知見が集積されつつあります。

そしてその結果、小腸がんの頻度は、従来想定されていたよりも多いと感じている専門家もいます。
 

全身に転移しているようながんで、様々な検査をしても原発巣が特定できないものを「原発不明がん」と呼びます。

原発不明がんは、成人固形がんの3~5%を占めるとされており、頻度は決して少なくありません。

カプセル内視鏡バルーン内視鏡が登場する前は、小腸の検査は難しく、一部の小腸がんが原発不明がんとしてカウントされていた可能性は十分あります。今後は、小腸がんの罹患率が上がっていくかもしれません。
 

2016年1月からは、日本でがんと診断されたすべての人のデータを、一元的に集計・分析・管理する全国がん登録が始まっています*

罹患率のみならず、今後、各種がんに関してはさらに正確なデータが得られることになるでしょう。

 

<参考>国立がん研究センター研究所国立がん研究センター希少がんセンター

 

(了・次回へつづく

 

(過去記事のアーカイブこちらから)

 

[医学書院の《がん看護実践ガイドシリーズ]

<参考>国立がん研究センター研究所国立がん研究センター希少がんセンター


がん患者へのシームレスな療養支援 イメージ

がん患者へのシームレスな療養支援

超高齢社会に向けたこれからのがん看護に求められる知識と技術がここに がん治療の進歩と罹患者の増加に伴い、がんとともに生きる患者が急速に増える一方、在院日数短縮化が進み、病院と在宅療養と介護サービスの適切な活用が必須となりつつある。がん患者の特性を踏まえた症状コントロールや心理的ケア、意思決定支援、限られた社会資源の調整といった「療養支援」を、治療の場と時期を問わず提供できることが病棟や外来の看護師に求められている。本書ではそれらの知識と技術を具体的に解説する。

詳細はこちら

サバイバーを支える 看護師が行うがんリハビリテーション イメージ

サバイバーを支える 看護師が行うがんリハビリテーション

がんサバイバーの自立を支えるために看護師が行うがんリハビリテーションを解説 がん、治療とともに日常生活を送るがんサバイバーが自立した生活を送るためのリハビリテーションが求められている。本書では、がんの治療期の患者に焦点をあて、がんリハビリテーションを実践するうえで基盤となる知識、技術について解説し、特に看護師が行う実践について取りあげている。看護師がベッドサイドなどで行うリハビリテーションや退院後の生活を想定したセルフケア指導について解説した1冊。

詳細はこちら

オンコロジックエマージェンシー 病棟・外来での早期発見と帰宅後の電話サポート イメージ

オンコロジックエマージェンシー 病棟・外来での早期発見と帰宅後の電話サポート

がん患者のエマージェンシーの早期発見と迅速な対応のために がん患者のエマージェンシーには早期発見、迅速な対応が求められる。そのため、がんやがん治療について理解するとともに、エマージェンシーの徴候、見え方を知っておくことが重要である。本書では、症例を豊富に提示し、病棟・外来でエマージェンシーがどのように見えるのか、求められる対応、必要な知識を解説し、また外来化学療法を受ける患者の帰宅後のエマージェンシーへの対応(電話サポート)も取りあげている。

詳細はこちら

トラックバック

http://igs-kankan.com/mt/mt-tb.cgi/1206

コメント

このページのトップへ