第14回 子宮頸がんとワクチンをめぐるメカニズム

第14回 子宮頸がんとワクチンをめぐるメカニズム

2020.1.15 update.

近藤慎太郎(こんどう しんたろう) イメージ

近藤慎太郎(こんどう しんたろう)

東京都出身。近藤しんたろうクリニック院長(渋谷区)。北海道大学医学部・東京大学医学部医学系大学院卒業。日赤医療センター、東京大学医学部附属病院、山王メディカルセンター(内視鏡室長)、クリントエグゼクリニック(院長)を歴任し、開業、現職。消化器内科専門医として年間2,000件以上の内視鏡検査と治療に携わる。特技はマンガ。本連載でも、絵と文ともに描き下ろしている。
・・・
公式ブログ『医療のX丁目Y番地』 著書に、Amazonでベスト&ロングセラーになっている『医者がマンガで教える 日本一まっとうながん検診の受け方、使い方』『がんで助かる人、助からない人 専門医がどうしても伝えたかった「分かれ目」』。近著に『胃がん・大腸がんを治す、防ぐ! 最先端医療が命を守る』がある。
日経ビジネスオンライン連載『医療格差は人生格差』

 

| なぜワクチン問題は炎上するのか

 

医師兼マンガ家の近藤慎太郎です。

自らのクリニックでの診療を拠点に、2つの総合病院で消化器内科の臨床にあたるとともに、自作のマンガを使って、エビデンスに基づいた医療情報を広くわかりやすく解説し、この国で予防医学が認められることをライフワークにしています。

(過去記事のアーカイブこちらから)

 *ガストロペディア【消化器に関わる医療関係者のために】でも公開情報共有中

 

 

テーマ●ヒトパピローマウイルス(HPV)のコントロールも難しい

 

前回、B型肝炎ウイルス(HBV)は コントロールが難しいことを解説しました。この点は、ヒトパピローマウイルス(HPV)の場合も同様です。

 

HPVは、子宮頸がん、中咽頭がん、陰茎がん、肛門がんなどのリスクを上げるウイルスです。

この中でも、ダントツで罹患率が高いのは子宮頸がんです。

HPVの主な感染ルートは性行為で、50~80%の女性(様々な報告あり)が生涯のうちに感染します。つまり、実はごくありふれたウイルス感染症です。

感染しても、90%以上は短期間でウイルスが自然に駆除されますが、一部は感染が慢性的に持続し、子宮頸がんを発症してしまいます。

 

子宮頸がんは、30歳から40歳代と比較的若い年代に多い、非常に要注意のがんです。がん情報サービスによれば、年間の新規罹患数は約1万人で、2017年の死亡数は2,795人です。

また、1人の女性が生涯で子宮頸がんに罹患するリスク約1%死亡するリスク約0.3%と報告されています。

決して少ない数字ではありません。

 

すでに感染したHPVを身体から強制的に駆除する薬はありませんが、ワクチンの接種によって感染を未然に防ぐことができます。

 

HPVには100種類以上のサブタイプがあり、そのうちの約15種類が子宮頸がんのリスクを上げることがわかっています。

それらに対して、日本では2価ワクチンと4価ワクチンが使用可能で、標準的には、中学1年生になる年度に合計3回接種します(海外ではそれに加えて9価ワクチンも登場しています)。

ワクチン接種により、そのワクチンが対象としたサブタイプによる子宮頸がんの前がん病変を80%以上予防することが可能だと報告されています。

 

日本でも2013年からHPVワクチンが定期接種の対象となっています。しかし、ほどなく重い「副反応」の報告が相次ぎ、同年6月に厚生労働省が「積極的な接種勧奨の一時差し控え」を決定し、現在もその状態が続いています。

 

ワクチン接種でよく見られる副反応として、接種部位の「痛み」「腫れ」「頭痛」「発熱」などがありますが、HPVワクチンの場合は、それらに加えて、「激しいけいれん」「歩行障害」「全身の痛み」「記憶障害」など、非常に重い副反応が生じたとの報告が相次いだのです。

新聞やテレビなどのメディアでも盛んに報道されたので、目にした人もいるでしょう。

それがたしかにHPVワクチンの副反応なのかどうかについては、様々な対立した意見があります。

では、厚生労働省の見解はどうなっているのでしょうか。

 

670第14回修正版医学書院.jpg

 

HPVのみならずワクチンがしばしば問題になるのは、「病気の人に対する医療」と「健康な人に対する医療」の違い、が根底にあるからです。

すでに病気の人であれば、副作用のリスクが多少あっても、医療(治療)を受け入れる人が多いでしょう。一方、健康な人が、将来のリスクを予防するために受けた医療で副作用が出てしまったら、納得しがたいという気持ちになるのもよくわかります。

 

ここに、「予防医療」の難しさがあります。

 

とはいえ、私たち医療者は、明らかになっているデータを冷静に比較検討し、ライフステージ全体を見渡したうえでの医療を開示、提供する義務があるのはないでしょうか。

 

(了・次回へ続く
 
(過去記事のアーカイブこちらから)

 

[医学書院の《がん看護実践ガイドシリーズ]

がん患者へのシームレスな療養支援 イメージ

がん患者へのシームレスな療養支援

超高齢社会に向けたこれからのがん看護に求められる知識と技術がここに がん治療の進歩と罹患者の増加に伴い、がんとともに生きる患者が急速に増える一方、在院日数短縮化が進み、病院と在宅療養と介護サービスの適切な活用が必須となりつつある。がん患者の特性を踏まえた症状コントロールや心理的ケア、意思決定支援、限られた社会資源の調整といった「療養支援」を、治療の場と時期を問わず提供できることが病棟や外来の看護師に求められている。本書ではそれらの知識と技術を具体的に解説する。

詳細はこちら

サバイバーを支える 看護師が行うがんリハビリテーション イメージ

サバイバーを支える 看護師が行うがんリハビリテーション

がんサバイバーの自立を支えるために看護師が行うがんリハビリテーションを解説 がん、治療とともに日常生活を送るがんサバイバーが自立した生活を送るためのリハビリテーションが求められている。本書では、がんの治療期の患者に焦点をあて、がんリハビリテーションを実践するうえで基盤となる知識、技術について解説し、特に看護師が行う実践について取りあげている。看護師がベッドサイドなどで行うリハビリテーションや退院後の生活を想定したセルフケア指導について解説した1冊。

詳細はこちら

オンコロジックエマージェンシー 病棟・外来での早期発見と帰宅後の電話サポート イメージ

オンコロジックエマージェンシー 病棟・外来での早期発見と帰宅後の電話サポート

がん患者のエマージェンシーの早期発見と迅速な対応のために がん患者のエマージェンシーには早期発見、迅速な対応が求められる。そのため、がんやがん治療について理解するとともに、エマージェンシーの徴候、見え方を知っておくことが重要である。本書では、症例を豊富に提示し、病棟・外来でエマージェンシーがどのように見えるのか、求められる対応、必要な知識を解説し、また外来化学療法を受ける患者の帰宅後のエマージェンシーへの対応(電話サポート)も取りあげている。

詳細はこちら

トラックバック

http://igs-kankan.com/mt/mt-tb.cgi/1202

コメント

このページのトップへ